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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2007.10.15,Mon

ちょっと文章とかガタついてますがまあいつものことだ!
本放映時の七話終了直後に書いた物なのでその後の本編の進行と少々合わなかったりしますがそこら辺は汲んでやっていただけると幸い。
途中のやり取りに不自然が目立つ気がするけどそれも常か…







ロシウがギミーとダリーを寝かしつけにコンテナに戻ると言ったので、シモンも習って腰を上げた。宴会じみた騒ぎも静まり、明かりの回りではカミナ中心の作戦会議に入っている。去ろうとするシモンに男達の真ん中にいるカミナは気づかなかった。
「寝ないんですか?」
コンテナの手前に置かれたラガンに乗り込もうとするシモンにロシウが首を傾げる。
「うん、中で待機してる」
程なく話し合いをしている仲間達も就寝するはずだ。獣人達が朝から攻めてくる以上、子供達と同じように夜は休んで体力を温存するしかない。その間、見張り代わりに一人乗り手がガンメンに入っていれば周囲の警戒も咄嗟の対応も事足りる。
「ちゃんと途中で誰かに交代して下さい。
 僕でよければ代りますし」
登りかけた背中にロシウが気遣わしげな声をかけた。
「有難う」
子供達の元へ向かう少年にシモンが手を振ると、了解したと受け取ったのかロシウはコンテナの中に入っていく。扉が閉じるところまで見送ってシモンは首に掛けたコアドリルに指をかけた。狭い席に座りコアドリルを捻じ刺せば、主人の帰還を受けて展開した壁面全てが外を映すモニターに変化する。荒涼とした大地と光の粉を散らした夜空をやけに白々と輝く月が照らしていた。差し込む光が眼に痛くてシモンはバイザーを下ろす。それでやっと、彼は光源を見つめることが出来た。
強く自己主張する巨大な星に気疲れを感じてシモンは溜息を零す。遍く周囲を浮き彫りにするその輝きが疎ましかった。
眩しい眩しい、月。
バイザーを被ってやっと真っ直ぐ見られるような丸い光。
闇に抱かれたその場所へ、カミナは辿り着こうと言う。
カミナが言うならば叶うかも知れないと諦めることに慣れきった自分でも思った。そして、おそらく、カミナの元へ集まった人々もその言葉を信じるだろう。
続々と集合した大グレン団の面子を思い浮かべてシモンは溜息を吐いた。人々に囲まれたカミナの背中はこれまでより遠くに見える。もう自分でなくても、きっと彼の後ろを守れるのだ。
いつの間にか祈るように組み合わせていた両手を額に押しつける。自分が地上にいられるのは、カミナが必要だと言ってくれるからだ。だが自分には特別な力があるわけではない。弟分としてカミナが扱ってくれるとしても、その位置に納まっているために果たすべき役割が見つからなかった。ガンメンは誰にでも動かせる。きっと今乗り込んでいるラガンもコアドリルさえあれば誰でも動かせるはずだ。
痛みを堪える顔でシモンは身体を縮こませる。その体勢は地下の村で地震に怯えていた時と同じものだった。次第に震えさえ始まり、シモンは己の弱さ無力さに情けなくなる。
ひたすら沈み込んでいく彼を掬い上げたのは外からのノックだった。顔を上げればスクリーンに見慣れた整備士の姿が映り込んでいる。
「お疲れ様、ガンメン乗りさん」
隔壁を開いた少年にリーロンはウィンクを投げかけた。何をしに来たのかと眼で問うシモンへ明朗快活な答えが戻る。
「メンテに決まってるじゃない。明日は坊やとラガンに働いてもらうんだから」
事も無げに言ってしなやかにラガンの円周に座った整備士はシモンと頬を併せるようにして操縦席の正面を覗き込んだ。
「あなたがあなたの仕事をキッチリ終わらせられるように、私も仕事をしにきたって訳」
顎の下を指でくすぐられ、振り切るために頭を振ったシモンは直後俯いてぼそりと呟く。
