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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.04.27,Sat
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2000.11.23,Thu

シモンイジメテッペリン敗北ルート
義父上がご登場の際には触手生産キャラキタコレと思ったものですが三部を通過した今となってはもうそんなんも書けないなあという感じであります。
こんな話に登場とかシトマンどんの貧乏くじぶりも堂に入ったものです。







…ロシウは、ちゃんと逃げられただろうか。
それが気がかりだった。
他にももっと考えなくてはいけないことがあるのは解っている。だが思考が回ってくれない。
グレンラガンはテッペリンに先陣を切って突入し、集中爆撃を受けて足止めされたところで仲間と連絡がつけられなくなっていた。山ほどのガンメンに囲まれ、それでもラガンの自己修復機能を頼ってかなりの時間は保たせたように思う。
しかし圧倒的な戦力差の前に如何にスペシャルと言えども勝ち目はなかった。大体、どれだけスペックが高くても中に乗っているのは人間なのだ。自ずと限界は見えてくる。
無理だと悟った瞬間に、とにかくロシウだけでもとグレンの脱出ポッドを排出した。あの中で、誰かを死なせる事だけはもうしたくなかった。
解っている。
状況は絶望的だ。
連絡が途切れた仲間達が今どうなっているのか、考えることが出来ない。予想することは簡単で、おそらく一瞬よぎった思考はほぼ真実を言い当てているはずだ。しかしその現実を頭が認められないままに看過する。
ロシウは、無事かな。そればかりを繰り返し考え先に進むことが出来ない思考を無理矢理引き戻された。
髪を掴まれ頭を上向かされて、痛みに嫌でも瞳が開く。左右を固める獣人に伸ばされた腕を握られ肩を押さえつけられ、剥き出しの膝が床に擦れる形で中途半端に体を起こされていた。
材質の解らない床と暗い室内に戸惑う間もなくシモンは眼を剥いた。薄ぼんやりしていた焦点が定まる前に侮蔑が投げつけられる。
「我が前に膝をついた気分はどうだ?ん?」
持ち上げられた首を更に上向け扇いだ先に罵倒を発した男が居た。螺旋を描いた台座の上に設えられている席、王者として君臨する者だけに許された場所へと腰を降ろす男。その鬱屈した瞳がシモンを射抜いた。投げかけられた視線は強い感情も映さないが故に薄気味悪い。
自分が身震いしたことを知り、それを振り払うためシモンは叫んだ。
「…っ生きてる!俺はまだ生きてるんだ!!生きてる限り、負けてない!」
敵に無様を晒すまいと無理矢理鼓舞した声は壁すら解らない広すぎる部屋の中で凍えた反響を生み出す。
「児戯よな」
間を置き、鼻で笑われて一気に血が逆流した。
「…っなんだと!?」
無意味な虚勢と見抜かれていることが嫌でも理解出来てしまう。
喧嘩に勝つには熱いハートとクールな頭脳。言い聞かせてきたはずの訓戒が吹き飛んだ。激昂し、制御のタガを外した膂力が拘束している獣人の手を押し返す。幼い外見を裏切って引き絞られた筋肉は感情に従いシモンへ力を与えた。
「っ、螺旋王ぉおおお!」
獣人の支配者が頂く通り名を叫ぶ声の苛烈さのままに獣人を振り切る。尻餅をついた下っ端には眼もくれず駆け出そうとして、シモンの細い脚が払われた。注意が正面に鎮座する男だけに向けられていた彼は簡単に体勢を崩し磨き抜かれた床へと転がる。
「クソッ」
吐き捨て腕で身体を支えようとしたシモンの背中が踏みつけられた。首だけでどうにか振り向いた先に派手な飾りが揺れる。優越感に浸った瞳に見下ろされて吐き気がした。敵の足裏が捉えているのが服に描かれたグレン団の証と知れて怒りで眼の奥がちかちかと瞬く。我慢ならないというのに反撃出来ない自分自身すらも憎くてたまらなかった。
「状況も解らんのか?裸猿め」
