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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.11.23,Sat
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2007.10.08,Mon

ここから新規部分であります。
ショタニキという言ってしまえばオリジナルな奴がメインに据わっちまうってのはどうなんでしょうね…
カミナというキャラの特性は子供にすると非常に書きやすいのは確かなんですが、それはカミナの要素を勝手に排除してるということなので良い文章の書き方ではないですな。
女体化の方も常に前後関係だったシモンとロシウを自分の希望通り方を並べさせたいということであんなことになっちゃってるんで、本当毎度好き勝手に捻るのどうにかならんか自分。

この話なんかこうオチがない感じですがショタニキは多分、以降もこんな感じでダラダラ続きます。








泣いた。喚いた。名前を呼んだ。
走る、走る、走って、駆けて、追いかける。
届かない。
全部、全部届かない。
どうしてだ。
一度は許してくれたじゃないか。
この手を取って連れて行ってくれたじゃないか。
何処まででも一緒に行く、だから、置いていかないでくれ。
俺は、俺だけは絶対にシモンを一人になんかしない。
だから。だから、
「…シモン」
何度目だかは忘れたが、とにかく今朝も自分の声で眼が醒めた。
ぼんやり眺める天井ももう見慣れ始めている。ごろりと寝返りを打ってからカミナは舌打ちした。また枕が濡れている。寝ながら泣いたんだと嫌でも解って苛立ちが募った。泣くような弱さは要らないと言うのに。
「ぶーぃ」
身体を起こした所為で寝台が揺れ、すぐ傍で眠っていたのだろうブータが眼を覚ました。てちりてちりといつもよりも鈍い動作でカミナの手元に寄り添い挨拶代わりに腕を舐める。
「はよ、ブータ」
カミナは言葉を返しながら茶色い毛並みを撫でながら部屋を見回した。赤い瞳が眺める部屋は既に使い慣れ始めている。しかし五年間居を構えた部屋とは違い、彼が目覚めれば隣に見つかるはずの相手はどこにも居なかった。
少し眠そうな朝の挨拶も、空色の髪や薄茶の毛を整える手櫛も、シーツに染みこむ体温も何もない。それを確認して口端を噛んだカミナに同調してブータが小さく声を上げた。
毎朝こうして、自分とブータがシモンを失ったのだと教え込まされる。
目の奥が痛みを伴う熱を孕み、振り払うためにカミナはベッドから飛び降りた。追いかけてくるブータを待たずに乱暴にカーテンを開く。その先には闇色の宇宙ではなく、やけに明るい空と林立するビル街が広がっていた。いっかな好きになれない光景に舌打ちをしつつ寝間着を脱ぎ捨て机の上に置いてある着替えを身につける。上下を整え終えると心得たブータが肩に収まった。
「…自分で歩かねえと太るぞ」
定位置の相棒に本意でもなく毒突きながらカミナの足は洗面所に向かう。
鏡に映る瞳だけでなく瞼まで赤くなった顔を乱暴に水で流し、水気をタオルで拭き取ってから歯磨き。次いで既にうなじを越す長さになった髪にブラシを突っ込む。髪を自分の手で収めるのはこちらに来てからの話で、不器用にまとめられた髪は所々ほつれたもののカミナはあまり細かいことは気にしなかった。長々と髪を弄っていると少し前まで毎日整えてくれていた相手を思い出して辛い。いつも一緒だった相手の記憶は何をするにしても頭の中に染み出してきた。
戒めの代わりに髪を紐で縛り、上から赤い布を括る。
「…はよさん。シモン」
シモンがそうしていたように布を撫でて呟く声音はどことなく神妙になった。耳元でブータが同じく僅かにしょげた声を上げる。
人差し指でブータの喉を撫でながら洗面所を抜け出して、部屋の出入り口にある洋服掛けから袖を捲った藍色の上着を手に取る。背中に赤い炎と髑髏とサングラスを模した図案が縫いつけてあるそれは、もう十年以上も前にシモンが愛用していたものだった。擦り切れた部分は丁寧に繕われて色褪せも少なく今でも充分着用に耐えうる。
そうして大事に保管していたのは今カミナの保護者代わりになっているリーロンだ。
男だか女だか解らない相手ではあるが、地上の人間の中では比較的信頼が置ける。かつてシモンが地上から放逐された時もリーロンだけは見送りに顔を見せていた。
実際信頼する根拠になる出来事などその程度でしかない。名目上の保護者が使っている住居の一角に間借りしてはいるが、家主はあまり家に戻って来なかった。
仕事が忙しいのよ、悪いわねえ。
殆ど悪いとも思っていないだろう表情でそんなことを言う保護者はカミナに取っては都合が良かった。四六時中見張られでもしたら息が詰まる。