「俺が出来ることなんて、他の誰でも出来るよ」
作戦の中心にラガンがあることは確かだった。敵の戦艦を乗っ取るためにはラガンの機能が必要不可欠、けれど別にそれに乗るのがシモンである意味は無い。たまたまラガンを掘り出した。ただそれだけの理由だ。
「あらァ、そんなことないと思うけど?」
肩眉を上げて否定した言葉も、シモンには安易な慰めにしか聞こえない。場所を空けるように隅へと身体を押しつけた少年を眺め、気遣わしそうな表情を浮かべたリーロンは数秒後肩を竦めて手と視線をラガンの正面ユニットへと向けた。
「暇つぶしにでも見てなさいな。
 あんた達も少しはメンテ出来ないといざって時に困るものね」
言いながら器用な手は服についたポケットから道具を取り出す。見たことのないものばかりが、しかも次々と繰り出されていく姿は魔法のようだった。いつもは飄々とした顔が真剣に機材に向き合い処置をこなしていく。見とれ、それからシモンは目を眇めた。この人のような能力が自分にもあればいいのに。おそらくこの技術を手に入れるためにリーロンは血の滲むような努力を重ねたのだろうと理解した上でシモンは羨ましかった。自分が研鑽した力など地面を掘り進むだけの技術だ。空に昇ろうというカミナの役には立たない。
「シモーン?」
鬱々と沈み込んだシモンを見ないまま、リーロンが腕を伸ばしてきた。思索を断ち切られたシモンが首を傾げる。その目の前に細い管がぶら下げられた。先端にはなにやら四角い塊がついている。
「これね、右側の窪みの奥に差し込んでくれないかしら」
「え」
戸惑うシモンに更にぐいっと線が差し出された。有無を言わさず押しつけられてシモンは言われた場所に視線を向ける。確かにそこには穴が開いていた。だが、見た目にはその穴と管の先端の大きさは合うようには見えない。そもそも機械の類はシモンにとって別世界の道具だ。思わず狼狽えた声が出る。
「え、こんな大きなやつ入っちゃうの!?」
「繊細且つ大胆に!ぐっと押し込んじゃって頂戴」
紐から離れた手が親指を立てた。逆の手は別の作業を続けている。
「む、無理だよぅこんなの…」
穴と機材を見比べながら弱音を吐いたシモンに、優しくリーロンが促した。
「大丈夫、意外とイケるから安心して?さ、勇気を出してほら」
「う、うん」
言われるままに押し込んだコードがかちりと音を立てて穴にはまる。
「本当だ」
リーロンのポケットからは他にも何本もの線が取り出されていて、それらの太さはまちまちだった。その中から見もせず選り分けたのだと気づいてシモンは感嘆の声を上げる。
「すごいでしょ、と言いたいとこだけど…慣れれば誰でも判るのよ?」
更にがちゃがちゃと弄っていた手を止め、振り向いたリーロンがウィンクを投げた。びくりと小さな肩が揺れる意味を勘違いせず、仕事を一時中断したリーロンは腰の位置を変えてシモンの隣に座り込む。逃げようとする肩をしなやかな腕が捕えた。
「そう怖がらないでよ。私達仲間でしょ」
胸に抱寄せた頭を撫でて機嫌良くリーロンは言う。人の機微に聡い整備士は、少年が目を伏せたことも見逃さなかった。
「誰もカミナを盗っていったりなんかしないわよぅ」
空気を飲んで息を詰まらせたシモンは、直後がばりとリーロンを振り仰いだ。その乱暴な動作にも動じずに、器用な指が藍色の髪を梳く。
「盗っていくとかっ…そんなの」
もどかしそうに反論するシモンに可愛いものを見る目を向けてリーロンは頬杖をついた。余裕のある仕草に見透かされていることを認め、シモンは気弱な表情を見せる。あの背中を追いかけるのも自分一人がいい、だなんて。子供っぽくてバカな我が儘だ。
いたたまれずに膝の上で握られた幼い手にリーロンの手の平が重ねられる。
「カミナはしょうもない子ねえ。
 あなたを地上に引っ張り出してきておいて、自分は一人ではしゃいでるんだから」
ふぅ、と溜息混じりに呆れを隠さない年嵩の声でシモンは目を吊り上げた。
「兄貴は兄貴の考えがあるんだっ!
