飯は喰いたし、眠気は強し。
そんな感じののらくら雑記帳。
Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2000.07.07,Fri
調べてみたら前年11月より書きかけていたという代物。
そんな骨董品が山程埋まっている、それが管理人のパソコンです。
そして女子艦長+触手とか、需要がさっぱり解らねえ!!
そんな骨董品が山程埋まっている、それが管理人のパソコンです。
そして女子艦長+触手とか、需要がさっぱり解らねえ!!
…気づけば、シモンは黒く継ぎ目がない床の上へ立っていた。
芯に残る凍えに身震いしながら彼女は周囲を見回す。共に来た仲間も機体も傍にはなかった。
ひたすらに続く滑らかな床と天上に走る緑の光線が照らす部屋には果てもない。
部屋の中には彼女と、そして影が一つ立っていた。
「甘き夢より滅びの未来に浸るを選ぶか」
のそりと影が囁く。冷えた空気を揺らした声にシモンは眦を吊り上げた。
「世界は滅ばない。滅ぶのはお前だけだ、アンチスパイラル!」
今や単騎と成り果てても、戦う意思に衰えはない。
例えたった一人だろうが目の前の影さえ倒せば世界を自分達の手に取り戻せるのだ。
なんだかんだと講釈の余地はあるが、畢竟螺旋力とは即ち精神力。気合いだ。
つまりこちらが気弱になればその分抵抗力は覿面に弱体化する。
なればただアンチスパイラルを倒すことだけを考えればいい。
「滅びを呼ぶ娘よ」
「ああ、お前にな!」
語りかける声諸共、この場所へ至る前に知らされた事実を振り払った。今や彼女に残されたただ一つの武器こそが世界に崩壊をもたらす原動力であるという結論を今は無視せざるを得ない。
そうして己を奮い立たせ床を蹴って駆け出し、拳を握ったシモンを影は笑ったようだった。それに伴って天上と床を走る光が奇妙な実体を得る。アンチスパイラルと同じ闇色の管に緑の煌めきを刻印して芋虫めいたものがシモンへと迫った。
螺旋力がそのまま感情を糧にすると考えれば、わざわざそんな形態を選んだのは多少なり敵に忌避感を植え付けようとしているのだろう。確かに女子の中には…そういえばダリーがそうだったか…芋虫の類を嫌がる者は多い。
だがシモンにしてみれば見慣れたものだ。穴を掘れば虫も数えるのに飽きる程顔を合わせる。得体の知れない敵と考えれば不気味さもあるが、姿形自体には怯えも恐怖も無い。
ご高説垂れながら間抜けた罠だった。情報を盗んだと言っても大した量ではないか生かせるだけの頭がないと見える。
「こんなもの…!」
ニヤリと口端を上げてシモンは跳ねた。生身で戦う分には邪魔なコートの袖を抜き、迫ってきた芋虫をそれで防ぎつつ投げ捨てる。
身軽になった女は速度を増し、いなされたことに不快を示しながら黒い肉の塊がそれを追った。自由に形を変える闇の塊は時と共に生物らしさを増す。べたつく音を立て息遣いすらまとってますます管虫へと近づいた。
首でも締めようとしたのか勢いよく伸びてきた触手をシモンは指で握りしめて止める。手で払えば大した距離を稼がずにまた巻き付こうとしてくるだろうと踏んだのだが、間違いだった。優れた動体視力でも捉えられなかったが肉塊の先端には窄まりがあり圧力を与えられて粘液を吹きだす。庇う暇もあらばこそ顔に思う様粘液を浴びせかけられた。視力を奪われることに焦って腕で拭うも産まれた隙は償い難い。
「くそ、離せッ!」
