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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.11.23,Sat
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2008.01.13,Sun
カミナ書きづらい書きづらいで筆が止まってましたがどうにか続き。
案の定カミナの出番は少ないですよ。描写能力に限界が丸見え!
一、二段落はロシウ視点ですが三段落めのみシモンです。






 ────ニアさんの周りに人垣ができて、それに弾かれるみたいに僕は遠巻きになっていた。混じる気にはなれなくて何となく人だかりを眺める。ざわつく人々をダヤッカさんがまとめようとしていた。
突然現れた闖入者、に対してはリーロンさんがいくつかの質問を投げかけている。リーロンさんの態度がたぶん一番正しいはずだった。だって僕達は戦っているんだから。
僕が伝えた内容だけでもニアさんは充分に怪しい。悪意なんて持ち合わせていないような声を聴きながら僕の一部はそう判断していた。彼女自身が危害を望んでいないとしても、もしかしたら結果的に危機を運んでくるかも知れない。
僕からはあのふわふわした金髪が見えないくらいに集まった人達はそのことを解って居るんだろうか。解っていないんだろうなと思うと胃の辺りが引き絞られるような感触に襲われた。
"天上人のような女の子"…美しく愛らしい、女の子。
確かに好ましく珍しい人ではあるのだろうけれど…
興味と疑念半々の人からあからさまににやけている人までいる集まりを許容出来る気分になれない。
大体、誰一人として戻っていないシモンさんを心配しないのはどういうことなんだ…いや、勿論事情は報告したけど、それにしたって。あの人は戦ってる途中に行方不明になって、今度は一人で戦場だった場所を突っ切って戻ってくるっていうのに。
また胃がしくしく痛んだ。やっぱり僕はシモンさんと一緒に戻ってくるべきだったんだ。例え力にはなれないとしても今彼女と組んでいるのは僕なんだから。
込み上がってくる苛立ちと身震いを手を握って抑える。そんな僕の肩が優しく叩かれた。誰もがニアさんに向いていると思ってばかりいて大袈裟に振り返った僕にヨーコさんが苦笑する。彼女の甲が僕の頬をぴたぴた叩いた。火傷と勘違いするくらいにその手は熱い、いや僕が冷えているのか。
「すごく冷えてる。
 シャワー浴びておいでよ」
降りた指が首に絡まった黒い髪を払い、それから背中を押した。そうされて僕はやっと自分がずぶ濡れだと気づく。
そうだ、雨が降っていたんだ。
風邪を引きでもしたら周りに迷惑が掛かってしまう。
でも僕達を迎えに来たヨーコさんだって濡れていて、一人行って良いものか迷った。それにシモンさんだってまだ帰ってきていない。戸惑い窺った僕を見て金色の眼が笑った。
「いいから。さっさと入っちゃって」
大丈夫、ニアの面倒は私が見とく。バカ共に変なことさせやしないから。
言われて僕はニアさんの処遇を気に懸けていなかった自分を理解した。また胃が痛むけれど私は後から入るからと言われれば頷くしかない。
意識した途端重くなった身体を引き摺って、僕はシャワー室へ歩き出した。
熱が全部そこに集まったとでも言いたげに手の平がずきずき痛む。
 ────シモンさんは、大丈夫かなと僕はそればかりを考えていた。


お湯で血行が良くなって、利き手が余計に痛みを訴える。
