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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.11.23,Sat
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2009.07.11,Sat

あんまり話は進んでいないですが…
大グレン団男衆の出番を入れる予定だったのですが、テンポが悪くて切ってしまいました。
たぶん次回は出番がある…んじゃないかな!







それは僥倖、だったのか。
ともあれ彼女がそこに居ることによって、最低の混乱だけは避けられていた。
「グラパール、ギミー隊前へ! ダリー隊を援護に回せ、随時他部隊も発進準備!」
凛とした声がモニタールームに響く。応じて、オペレーター達が計器の確認に目を走らせ、コンソールへと指を走らせた。
だが指揮官たるロシウが育て上げた優秀な人材でさえ現状を打破することが出来ない。突如現れた未知の存在が一体なんなのかを把握することは難しかった。その間にも交戦するグラパールの損害は増えていく。
(地上に存在する螺旋生命体が100万を超えたと計測)
ロシウの脳裏に、見知っていた筈の男が口にした言葉が繰り返された。
100万。それは、この七年間自分がずっと恐れ続けてきた数字だった。カオガミを奉る村で50人の制限を守り続けてきたのと同じように。
「……百万の猿がこの地に満ちた刻、月は地獄の使者となりて螺旋の星を滅ぼす」
思わず預言が口をつく。確かに目の前のモニタへ映る様は惨状としか言いようがなかった。不可思議な姿をした正体不明のロボットはこちらの攻撃を受け付けず、易々と市街地を破壊していく。
これが、地獄の使者なのか。
ロシウの思いを肯定するように、月を背景に外套をはためかせた男が街を睥睨していた。彼の名を冠した街を。
 ───間に合わなかった。
積み上がる報告へ回答しながらロシウは歯ぎしりする。あれほど人口統制を行おうとしたにも関わらず失敗し、ロージェノムも未だ目覚めていない。この七年を無為にしたのだと己への憤怒が去来する。
苦い思いを一瞬だけでも拭い去ったのは、鋭く響いた女の声だった。
『グレンラガンを出すぞ!』
図らずも、管制室に歓喜の空気が立ちこめる。本来ならば自ら戦場に立つ筈もない身分のシモンの宣言に、オペレーター達も出撃している兵達も沸き立った。総司令と相似形の男が敵対するマシンを操っている状況で、もう一人の英雄の存在は彼らの心を奮い立たせる。
『待機チームは俺が直率する。
 戦闘能力を喪失してもまだ動ける機体は市民の救助に回せ!』
シモンの声はロシウにも冷静さを取り戻させた。戦闘指揮をシモンに一任し、自分は被災状況の確認に回る。新政府は僅かなりにもその舵を取り戻そうとしていた。