楽しそうな声には聞き覚えがある。飛行能力を有した戦艦の持ち主だ。撃退された恨みを晴らすつもりか押しつけられた足に更に体重が加えられべしゃりとシモンは床に伏す。
「青く甘いな、所詮人間よ」
せせら笑う螺旋王の言葉が不快に過ぎて幼い反乱軍の首領は憎悪を身に滾らせた。だがその感情は王座の男に欠片さえも届かない。さりとて意味を認めずとも未だ戦意が失われていないことだけは理解したらしく、螺旋王は口の片端を吊り上げた。
「その意志を壊すもまた一興、か」
螺旋王が手を振る。それと共に光源がほぼゼロだった部屋の一角に明かりが灯った。刺激に引かれ思わず己の右側へと向けた視界に人影が映り込む。
「…!」
声を失いながらもシモンはそこに居るのが誰なのかを悟った。透明な壁に阻まれた向こうには大グレン団に属する人間達が捉えられている。誰もが手足を拘束された姿で立たされすし詰めになっていた。唐突に姿を現したと見えたのはあちらも同じらしく戸惑いと不安が顔に浮かんでいる。誰もが辺りを見回し状況を確認して、結局最後には全ての眼が視線を正面へと向けた。浮かぶ感情はとても好意的とは言えない。
絶望を通り越したその瞳の色が怒りや憎しみであることはシモンにも容易に理解できた。そしてそれが敵でも彼等自身でもなく、自分に向けられたものであることも。
失敗したのだ。自分は。求められた役目を果たせなかった。
鼻の奥が痛んで、それが何の前兆なのか気付いたシモンは歯を食いしばる。一敗地にまみれた将の傷に塩を塗り込む言葉が頭上から投げられた。
「人間の業とは深いものよな…己の意志で選び取ったと言いながら、失敗は他者に帰属したがるのだから」
ロージェノムは強大な敵ではなく、幼く無力でありながら自分達を率いようとしたシモンへと憎悪を転移させている人間を揶揄す。その抑揚の無い声音は部屋にこそ大きく降りたものの壁の向こうへは聞こえていないようだった。
「…」
言葉での反抗を止めてシモンは仲間達を眺める。一瞥した限り、ニアは居なかった。ヨーコも。リーロンも、ロシウも、ダヤッカも、キタン達四兄妹も。親しい人々は誰も居なかった。それが自分にとってプラスかマイナスか俄には判別がつかない。
どちらにしろ自分には彼等を救う責任があった。どうすれば、と今更考えを巡らせ始めたシモンに気付いたかのように螺旋王が言葉を投げる。
「お前がその身で少しなりとも私の無聊を慰めてみせるのなら連中を助けてくれようか」
信じられない温情、と言うべきだった。命を命とも思わぬ男の言とは思えず眼を丸くしたシモンに嘲笑が降りかかる。
「螺旋王もお人が悪い…躾けもされていない人間ごときにお戯れを」
我慢出来ないとばかりに吹きだした鳥の獣人がシモンを正面に蹴り出した。シモンは体勢を崩しながらもそこから細い体を起こす。
「…仲間を……助けて、くれるんだな」
確認の声は掠れた。くどい、とつまらなそうに吐き捨てながらも螺旋王は頷いてみせる。
「お前が面白い見せ物であるうちは、な」
加わった注釈の意味まで考える暇はなかった。僅かでも仲間達に延命の可能性があるのならシモンはそれに賭けなければならない。よろめきながら立ち上がる少年は戦いの間で作った幾つかの傷に痛みを憶えながらも前へと足を踏み出した。頼みの綱のコアドリルも失った今、ラガンを呼ぶことも出来ない。顎をしゃくったロージェノムの指示に従って気絶の間に靴を奪われた足が段差の上に乗った。
頼りない足音と共に螺旋王の前に立ったシモンは貧相で見窄らしいただの少年でしかない。無力感に苛まれ、それでも彼は目の前の敵を睨み付けた。向けられた視線にいささかの感慨も抱かずに命じることに慣れすぎた口が開く。
「大した芸は望めまいが、従順さでも示してもらおうか」
言いながら王者は無造作に自分の下半身を覆う衣服の前を開いた。王座の上と思えばこれほど滑稽な格好もなかろうというのに主人は当たり前の顔で己の股間を晒す。知らず視線を引き寄せられ、目に入った性器にシモンの頬が引きつった。とはいえそれで彼の反応を終わらせて貰えるはずもない。