足首に巻き付いた太い蛇のような肉をもう片方のブーツで踏みつけ取られた脚を抜き、跳び退った先でシモンは濡れた床に脚を滑らせた。着地点など選んでいられない状況ではあったが体勢を崩すのは致命的にも程がある。
転ぶことを防ぐのが精一杯の脚はかかる負荷に悲鳴を上げた。目元を効かせ踏ん張った隙にしなる肉紐が背後から脹脛を打つ。タガを撲たれ膝が折れた。今度こそ地に着こうとした体を今度は彼女自身ではなく襲いかかる触手が支える。体温もあれば脈動もする縄が宙に躍ったシモンの腕に巻き付きその体重を支えた。引っ張られ痛みを憶えた肩に思わずシモンも苦鳴を零す。
「くぅ…」
腕を戻そうにもぎりぎりと締められ引き伸ばされていては筋肉も働けない。その間にもう一本の触手が余裕無く真っ直ぐにさせられた腕を辿った。毛虫のように繊毛に覆われた肉はシモンの肌をくすぐりながら肩まで至る。そして剥き出しの脇、締めることも適わない急所を繊毛が撫で回した。
「…んっ…!」
痛みは全くない。だが毛虫に脇の下を擦られると酷くくすぐったかった。体をよじろうにも既に足首にまでぬちゃぬちゃと肉が絡んでいる。這う毛の中から不意に小さな針が肌を刺し、慰めるように毛並みに擦り寄られてぴくりと痩せた背中が震えた。
虫の動きは自分の集中力を削ごうとしているのだと判断してシモンは奥歯を噛みしめる。まだ自由になる指を緊張させ、毛虫の動きより素早く力を流し込んだ。圧倒的な戦力差、消耗ばかりの状況では使うに惜しいが致し方ない。
迸った螺旋力が腕に巻かれた触手を捻り、千切り、出来上がった肉片は粘つく体液を零しながら床に散らばり同化した。
次は足下の連中。頬から顎を伝い胸元に落ちた体液は放ってシモンは視線を落とす。だが彼女の反応よりも仲間を痛めつけられた触手がブーツを辿り剥き出しの太股に至る方が早かった。
べちゃりと滲み出る体液が擦り付けられ肌が冷える。単純に粘液が冷たいのかと思ったが肌に押しつけられる肉は不気味に温かかった。自分の身の熱が下がっていると知り焦ったシモンは今度は脚に螺旋力を纏わせようとして失敗する。
あの重力の海と同じだ。触れた部分から螺旋力が奪われていく。体温が下がるのは体力までも盗られているからだ。
マズい。
気合いが削り取られていくのを心を奮い立たせて防ごうと試み、しかしそんな当然の行動は相手にも読まれていた。
「ひぁ!?」
甲高い声が自身の耳に届く。まるで女のようだと頭の片隅で考えたのはその一瞬だけで、直後それどころではなくなった。勢いよく伸びた触手はほっそりとしたウェストを登りぐるりと胸の上下を回った。くびりだされた乳房に押され胸元だけを覆うビスチェがぎちっと布の限界を訴える。そうやって余計に張った谷間にぬめつく蛇が潜り込んだ。脂肪の壁に包まれるだけでは飽きたらずにその先端はシモンの唇に身を擦る。口許を歪め侵入を拒もうとしていたシモンは押しつけの強さに僅かに口を開き、入り込んできた肉塊を歯で噛み切った。
だが痛みを受けた触手は余計に暴れてシモンの体を締めつける。染みこんできた粘液がビスチェを肌に貼り付かせた。振り払おうと身じろぎすれば揺れる乳房の先端へ布がまとわりついてくる。本来庇ってくれる筈の服にいじられた乳首がまるでもっとと言うように立ち上がった。じんじんと熱をもつ胸の先端に何事かと顔を青ざめさせたシモンに、ひっそりとその姿と同じく影のように佇んでいた反螺旋が嘲笑を投げかける。
「守る?救う?取り戻す?