 一人でバカやるつもりでも一人でやってけるとも思ってない!」
ムキになって反論する。カミナは思いつけば即行動で無鉄砲に見えるが、考え無しではないのだ。一本気でひたすら真っ直ぐに進む無謀さも強い信念があるからだ。誰が知らなくともとも自分はそれを知っている。
カミナを引き合いに出した途端目にも声にも表情にも気迫の漲ったシモンを眺め、リーロンは笑みを深めた。
「そう。カミナだけじゃ駄目なのよねえ」
重なっている手に力が籠る。言葉の意味を量りかねたシモンが目で訊ねると性別不詳の整備士は軽く頷いた。
「アンタがいないと、ね」
真っ直ぐみつめられたまま言われて怯んだシモンは身体を引こうとする。けれど握られた手がそれを許さなかった。
「誰にでも出来る?バカ言っちゃいけないわ。
 誰にだってその人間にしか出来ない役割があるの。
 カミナが人を集めて引っ張るようにね」
真剣な言葉が射し込まれる。でも、と反射的に否定しようとしたシモンの口をリーロンの人差し指が押さえ込んだ。
「アンタは周りが見えていて、見える分だけ力の足り無さを痛感するでしょうね。
 でもそれって大事なことよ」
口調を少し和らげて整備士はシモンの額に自分のそれを重ねる。距離の近さではなく自分の気弱さを言い立てられたことに細身の少年は固くなった。
「恐いものを恐いと思わないのは愚か者。だけど恐いからって逃げるのは弱虫。
 問題は、恐いと思った上でそれを乗り越えられるかどうかなの」
身の内にてんこ盛りになった恐れを思い、シモンは気が遠くなる。自分の弱さを明日までに乗り越えられるとは到底思えなかった。彼は、自分が危機の中でどれだけの力を発揮してきたのか自覚がない。
認識不足を知った上でリーロンは若いガンメン乗りを鼓舞した。
「信じなさい。アンタには力がある。
 アンタほど心が強い人間じゃなけりゃ、ラガンであのバカデカいガンメンを乗っ取ったりはできない」
額で押さえ込み、首を振らせないまま年長者は囁く。
「…シモン。アンタは、スペシャルよ」
ゆっくりとリーロンの顔が離れた。すぐ下を向きそうになるシモンの頬が撫でられる。大きく息を吐き出して、シモンは上目遣いに相手を見つめた。
「…あ、り…がとう」
つっかえながらの謝礼に整備士は鷹揚に頷く。
「ま、乗り手へのフォローもラガンの整備の内よ」
冗談めかした言葉に苦笑して、シモンは空を見上げた。眩しい光に目を細める。月はまだ遠かった。だが、本当に作戦を成功させることが出来れば、仲間や子供達、何より兄貴の期待に応えることが出来れば。自分は、此処にいて良い人間になれる。兄貴の弟分として、胸を張って隣に立つことが出来る。
「本当に出来るか、判らないけど。
 …やってみる」
控えめな決意をその意気よとリーロンが肯定した。シモンがどれだけ無力を悩もうと迷おうと嘆こうと、明日を乗り切れなければそこで全てが終わる。頼もしいとまでは言えないまでも信じてみたくなる姿を、もう一度リーロンは抱きしめた。驚き慌てる少年はまだまだ弱々しく、整備士の腕の中に簡単に捕えられてしまう。
大グレン団を率いているのはカミナだが、支えているのはシモンだ。背中を守る者は幾らでも居ても、肩を並べて進めるのは相棒と認められたシモンしかいない。だがあくまで弟分として一歩引いているシモンはカミナの期待を正しく理解はしていなかった。カミナとシモンの見解の齟齬は互いの間にある立場の差を明確に示している。
未だ幼い片割れの真価を問う決戦は、すぐそこまで迫っていた。
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