踊る、躍る、炎がおどる。
まるでそれはいつかの旗印のように。
あたかも彼の人のマントめいて。


グレンラガンの、ラガンのコクピットの中でシモンは大きく息を吐き、そして炎に包まれる街を見下ろした。許せない。怒りを読み取ったコアドリルが緑光のメーターを巻き上げる。赤い光と無機質な板で構成された奇妙な敵へシモンはドリルを向ける。グレンラガンは七年前よりも更に彼女の身体に馴染んでいた。当然だ。シモンの身体の半分は、ガンメンと同じもので形作られている。親和性が高いのもむべなるかなだ。
生体部分の成長に合わせて無機パーツを追加してきた所為で今ではおそらく体内の比率は機械の方が多いだろう。七年前、仲間達が傷からの回復期間だと考えていた時期は全て新たな身体を操るためのリハビリに費やされていた。本当に再び前と同じように動くことができるのか、リーロンでさえ難色を示したのだ。
それでもシモンはそれを乗り越えた。乗り越えなければならなかった。そうしなければならないと思った。全ては、彼の為に。
ハンドガンもブレードも利かずに防戦一方のグラパールを庇い、シモンはドリルで敵の放つ光線を薙ぎ散らす。ムガンとはギミーもよく名付けたものだ。
そのギミーがもう一度斬りかかろうと大振りな動作を見せる。斜め後ろからダリーがハンドガンを連射してムガンを足止めしようとしていた。教練通りの良いコンビネーションだ。しかしムガンには通用しない。刃が弾かれたギミーをムガンのビームが狙い、シモンは無意識にグレンラガンをその間に滑り込ませていた。
「……っ」
策があった訳ではない。だが、グレンラガンの方が防御力があるだろうという目算はしてあった。しかしグレンラガンはあのリーロンが"スペシャル"と呼ぶだけあって、シモンの想像以上の働きを見せる。庇う為に突きだしたドリルはビームを巻き取り己の力へと転化していた。計器の反応を見たシモンは口端を吊り上げる。
「ギミー! ダリー! 下がっていろ!」
まだ抵抗を続けようとする二人を抑え、グレンラガンは巨大化したドリルを構えた。雄叫びを上げながら突進した切っ先はそれまでどんな攻撃をも凌いでいた防壁を突き破り、ムガンを四散させる。
『やった!』
『シモンさん、後ろ!』
ギミーの歓声とダリーの注意が同時に耳へ飛び込んだ。貫いた勢いのまま背を晒すグレンラガンをもう一体のムガンが狙う。しかし歴戦の勇士はぬかりなくそれにも対応し、振り向きざまにドリルを構えた。最早敵のエネルギーを吸収してからなどというまだるっこしいことはせず、宙を駆け抜けながらそのままビームを巻き取る。
「もう一丁!」
勢いを殺さず、シモンはもう一体をも撃破する。彼女の活躍にグラパール隊も管制室も喜びの声を上げた。グレンラガンを囲んでいたムガンの破片が、紅の装甲に触れるまでは。
「っ!?」
小さな、下手をすれば人間の両手でも包み込めるような欠片。ムガンの残滓は雨のように破壊の中心たるグレンラガンへと降り注ぎ、その表面で爆発した。一つ破裂すれば隣のそれが続き、無限に続くかのように爆炎が人類の守護神を包み込む。
『シモンさん!』
ロシウの案じる声が届くが、それどころではなかった。置き土産は街へと辿り着き建物を、街路を弾き飛ばす。悲鳴と怒号混じりの観測が通信回路を満たした。全方位を炎に囲まれ目では状況を確認できなくても、言葉で何が起こっているのかは伝わる。失敗したのだとシモンが理解した瞬間、炎が渦巻くモニターにノイズが走った。
「え」
間抜けた声が喉を震わせる。ちらちらと揺らめく影は一瞬で人の形を成した。空色の髪に赤い瞳、黒いマント、肌を彩る光の線。馴染んだものと知らないものが入り乱れた姿でカミナが炎の中に現れた。
「あ……にき!」
反射的にシモンは腕を伸ばす。グレンラガンのそれではなく、コクピットの中で彼女自身の腕を。届かず、しかしせめてモニターに触れようとした彼女は驚愕した。未だ続く爆発をものともせずそこに浮いている男は、どこからか取り出した剥き身の刀をこちらへ差し向ける。
まるで、ブタモグラのステーキを切り分けるように、サックリと刃はグレンラガンの間接に飲み込まれていた。がこりとコックピットが空に晒される。レーダーの欺瞞と思いこむことを許されずに、シモンは相手と対峙した。
「兄貴」
呼吸と共に熱された空気が喉と肺を焼く。瞳から水分が蒸発していくのが解った。それでもシモンは彼から瞳を逸らせない。否定したかった。火に撒かれてはためく外套の男がカミナなどではないと、敵が自分たちをかく乱させるためのただの似姿に過ぎないと。
けれど。
「シモン」
低く冷たく感情もなく、単なる音の連なりとして名を呼ばれる。にも関わらずそれは紛れもなくカミナの声だった。カミナがシモンを呼び、縋るように見つめる妹分へ与えられたのはぎらつく刃。
単純に研ぎ澄まされただけの刀ならばシモンの肌を切ることはできても内部までは損傷を与えられない。しかしガンメンさえ切り裂いたそれはあっさりとシモンの腹へと飲み込まれ、更に刹那姿を揺らめかせるとムガンの欠片と同じように爆裂した。
血ではなく、機械の破片が撒き散らされる。
悲鳴は上がらなかった。物のように座席へと滑り落ちた虫の息の娘は、それでも手を伸ばす。
「……にき、……」
焼けただれたコクピットを一瞥した男が端から光の粒子となって空へ散った。目を見開き、それが限界でシモンの意識が途絶える。同時に墜落しようとしたグレンラガンを、辛うじてギミーとダリーのグラパールが支えた。

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