おためごかしを」
反論しようにも舌を肉につままれ、口の中を磨かれている状態では言葉を紡ぐはおろか息すらまともにできなかった。睨み付ける目尻も紅く染まり勢いが衰える。虎の子の螺旋力を使ってまで散らした腕の拘束も容易に復活し、対峙の力を奪われ行く螺旋の戦士を見て虚ろな影は言葉を重ねた。
「お前こそは破壊神」
視界を遮るようにシモンの目の前に新たな蛇が頭をもたげる。膨らんだ先端は裂け目からブラシのように更に小さな触手を生やしていた。それら一つ一つが生きていることを主張してんでばらばらの方向へ蠢いている。何をされるのかと背筋を冷やし、怖じ気づこうとする自分を叱咤して気を引き締めたシモンの胸元で絡む肉が蠕動を始めた。
「滅びを呼ぶ者だ」
どこか愉しそうに語る反螺旋がそそのかしたのか、乳房が更に強く押し揉まれその間に挟まった肉が上下動を速める。その激しさに乳首に噛み付いていた布も力を奪われて凝り立つ先端を引っ張るようにして役目を放棄した。ぺろりと剥がれた黒いカップの下から新雪めいて白い地肌が現れる。蠢く肉枷のお陰で小動物のように震える乳房にシモンが顔を顰めていられたのは一瞬だった。
のろりと動いたブラシ状触手が胸に落ちてまろやかな稜線を撫で下ろす。それだけで息を呑んだシモンは凝り立った錐を肉のブラシに掻き立てられて声にならない悲鳴を上げた。腫れぼったく膨らんだ豆を殺到した虫が体内に戻すように押し揉んでくる。取り囲むブラシが突き回しても勿論乳首は収まらずむしろ更に硬くなった。反抗する芯に躍起になったブラシはますます嬲る勢いを増し、滲み出る粘液が泡立つ。
伸ばされた腕を引いても肩が痛むだけ、振り払おうにも身を揺すれば余計に激しく胸を苛められるシモンが悔しそうに顔を歪めた。文句を叫ぼうとする喉を口に収まった肉がつつき舌をくすぐる。
どうにか抗おうとするシモンに触手は容赦しなかった。胸だけでは飽き足らず数を増した肉虫は蠱惑的に揺れる乳房だけではなく未だ黒光りすショートパンツに守られた股座に向く。今されている私刑に気を取られているシモンが新たな暴虐に気づいたのは、腰回りを戒めるベルトが触手に引かれ余計に締まった所為だった。だがその反応は遅く、そもそも彼女に何が出来るわけではない。
ばきり。単純にも程がある、しかし恐るべき膂力を見せつけて巻き付いた触手がベルトのバックルを破壊した。放られたベルトが収まっていた輪を触手が掴んでホットパンツを引っ張る。布が食い込み尻が撓み肌へ痛みを憶えるのも束の間。耐えきれずに破れたズボンの合間から白い下着が覗いた。
「…っ!」
さしものシモンも羞恥に頬を赤く染める。上半身を飾るビスチェやチョーカー、腰回りを守っていたホットパンツ、そしてしなやかな脚を太股まで覆うブーツに比べれば貧相、子供っぽいとすら表せる下着だった。申し訳程度にレースをあしらった薄布越しに触手が恥骨をつつく。その動きがからかいなのだと気づいてほんのり色づく程度だった朱が耳まで昇った。
白く薄い布は恥丘にはりつき畝の形を浮き彫りにしている。あまつさえ濡れそぼつ下着にはうっすらと紅い肉の色が浮いていた。髪と同じ藍色の恥毛が飾りのように透かし見える。
それはシモンが触手に嬲られ反応した印だった。
乾いていればいくら薄いとはいえ布地が透けるはずもない。触られずともぴくぴく蠢く秘所はその度に涎を滲ませ余計に布を股底に密着させた。
触るな見るなと頭の中で喚き立てるシモンの舌をなで回す虫が歯列を撫で口腔内を甘くさする。嫌がって力が入った身体は素直に股間にも緊張を伝え、半透明になった布と共にぴくりと女性器が震えた。
