飯は喰いたし、眠気は強し。
そんな感じののらくら雑記帳。
Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2009.04.06,Mon
もともとは「いつかのしんじつ」と一つの文章にまとめる予定だったのですが、あっちはロシウ、こっちはリーロンに焦点を当てたので分かれてしまいました(もとはカミナ視点でズラーッといく予定だった)。
短いですが一応ネタバラし回です。
結局ヴィラル出ないままサラッと最後の方にまとめた感じです。
この続きをどうするかどうかは未だ迷いどころ。
短いですが一応ネタバラし回です。
結局ヴィラル出ないままサラッと最後の方にまとめた感じです。
この続きをどうするかどうかは未だ迷いどころ。
その日もリーロンの帰宅は遅かった。いや、帰宅すること自体が珍しいといっても過言ではない。だが、今日は自分が帰らなければならないのだと彼であり彼女である人は知っていた。
静かに入り込んだ家の中は無音のようでいて己以外の息づかいが響いている。そっと足音を忍ばせたリーロンは、真夜中だというのにカーテンも閉めずガラス戸に向き合っている少年の影を見つけた。灯りも無い居間に白々しく月が輝きを投げかける。
家人の帰りにブータは挨拶を投げかけたが、カミナは振り向きもしなかった。それを由としてリーロンは隣に立つ。目立つ月影に掻き消されるようにちらちらと星も瞬いていた。あのどれかが、シモンの乗る箱船かもしれない。だがここからではそれがどれなのか、そもそも箱船が見えているのかすら判然としなかった。
「…忘れられたら、楽なのかもしれねぇ。考えたこともある」
星を数えることを諦めたのかカミナがぼそぼそと呟く。眼を細めたリーロンに構わず子どもは言葉を重ねた。
「親父のこと忘れたみたいに、お袋のこと忘れたみたいに、シモンのこと忘れるかもしれない。忘れて、こっちでの生き方に慣れてってよ」
一年。それが彼の過ごした年月だ。幼い身には決して少なくはない時間が降り積もる。しかし、それでも、どうやっても、彼が過ごしてきた五年の歳月は消えて無くなりはしない。
「でも、忘れられるわきゃぁねえじゃねえか!
ずっと一緒で、二人っきりっきゃいなくて、シモンは俺の親で兄貴で家族で先生で親友で…!
全部だった!全部だったんだ!」
血を吐くように叫び、続く語尾が掠れた。
「シモンがいなけりゃなんもかんも意味なんかなくて…ッ」
間違いなく事実だっただろう。カミナの世界の中心はシモンで、カミナの世界にはシモンしかいなくて、だからシモンが隣にいない地上など彼には意味がなかった。なかったはずだったのだ。
「でももう今は全部だって言い切れやしねえ」
狭かった彼の世界はこの一年で飛躍的に広がっている。そして今日、彼は籠もり続けていた殻を壊された。
「…なんで、駄目だったんだ?」
自らが立ち止まることを許せない少年は、ようやっとリーロンを見上げる。泣きそうで、それでも強い意志を宿した眼だった。
「地上にも優しい奴がいて、頭良い奴も居て、皆頑張っててよ。
それなのに、なんでシモンは裏切られたんだ?」
潜めた囁きが繰り返す。どうして、と。
過日が脳裏に押し寄せ、しかしその波を御したリーロンは一度閉じた瞼を開いた。人をバカにして笑う唇の形をした月をみつめる。
「皆無知だったからよ」
カミナからの応えは無かった。少しだけ口調を和らげて天才的な技術者は言葉を紡ぐ。
「例えばあなただって地上に来なければいつまでも、ここに優しい人間が、頭の良い人間が、頑張っている人間がいるということを知り得なかった」
彼であり彼女は珍しく空色の頭に手を当て髪を梳いた。幼子扱いを嫌がるはずのカミナも大人しく受け入れる。
「考えなさい。
あなたが地上の誰よりも、アンチスパイラルよりも強くなった時その先に何があるの?あなたはどんなものになってしまうの?」
慰撫する手の平にこくりと頷く動きが伝わった。笑んだリーロンは指先を離し、腕を組む。
人が百万を越えた刻、死神となる月を眇めた眼が映した。今も地球は監視され、螺旋力はその全てがアンチスパイラルに感知される。
だが人が反乱を起こすことができないようにと施されたその処置にも、足掻き続ける者達は抜け穴を探し出した。
螺旋力が伝わってしまうというのなら、螺旋力を使わなければいい。工程に螺旋力の関与さえなければ決戦兵器を建造することは可能だった。今も議事堂の地下深く、かつて螺旋王が残した施設を使って極秘裏に獣人たちが作業を進めている。
この星に生きとし生けるもの全ての命を賭けた計画をカミナが知るまで、あと少しの年月が必要だった。
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