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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.05.03,Fri
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2007.11.09,Fri
自分が書くとシモンは割合陰鬱修正がかかる気が。
ロシウは意志が強くて指向性があることを鑑みると存外シモンよりも余程カミナに似通っているのではないかとも思っています。
まあそんなこんなでめのこコンビは本編よりも大分お互いの要素を取り替えっこしてるような感じになっちまってるなあ的なお話。






その日彼等が宿営地を得て落ち着いたのは、陽もだいぶ傾いた頃だった。
ここ数日は腰を据えられる場所もなかなか見つけられず物資に不足も目立ち始めている。試しに狩りに出ると言うヨーコとその手伝いのカミナを見送り、シモンはロシウを伴って水の調達に出てきていた。いつもならギミーとダリーも連れてきてやるところなのだが日没までに時間がないことを考慮してどうにかリーロンの元に留まらせる。数日食料確保のために留まることを見越し、明日は必ず一緒に行くからと言ってどうにかギミーを納得させた。
ポンプの設置さえ終えてしまえば後はシモンがラガンを動かして作業を進めるしかない。周りを見てきても良いですか、と控えめに尋ねられロシウの望みを拒む理由は無かった。
単純作業は割と嫌いではない。然したる危険もないとなれば尚更だ。ルーチンワークに慣れた身体にはいっそ心地よいとも言える。
がちゅがちゅと何処となく間抜けた音を伴奏にして水を吸い上げるポンプと、タンクの水位を報せるメーターを横目に周囲まで視界を広げればさほど遠くはないところにロシウの影が見えた。慎重な性格の少女らしく一歩一歩足場を確かめ、だというのに進む毎にきょろりと忙しなく辺りを検分している。たかが一足動いた程度ではそう眼に映るものも変わるまいに何もかもに目をきらきらと輝かせていた。地下の暗さに慣れた目を守る為、日よけに貸したゴーグルもいつの間にか外してしまっている。
その姿に自分が誰を重ねたのかを知りシモンが手を止めるのと最後のタンクがいっぱいになるのには数秒の差すらなかった。
「…」
己の連想に一瞬ぽかんと口を開いたシモンはすぐに吹き出し、連結した管を外して水を落とす。作業道具を一人であらかた片づけ終わる頃にはもう空に茜が差し始めていた。
面差しを朱く染め上げたまま空の変化に見入る少女の邪魔をするのも気が引けたが、いつまでもここにはいられない。
「ロシウ」
座席の空きに道具を収めながら名を呼ぶとロシウは何度か瞬きをし、それから慌て顔でこちらに振り返った。更にシモンが既に片づけまで終えていることに気づいて彼女は転げるような調子で水辺まで駆けてくる。
「済みません!」
腰を折って頭を下げようとするのを手で留めても申し訳ないと書かれた表情は戻らなかった。大した作業じゃないから。気に病むなと伝えた言葉にすらでもと反駁が返り、落ち着かなげにロシウは自分の胸元を握った。
そうなってしまえばロシウに先程感じた面影はない。そもそも極生真面目な少女と豪放磊落な青年を比べること自体が本来なら有り得ないことだ。もう一度、くすりと口端に笑みを載せたシモンを見て黒い瞳が丸くなる。意図を読み切れていない表情がなんだかおかしくてシモンは思うまま声を重ねた。
「…さっき、少し兄貴に似てたよ」
「え、?」
静かに告げた言葉はロシウに戸惑いを産む。それはそうだろう、流れを無視した内容だ。ぱちぱちと瞬きを繰り返す年の近い少女へ敢えてシモンも説明はしない。地下世界から此処にやってくれば魅了されるのも当然なのだと知っていた。
「そろそろ戻ろう。冷えてくる前に帰らなきゃ」
言わない科白と届かない腕の代わりにラガンの手を差し伸べる。ロシウははい、と頷いて何故だか少し照れくさそうに金属の指を頼った。
夜は冷える。地上では当たり前の事象ですら地下とは一線を画していた。シモンの故郷はいつでも殆ど温度が一定で着替えの種類を必要としなかったが、地上では気候に会わせて衣服を変える必要すらある。一日の中でさえ気温は変化し、長い期間でみれば400足らずの日にちの間に平均気温が激しい上下を見せるのだとリーロンに教わった。
目まぐるしく変わり続ける世界。
変化に彩られた地上に出てきた、そのことが喜ばしい変化なのか未だにシモンには判断がつかなかった。
なにかが起こってからでなければ事の正否は解らない。
そして起こる"何か"とは凶兆を意味した。
故郷の村に起こることであればシモンにも朧気ながら予想がつく。地震、落盤、それらから身を守る術で良ければ彼女にも幾つか覚えがあった。それですら足りずに死ぬ者がいることは身を以て知ってはいたが、何の対処も出来ない程不安定な訳ではない。
だが地上は全く別だ。未知の世界では何が起こってもおかしくはなく、それを予想することすらままならない。
故にシモンには、カミナやロシウがそうする程には地上を眩しく思えなかった。ヨーコやリーロンが考えているように、此処を生きていくための場所だとも思い難い。
隠れる場所もない大地は彼女にとって身の置き所のない世界だった。
既に地上に生きていた時代を忘れるほどに人は地下暮らしに慣れている。
それほどの長い時間を経る前、何を思い人は住処を変えたのだろう。
獣人にしても資材を費やしてまで人を狩るその意図はなんなのか。
悩みはつきなかった。それも、カミナが獣人と戦うように、、ヨーコが人を守るように、ロシウが人を導くように前に進むためのものではなく過去へと向かうものばかりだ。
過去にしがみつくばかりでは居られないことは解っている。だがどうしてもこの世界に対する違和感が消えなかった。
なにか、決定的なことを自分達は知らない。いつかは訪れる筈の凶兆、正否の答がそこにあるような気がした。
嫌が応にも何かが訪れる。
青空が紅く染まり、やがて闇の帳が落ちるように。
「…シモンさん?」
思考に沈んだシモンをそっとロシウが呼んだ。それに引き戻され、操縦桿を握る手に力が籠る。
「大丈夫ですか?」
作業を任されて疲れたのではないかと案じ、それでなくても常日頃から戦っているのだから時にはきちんと休まねばと気を回す声は心地よかった。
「大丈夫だよ」
少なくとも、今は。
続きは喉の奥に押し込め、シモンはラガンを宿営地へと急がせた。
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