それが面白いとでも言うように薄っぺらい蛇の舌のような触手が股下を舐める。喉の奥で悲鳴を上げ、あまりにも娘らしくシモンは目尻に涙を浮かべた。だが暴虐はそれに留まらない。
べたり、べたりと粘液で肌に張り付いたブーツを吸盤のついた野太い触手が這い昇った。場所が場所であれば食材にもなり得るような姿のくせ、その身に丸く盛り上がった吸盤を無数に纏った姿がシモンに首を振らせる。
最早懇願を載せたつぶらな瞳に見せつけるように肉縄は足にまとわりつき、それから未だ冗談のように下着を着せつけられたままの股座を鞭打った。痛みに震える暇も無く並んだ吸盤が股の間に吸着し、愛液を啜り出す。
藻掻いて引き離そうにも両腕は相変わらず引き延ばされたまま脇に悪戯が続き、両脚は囚われ、白い腹も乳房も唇も弄ばれていた。暇を持て余すように耳の裏をちろりと撫でられる。
自らの無力で最愛の人を失って以降、シモンは自分の性を捨てた。捨てたつもりで居た。それまでも男と同じだけ働いていた身を更に追いつめ、仲間を率いて螺旋王を追い、都市を負い、そして星を守るため戦艦の艦橋にさえ立った。
しかしそこまでしてきた娘の半生を嘲笑うように触手は女の身体を弄ぶ。軋みを上げる心からは触れる触手が奪う以上に螺旋の力が失われていった。
「よくぞここまで来た」
破壊神とまで呼びながら今更反螺旋はシモンを褒め称える。影は滑らかに動きその距離を詰めていた。囚われたシモンでは届きようも無い位置でノイズを纏った異形は虫たちと同じように腕を振るう。
その手は潤んだシモンの目の前で五本の指があることを示し、そしてゆっくりと艶めかしい肌に触れるか触れないかの近くを辿って戒められた足の間まで落ちた。
下着のウエストから黒く厚みの薄い手が潜り込む。白布を盛り上げ湿った毛を掻き交ぜられてシモンの喉が引き攣った。化け物めいた姿ではあるが手の平の質感は確かに人間のもので、体を這い回る肉虫達とは異なる。紛れもなく人の体温と感触にシモンの心は悲鳴を上げた。男に嬲られている、と、認識して灰色の瞳が幼い子供のように揺れる。。
男のように振る舞い矜持を支えてきた女は今や恐怖に震えた生娘に成り果てていた。
かたかたと震え始めた細い肩にアンチスパイラルは目を細める。その途端、まるで今までそこに存在していなかったかのように触手の全てが透明な床と天井に飲み込まれた。訪れた静謐の中、手を伸ばせば螺旋の力を使えるはずのシモンはその腕で自分自身を抱きかかえる。怯えに浸された人間が最初に取る胎児の体勢で藍色の頭が揺れた。
ばきり、と何かが壊れる音がする。空気を揺らさぬその魂の音を聞き取り、反螺旋は静かに呟いた。
「始まったか」
恐慌に晒されたシモンの中のタガが外れる。
敵を。目の前の敵に滅びを。自分を傷つける者へ滅びを。
「終焉が」
人ごとのように囁きながらアンチスパイラルはシモンから溢れ出す緑の光を見つめた。赤子が泣き叫ぶのと同じ調子で巻き起こる奔流にいっそ優しい眼差しで反螺旋は語る。
「全てのものに寿命がある。
どんな治療を施しても死には抗えない。
我らは種の抱く毒を除こうとしたが…それとて緩慢な死でしかなかった」
哀しげに、愛おしげに、駄々を捏ねる光の渦の中心へアンチスパイラルは足を踏み出した。
「…我らは種を守ることに厭いたのだ」
ぎり、と歯を噛んだシモンが冷え切った手指をどうにか折りたたみ力を集める。
近づいてくる者は敵だ。敵は倒す。倒せばもう何も怖くない。
こわくない──────
今にも泣き出しそうな顔を上げて影を睨もうとした灰色の瞳は、しかし認めた者にゆるりと力を失った。
「─────…あ、にき…?」
握っていた拳が解けるのと同時に螺旋力が霧散していく。
唯一の勝機を逃したことにすら気づかぬまま茫然と瞳を見開いたシモンの前で、影ではなくなった反螺旋が嗤った。