それでも思ったより抉れは浅かった。指も動くし痕は残るだろうけれどきっとそのうち塞がる。痛みは僕の身体の表面を苛むだけで心まで侵食することはなかった。当たり前のことに胃が引き絞られる。肌に注ぐお湯もまた身体を温めても芯に残る冷たさを消してくれない。
いつかは消える筈の痛覚の波は僕を責めているかのようだった。
気重に逆手でカランを閉じると間を置かず外から声が雪崩れ込む。
「そう!で、使い方はわかる?」
ギミーやダリーを相手にしている時と同じ口調のヨーコさんと、それに返事を返すニアさんだった。…どうしてだろう、やけに傷が疼く。雑菌が入ったのかな、早く手当てをしてしまわないと整備の手伝いもままらなくなってしまう。血を抑えてくれる布が欲しくてすぐにシャワー室を後にしようとした僕は、ヨーコさん達が別のシャワー室の扉を閉じるのを待った。急いでいるくせに間を置くその矛盾の意味からは目を逸らし滑る床から逃げ出す。
脱衣所へ走り込んだ僕は肩で息をしながら服を入れた籠を探った。しめった服の中には貰った布の切れ端がちゃんとあってほっとする。血の染みがついたそれは雨水と泥に汚れていてもう傷を覆う役目には使えない姿だった。だけどその布でなければ僕には意味がない。
これは、シモンさんがいなくならなかった証拠なんだ。少なくとも、僕にとって。
彼女はグレンで戻ると言った。あのままどこかに行ってしまうことはないだろう。そのはずだ。早く彼女が戻ってきてくれたらいい。泥の中にも倒れたんだし、僕よりよっぽど風邪をひきそうなんだから。
格納庫に行こう、シモンさんを待とう。ギミーやダリー、ブータさんと一緒にだ。
大きく息を吐いたのは余計な考えを追い払うためだった。自分の中に溜まった澱から目を逸らして汚れた服を着込む。そしてブーツに足を入れようとして、僕は他に三つ靴が並べてあるのに気づいた。
一つはヨーコさんのブーツ、一つは真新しいサンダル、最後の一つは酷く泥まみれのシモンさんのブーツ。
ニアさんが履いていたそれは明るい部屋の中でくすんで見えた。
長い間使っているんだろう、元の形から持ち主に併せて少し歪んでいる。機能重視の武骨さが誰の物かを主張していた。
水を吸ってへたった縁を握って少し持ち上げてみる。見た目より重いのは底が厚いからだ。覗き込めば中にまで泥がこびりついていると解る。このまま履くのはちょっと辛いかもしれない。
「…洗って、おこう」
シモンさんが帰ってくるまでに。
まだ少し時間があるだろうし、ニアさんには新しい靴があるから大丈夫だ。
自分に言い聞かせて決めたことを正当化する。今僕にできること、してあげられることがあると浮ついた心を抑える為に。
自分からも、浴室にいるヨーコさんとニアさんからも逃げるように僕は脱衣所を後にした。



頭が痛む。体も重い。
疲れているのかな、本当はきっとそうなんだろう。たぶん。
グレンの足が前に投げ出される度に吐き気がこみ上げた。ダイグレンに近づくにつれ痺れが広がっていく気がする。
錯覚だ。
荒げた息がコクピットに反響して耳に入ってくる。トリガーを掴む手が震えた。力を入れたはずが変なスライドになってグレンはバランスを崩す。
転ぶ、と思ったそこは丁度格納庫の入口だった。いつの間に甲板に登ったのかも覚えてはいない。
とにかく、着いた。そう思ったら指が解けて応じたグレンの手からラガンが落ちる。下に誰かがいれば大惨事だけど、幸い雨が降り込む位置には誰も居なかった。
息を吐く、背もたれに体重を預けて手を剥がす。どういう作りなんだろうか、まるでどうぞとでも言うようにグレンが口を開いた。
人が出払っているのか格納庫は静かなものだ。雨音で音を捉えられなくなっているのかもしれないけど。
すぐには出る気になれずに座り込む。その俺の元へ勢いよく毛玉が飛び込んで来た。
「…ブータ?」
ぶぅ!
