飯は喰いたし、眠気は強し。
そんな感じののらくら雑記帳。
Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2007.10.30,Tue
シモン女子、ロシウ女子、カミナ生存という特殊状況の話。
取り敢えずチミルフ戦直後、シモン視点。
取り敢えずチミルフ戦直後、シモン視点。
最後にどうなったのか、は、よく覚えていない。コクピットを充たした光が眩しくて眩し過ぎて眠れやしないと考えたことは朧に記憶があるが、それだけだ。
気付けば見たことも無いやたらと白々とした天井を見上げていた。
ぼやけた視界が欝陶しくて擦ろうとしたのに手が上がらない。指先からじんわりと痺れが伝わり、それを飲み込む勢いで肩口に痛みが走った。激感と共に取り戻した触覚が体中布で覆われていることを教える。動けないのは痛みのせいだけではなく固定されているからだとやっと理解できた。
痛覚は今や肩だけでなく体中で生まれその一つ一つを判別することも難しい。悲鳴の代わりにかふりと息が漏れた。呼吸でも骨と肉が両方限界を訴える。
どうしようもなく生きているのだと現実を突き付けられ、それから何故こんなことになっているのかを考えるだけの思考を得た。寸断されてくれない意識の狭間で緑の光と飛び散る血飛沫、腹をえぐる凶器の感触が呼び覚まされる。
次第に痛みは認識の限界を越え、切り離された思考回路は冷静に状況を了解し始めた。
自分たちグレン団は新たな仲間を加え大グレン団となり、螺旋王の四天王が一角チミルフと事を構えた。怒涛のチミルフの大ガンメン、ダイガンザンをラガンで奪い取ったまでは作戦どおりだったが、機能に戸惑う間に最後の反撃を受けてラガンはチミルフのビャコウに刺されたのだ。乗り手である、自分ごと。
幸い直前にダイガンザンから獣人を追い出すことには成功していた。ラガンがなくとも制圧できたのだろう。見慣れぬ天井の意味は、その後仲間がダイガンザン内の医療設備に放り込んでくれたということのようだった。自分が捕まったのでなければ。
推測ばかりで実のない思案は次第に痛覚を押し出す役割を果たせなくなってきた。神経の受信機能に体力を割いているのかはたまた真っ当に回復へ体力を回しているのか、頭がぼんやりしてくる。高い位置で固定された痛みの波に意識を攫わせるか迷っている間に遠くなった耳が空気の動く音を捉える。
痛いと訴えたくなって、訴えたい相手の影が脳裏に浮かんだ。
自分が痛いと訴えたら、我慢しろと頭を撫でてくれるだろうか。それとも、大丈夫かと狼狽えるだろうか。
単純な想像さえ上手くいかない。その妨げになっているのは痛みだと思い込みたかったのに閉じ込めておくには占める心の領域が大きすぎた。
神経の発火と共にちらつく夜明けの光景に叫びそうになって、負荷に咳き込むことしかできない。呼気が阻害されて苦し紛れに涙が落ち、そこからはもう止まらなかった。
解っている。あの腕が抱くのもあの手が触れるのも自分ではない。
悔しいのか悲しいのか感情が動いていことだけは解るのに焦点が定まらなかった。それはきっと、誰を責めることも出来ない話だからだ。
ヨーコが、カミナを、好いていることはそれとなく解っていたはずだった。その事実は長く心の底にひっかかっていて、でも何故自分が気にかけているのかも良く理解出来ては居なかった。
彼女を加え三人と一匹で地上に出て、リーロンが加わって、ロシウやギミーダリーと共に来て、黒の兄弟と出会って、大勢の人々が合流して。
そこでやっと自分がカミナへ向けているものが、他の誰に対するものとも違うのだと気付いた。
その瞬間、突然明日が来るのが怖くなった。
自分が、カミナが死ぬかも知れない。それは多分今までも抱えていた恐怖だったに違いないのにどうしてか自分の好意を自覚した途端に切実な恐怖になった。
手の震えが止まらなくなり、訳も解らず叫び出しそうになって代わりにカミナに話を取り付けた。
帰ってきたら、聴いて欲しい話があると。
その約束さえあれば恐れを乗り越えられると思った。自分も彼も生きて戻ってこれると盲信出来るはずだった。
初めから叶うはずがないと知っていて、だというのに僅かでも自分は期待していたのだ。
馬鹿だ。大馬鹿だ。
カミナの隣から自分が引き剥がされることはないだろうという、それは過ぎた思い上がりだった。
だから、そう、ヨーコをカミナが受け入れた正にその瞬間を目にしてしまったのは多分そのバチが当たったのだろう。
自分はあの人に恋をしていた。あの人が自分に向ける感情が家族に対するそれだと知っていて、それでも。
村を出よう、地上へ行こうと伸ばされた手の意味を誤解していたかった。できればずっと。
調子に乗ってついてきたりするべきではなかった。穴だけ掘っていれば良かった故郷とこの地上はあまりにもかけ離れている。
ガンメン乗りの仲間も増えた。カミナの背中を守るのはもう自分である必要がない。ダイガンザンとの戦いでだって、ヨーコがその責を果たして見せた。
もう、自分に出来ることは何もない。
穴掘りしかできない自分が今更ここにいてなにをすると言うのだろう。
どうしてこうやって生き残ったのかが解らない。
グレンとラガンを合体させて、譫言のように口上を述べたあたりから記憶は揺らいで定まらなかった。両親に生かされた命は確かにあそこで使い果たした筈だったのに。
ぼろぼろと涙を落とす毎に意識が遠のいていく。何故を繰り返すことに疲れた頭には神経を波打たせる疵が救いになった。今はもう何も考えたくない。
苦痛が思考を遠ざけてくれることが、たまらなく幸せだった。
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