「…都合が良いと考えたことはないか」
聴いたことのある足音を立てて雪駄が滑らかな床を歩む。
「螺旋力が異常成長した子供」
一歩ごとに空色の髪が、赤いマントの裾が揺れた。
「その生活圏に存在したスペシャル級ガンメン」
刺青を纏う腕が伸び、骨張った指は頬を撫でる。
「地上を目指す男」
長い睫毛に縁取られる赤い瞳が、彼女の顔を覗き込んだ。
「全ては布石」
何度も名を呼ばれた、その声が耳に雪崩れ込む。
「ここに至るは予定調和」
掌が頬を離れ、そのまま真っ直ぐにかの人の腕は天井を示した。
「なにもかもみな、滅びの道のために」
ずるり、シモンは座り込む体力さえ放棄する。力無く腰から床に落ちた女は重く疲労に支配された体を腕で引き摺った。全体重をかけられ肘が震え手の平の距離すら進まないまま力尽きる。それでももう一度と足掻いたシモンの顎を長い指が絡め取った。上向かされた先に良く知った、懐かしい、求め続けた笑顔が待っている。
「…良く此処まで来たな、シモン」
労う声音で言いながら汚れた体を刺青の腕が抱きしめた。触れ合う肌の体温すらも、シモンの記憶と寸分違わない。
「流石は俺の妹分だ!」
くしゃりと藍色の髪を混ぜる仕草、嬉しそうに跳ねる声の調子、子供のような無邪気な笑顔。全て、全てが。
「シモン」
これは嘘だ。
アンチスパイラルが俺を陥れるために用意した偽物に過ぎない。俺の人生が兄貴の運命が全て計算し尽くされていたなどと、そんなのは詭弁なんだ。
そうじゃないか、そんなの認められるはずがない。ならば俺は俺達は何故、何の為に。
「兄貴」
嘘だ、と思ったはずだった。全ては罠だ、と信じたはずだった。
だがもう動かせない程に使い果たされていた腕は広い背中を抱きしめる。視界が歪み、青ざめていた頬を涙が伝う。しゃくり上げる喉が止まらない。どくどくと暴れる心臓が締めつけられる痛みを憶えた。
「兄貴」
嗚咽混じりに呼ぶ度にシモンの頭が撫でられる。間違いなくそこにいるのが兄貴、カミナなのだと理屈以前に理解した。姿形ではなく魂が報せる。
それは、疑う余地無き答えだった。
彼に出会ったこと、それがシモンにとっては答えであり全てだった。
本当はそれ以外など、例えば百万の命でさえ、彼女には必要がない。
失われた標を再び得た迷子は泣き顔のまま笑った。
兄貴、兄貴と呼ぶ度に優しい声が応じ頭が撫でられる。どんなにこうして欲しかったことか、この腕を再び取り戻す日を何度夢想しただろう。
辿り着いたのだ、とシモンは至極幸せに理解した。
「さあ、行こうじゃねえか兄弟」
甘えつく娘の背を柔らかく叩いてカミナの声が、否、カミナが誘う。
「お前のドリルは昨日と今日と、明日を貫くドリルだ」
…与えられた言葉に、一度消え果てた筈の螺旋力が溢れた。
留まるところを知らぬ力はシモンの灰色の瞳を翠に渦巻かせ、白い肌すらも発光させて暗い部屋へと広がる。螺旋を描く奔流が空間の境界線を破った。
世界の枠を貫き、今日も明日も時間という概念すらも飲み込 んでいく。
そうだ。それでいい。
自分達が封じてきた輝きを見つめて反螺旋は微笑んだ。その煌めきは本来彼等にとって慕わしい。世界を守るために堪え忍び、愛しているのに封じた眩しさに彼であり彼等であるものは見惚れた。
輝きを乱反射する赤い瞳から落ちる泪は永の呪縛から解放された集団意識の歓喜か、それとも。
「シモン」
企図の上に生み出された、画策の鍵としての人格情報が零したものか。
そのどちらであるにしろカミナと名付けられた器は腕の中のシモンに口吻けた。
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