「舐めろ」
「…は?」
重苦しい空気の中でも間抜け面を見せる程に指示はシモンの理解の範疇を越えていた。が、冗談では終わらない。視線の先で存在を主張するものにそうしろと言われたのだと数秒考えやっと理解した。
何故、と問うことは出来ない。理由の如何を問わずにやらねばならないことははっきりしていた。とにかく跪くしかないのだと思考も感情も置き去りにして体が答えを導き出す。訳も解らず震える身体がさっきと同じように狭い床へと膝をついた。
「…っ」
無言の男をちらりと見上げ、すぐにシモンは後悔する。虫けらを見る眼だった。きっとその瞳は仲間達のことも同じように映すだろう。命令に従うしか道はないのだ。
戦慄く唇を老いを忘れた壮年の性器へと向けようとして、またも背中を蹴られる。思わず振り返った先に派手な飾り羽根が見えた。
「いつもの口上はどうした?裸猿。
 礼儀の一つも示せぬか」
滑稽な姿を自覚しない孔雀がバカにした眼と声を注いでくる。噛み砕こうかと言うほど歯軋りしても敵の絶対的な優位に代わりはなかった。よもや自分の感情と仲間の命を天秤にかけることなど出来ず、シモンは打ち拉がれた声で頼み込む。
「…っさせ、て……くれ、…」
「我らが王を敬うことすら出来ぬということか?」
必死の言葉は間を置かずに一蹴された。目元を歪めたシモンは言葉を失いかけ、それでもどうにか声を取り戻す。喉の奥から絞り出したそれは悲鳴に酷似していた。
「させてくだ、さい!」
叫び頼み込んだシモンを気分良さそうに眺めてシトマンドラは更に問う。
「何を?」
それが揶揄でしかないことを判っていても望まれるままに振る舞うしかなかった。
「なっ…舐め…っ」
涙を耐える瞳が痛み、振り切るために強く瞼を閉じたシモンは大音声を出すことで無理に自分に勢いを持たせる。
「しゃぶらせろっつってんだよ!」
意味を持たないほど小さな反抗くらいしか今彼を支えられるものはなかった。
一気に吐き捨て白い布の膝に手を載せる。そうすれば嫌でも男のものが真正面から目に入った。考えたくなくても勝手に頭が情報を羅列する。螺旋王の性器は状況の威圧が相まり太さも長さもやけに大きく見えたが、人間のものの形をしていた。
自分についている生殖器と同じとは言えないが、村で共に垢を落としていた住人達や温泉で見たカミナのものとはさほどの差異はない。
…醜いまでに血管が透けて見え口で食めるか怪しい程に傘が張っている姿をさほどの範疇に含めるかは異論もあろうが、シモンにとってどちらであろうが大した問題にはならなかった。
現実を否定するように目を閉じ思い切って唇を近づける。視覚を拒絶した分だけ鋭く鼻を吐いた臭いに吐き気がしても、頬に触れた人毛が不快でも舌を伸ばさなくてはならなかった。ちろりと覗いた小さな舌の先端がおうとつのついた幹に触れる。舌に広がる幽かな塩気と強くなる生臭さに引っ込みかけた舌が震えた。
それでもこれが仕事なのだと自分に言い聞かせてシモンは耐える。この行為が意味するところぐらいは知っていた。そしてそれは決してシモンにとっても無関係ではない。…ロシウの故郷を例にするまでもなく、地下に住まう人間達にとって人口調整は常に命題の一つだった。生殖に対する欲求を押さえつける方法として、男の相手を子供が行う場合もままある。一人で処理することや垢のついでに獣に舐め取らせるやり方だけではどうしても満足出来ない場合があることを人間達は経験から知っていたからだ。とはいえ早々穴掘りの才能を開花させたシモンがそれに狩り出されたことは殆ど無い。狭い穴の中に身を潜めていることは最大の防御手段でもあった。
しかし今居る場所にはシモンが身を隠すための場所はない。それどころか睥睨してくる敵のみならず仲間達の眼すら台座上のシモンを眺めている筈だ。非難、が背中に突き刺さっているのは解る。とは言え彼等の理解が及ばないとしてもそれでもこうしなければ背負った人々は殺されるのだ。螺旋王の前では本当に、人間の命が価値を持たない。
「手を抜くつもりか?」