聞き慣れた声を上げてブータが俺のジャケットの中へ潜った。柔らかくて温かいその感触に体温が下がっていたんだと知る。腹から登って襟元から出てきたブータに頬を舐められた。
心配した、お帰り、って鳴かれる。
「…ただいま」
押しつけられた温度で呟きが素直に口をついた。ブータは頷いて肩に座る。俺のせいで湿り気を含んだ毛を指で掻き混ぜた。
暗くて狭い場所にブータと二人。まるでジーハ村に居た時みたいだ。このまま蹲って眠ってしまいたい。そうしたら吐き気も頭痛も忘れていられる。正直、背中を立てて座っているのもしんどかった。頭へのし掛かってくる痛みで勝手に瞼が落ちてくる。肩の上のブータの体温がそれを助長した。闇が落ちる穴の中に俺とブータが二人きり。久々で、安心する。
やっぱりこのまま眠ってしまおうか、椅子から滑り落ちそうになったところで俺は慌てて首を起こした。
「シモン!」
呼ばれて情けなく体が震える。反射的に上げた視線の先に兄貴が立っていた。その手が降りてこいと示す。
嫌だった。このままここに居たかった。でも腕を組んで仁王立ちする兄貴はきっと俺が出て行くまでそこで待っているだろう。…どこかで、あの隣に立ちたいと思う自分が居ることを俺は知っている。知っているから余計に嫌だった。
だというのに俺はお荷物になった体を抱えて折角の穴蔵から這い出る。ジーハ村でそうしていたのと同じように。
泥でべたつく足を引きずって兄貴の正面に立つ。重い頭は勝手に俯いた。
「なにか…」
用、とまで訊かせてくれずに晒した頭に布が落ちてくる。
「ほらよ。風邪引くだろ」
遅れて言葉を降らせながら布越しに兄貴が俺へ触れた。雨水と泥を拭う手つきは前ならいつもやってくれた、頭を撫でる仕草によく似てる。俺はこれが好きだった、でも本当に欲しいのはこれじゃない。
吐き気が、する。頭が痛い。体が痺れる。
「…兄貴」
押し出した声に兄貴が手を止めた。布が落ちて方に被せられる。
「おう」
高い背を屈めた兄貴の赤い瞳が俺を覗き込んだ。変わらない声、変わらない動作、やっぱり変わらず優しい視線。湿った布を抑えていた手が俺の頬に触れた。ブータよりも熱いようなその体温に俺は耐えきれない。
自分に触れている、指先を。振り払おうとしたその瞬間に。
「────っ何だ!?」
…床が、揺れた。
勝手に竦んだ身体を支えきれずに膝が折れる。床に倒れ混みかけた俺を刺青の腕が支えた。振り払おうと藻掻いても筋肉に覆われた体に俺が勝てる筈もない。
「落ち着けシモン、大丈夫だ」
抱きかかえた俺の動きを地震への怯えと受け取った兄貴が囁いた。違う、今俺が怖いのはあんたなんだ、兄貴。
馬鹿正直に訴えなくてすんだのは唇が震えてまともに喋れなかった所為だった。それに兄貴はもう俺の方を見ていない。
「ガンメンか!」
舌打ちしつつ兄貴はへたっている俺を床へ降ろした。鋭さを担った声音に前へ向けた目は兄貴がみつけたのと同じ物が映す。
格納庫から続く甲板、ダイグレンの舳先に見たことのない型のガンメンが立っていた。
「…あれ、は…」
細身で背の高い、見慣れない形のガンメン。でもなんとなく解った。あれは多分カスタムガンメンで、ビャコウと同じ系列の。
「シモン! お前はそこに居ろ!」
四天王だ。
そうと理解したのは俺だけじゃなかった。兄貴は指図するが早いかマントを翻してグレンに飛び込む。戦うつもりなんだと嫌でも解った。
駄目だ、行かせちゃいけない。
「兄貴、俺が…!」
叫ぶ声は掠れ、グレンの足音に掻き消された。無駄に伸びた手は赤いマントにすら触れやしない。
行ってしまう、兄貴が行ってしまう、一人で!
止めるための手段を探して視線を巡らせる。視界の端に今グレンで運んできたラガンが映った。でも、俺はそれを選べない。
兄貴より先に出なくちゃならなかったんだ。なのに、動けない。試すことすら出来なかった。ラガンはいうことをきかないのだという確信が俺を縛る。
「待って、待ってよ兄貴!!」
狼狽えた俺に出来たのは床を這いずって少し前に進む、それだけだった。
俺の言葉は兄貴に届かない。兄貴にとって意味を持たない。俺がどんなに必死になってもどうにもならない。
当たり前のことだ、解ってる。あの時だってそうだった。でもそれでも俺は兄貴を守りたい、兄貴の力に、なりたい。
雨脚の軽くなった甲板で兄貴が叫んだ。相対したガンメンから女の声が確かに四天王と名乗る。無理だ、一人じゃ絶対に勝てない。
「あ、にき!」
しゃがれた悲鳴が喉から落ちた。間抜けだった。あまりにも。
…おれには、なにも、できない。
事実が押し寄せ目の前が真っ暗になった。
その、完全に動けなくなった俺を軽やかな足音が追い抜く。
「っ!?」
ふわりとした毛先が俺の目と鼻の先を掠めてそのままほっそりとした足は外へと駆けていった。茫然と見つめてもそこに居る人間は消えない。
彼女はグレンの前に出て両手を広げ、凛とした声を張り上げた。
「─────私を、誰と心得ますか!」
理解の範疇を越えた現実を前に脳のネジが飛ぶ。
あァ、雨が止んだな。
だなんて、そんなことを考えていた。

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