ただリーロンは子供一人を家に放っておくような無神経さはなく、自分の代わりに一人世話役を家に置いていた。
ココ爺、と呼ばれているその獣人は家事とカミナの面倒を一手に引き受けている。元はシモンの恋人だったニアという娘の執事だったそうだが、ココ爺は黙して語らなかった。
とは言ってもココ爺はあまり喉の調子が良くないのかそもそも滅多に喋らないのだが。
居間に向かうと今朝ももう朝食の準備が済んでいた。前までの生活よりも恵まれた、ただ一人分しかない食卓についたカミナにいつの間にか姿を現したココ爺がスープの器を差し出す。
「おはよう、じいさん。
 あんがとよ」
礼ついでに挨拶すれば挽き臼のような声と一緒に頷かれた。はっきりした発音ではないが多分こちらへの返事だったのだろう。
湯気の立つスープに口をつけて目玉焼きの端を千切ってブータに差し出したところで玄関のベルが鳴った。
応対に出るココ爺の背中を睨むように見送る。誰が出てくるのかは目処がついていた。これもいつものパターンだ。折角の食事が不味くなると胸中で毒突いている間に爺が戻ってくる。案の定、後に続いて姿を現したのは桃色の髪を高い位置でくくった娘だった。
現総司令の秘蔵っ子だかなんだか、同じ村出身の女でグラパール隊のエースの片割れ。
つまるところ、現総司令の一味だ。
カミナからしてみればそれだけで充分敵対者に換算されるのだが、あまりにも保護観察を放棄しているリーロンの分までとでも思っているらしい娘はいつも口うるさい。今日も今日とてカミナを一瞥するとその瞳が吊り上がった。
「制服は?」
挨拶もそこそこ、開口一発告げられてカミナも口を尖らせる。
数え上げるのも癪だが実に特殊な生育歴を持つカミナには幾つか生活上の制限があった。例えばリーロンの保護観察であったり、行くべき学校が指定されていたり、何日かに一度は身体検査と心理テストを受けなければならなかったり。
ダリーが言った制服もそのうちの一つだ。白くやや丈の長い上着の背中に司令部の末端としての印である星が染め抜かれている。色は他の誰も持たされない青緑。カミナの為に設定された、政府管轄の特殊身分(つまり当てはまる言葉が何一つなかっただけだ)の証だった。
「あんなもん誰が着るか」
背中に背負うものを他人に決められるなんて真っ平ごめん、まして地上の連中の印なんざ論外だ。着込んだ藍の上着の襟を正してカミナは憤るダリーを睨み付ける。
「あなたねえ、自分の立場が…!」
「二言目にゃあ立場、立場かよ。ちったあ自分の言葉ってもんがねえのかお前は」
がつがつと口に料理を運びながらもう耳タコの説教へ茶々を入れた少年を見下ろしてダリーはきつく拳を握った。いっそそれで殴りかかってくれでもすれば同じ土俵で争うが、地上の連中は質が悪い。
「そうやって我が儘通してやっていくの?
 言っておくけど、地上はそんなに甘いところじゃないわよ」
目元を歪めた女を一瞥してカミナは口の中の飯を水で飲み下した。まだ言い募り足そうな口を睨み付けて止めさせて、一息ついでに言葉を投げる。
「関係ねえよ」
甘い、甘くないで言われれば自分も甘くはない場所で生きてきた。味方はシモンしかおらず、しかもそのシモンが殺されるかもしれないという危機感を何度も味わった。やってくる地上の人間は全て敵だったのだから。
飯が食える、安全に眠れる、それだけで贅沢なのだ。ここにシモンが居ないという現実以外は確かに地上は楽園だ。アンチスパイラルに首根っこを掴まれた模造品だとしても。
色めき立ったダリーが乱暴にテーブルへ両手をついた。近い位置で視線を交差させ、それでも一歩も歩み寄らないままにカミナは口端を吊り上げる。
「俺は宇宙一強ェ男になる。
 地上の奴等も、アンチスパイラルも、文句言えねぇくらい、強く」
そうだ、俺は強くなる。強くなって、誰にも負けないくらい強くなって、何からも誰からもシモンを守れる男になるんだ。
何度繰り返したか知れない誓いの言葉にダリーが怒りに近い、だがそれだけとも言い切れない顔を見せた。その意味を受け取らないカミナはそれ以上用はないとばかりに空になった皿を放って席を立つ。
もう一度呼び鈴がなったのはそれと数秒の差もなかった。ココ爺がまた玄関へと向かい、今度はぱたぱたと軽い足音が戻ってくる。
居間にひょこりと顔を覗かせたのは金髪の少女だった。穏和そうな少女が誰なのか理解してダリーがさっきまでの鋭さを仕舞い込む。二人の間に走った微妙な空気に気付いたのかアンネは少しだけ間を置き、それから柔らかな声でおはようと告げた。
「カミナお兄ちゃん、学校行こ?」
「おう、今行く」
時間割を揃えたかも定かでない鞄を抱えたカミナの肩にブータが収まる。もう一度顔を顰めたダリーに、アンネが不思議そうにお姉ちゃんは行かないのと尋ねた。
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