つるりと幹を舐めあげて一息ついたシモンの髪がシトマンドラの手に掴まれた。そのまま頭が持ち上げられ薄く開いた口を螺旋王の性器の先端に押しつけられる。
「っ…」
咄嗟に歯をとじ合わせて侵入を防いだものの、それが意味を持たないことを理解してシモンは嫌々口を開いた。頭を操る獣人の手が命じるように嫌がる手で肉塊を支える。感触を逐一確かめるのも嫌で食事にがっつく時のように性器を迎え入れた。
一番太い部分までを口腔に収めて露出した粘膜に舌を這わせる。鈴口に触った部分から苦みが染みこんできて頭痛を覚えた。普段友人達には幅広いにも程があると評価される味覚も今は助けにならない。十指で支える幹にまとわりついた血管の脈動が薄気味悪かった。極力指先だけを押しつけるようにして触れる面積を減らす。血流から逃れようと指は勝手に肉の表面を移動して結果的に擦る形になった。
大きさのあまり口端から涎が零れる程の威容を、噛み切ってしまえればどんなに楽かと妄想しながら亀頭の終りを歯で扱く。この持ち主は両親の仇であり、兄貴の仇であり、そしてニアや仲間達を傷つけた男だ。いくら規格外の力を持つとは言っても急所を食い千切られてしまえば流石に生きては居ないだろう。
人質さえ、無ければ。
僅かに口を離し呼吸を整える隙に灰色の瞳が螺旋王を睨み付けた。眼の奥で瞬く感情を察したらしいロージェノムはつまらなそうに問いかける。
「どうする?奴等を始末してやっても構わんぞ」
思い通りに振る舞う為の容易に過ぎる解決法を示唆されシモンの肩が震えた。そんなことを許す訳にはいかない。シモンは大グレン団のリーダーで、そして大グレン団こそは彼の兄貴分が生きてきた印のようなものだ。
歪めた顔を再度奉仕のため俯けようとして、シモンは後ろから顎を支えられた。何をと問いかける前に次の指示が下る。
「乗れ」
顎をしゃくって命じられ、茫然としている間に後ろから両脇に腕を通され立たされた。自分がしたことにより天を衝いた性器を見、次にすべきことを嫌でも理解する。女の代わりに使われる子供が最後に何をするのかも知っていた。入れるのだ、あれを。自分の中に。
…はいるのか?
口に飲み込むことすら難しかったものを到底排泄器官に収められるとは思えず頭が真っ白になった。その間にズボンを引き摺り下ろされ下着も取り払われる。下生えすら揃わないシモンの股間が冷めた空気にさらされ、無意識に身震いした。
肌を隠すものは上着と脚絆くらいなものになったシモンの白い腹を眺め下ろした螺旋王が平板な声で感想とも言えない言葉を漏らす。
「ふん、面白くもない体よ」
好き勝手に言った男の手がシモンの頼りない腕ごと体を引き摺った。親にされるように膝の上に抱き上げられたことに気付いて細い脚が暴れる。しかし王でありながらやけに鍛え上げられた体を持つ男にとっては大した反撃にもならない。向き合う形で座りこむ腰に腕を回され、尻房を手で掴んで持ち上げられた。割り開かれた股間に熱を持って膨張した螺旋王のものが触れる。
幾らなんでも無理だと声にならない悲鳴を上げかけたシモンを無視して他人の肉の先端が膂力にあかせてねじ込まれた。
「―――――!!」
甲高い音、としか言いようのないものが細い喉からこぼれ落ちる。衝撃のあまり痛みとも感じられない感覚に痩せた背中が突っ張った。抱え込まれていなければ膝から落ちただろうと言うほど仰け反る体に焼けぼっくいのような性器が仕舞い込まれる。
耐えられる、と思っていた。痛みならばどんなものでも踏み越えられるはずだ、と。どんな苦痛も兄貴に死をもたらしたそれに比べれば何ほどのものでもない、はず、だった。
だが神経が読み取る情報は脳が砕けるようなそれで痛みの範疇すら越えている。一番近いのはおそらく熱さだった。留めておける大きさを逸脱して存在を主張するものに柔らかな粘膜が限界を訴える。それを無視して奥へと這いずってくるものに抉られて腸が破れるのではないかという恐怖がこみ上げてきた。侵入者を追い払おうと括約筋が締まり、余計に蠕動する内部が狭くなる。繊細な器官は押し込まれた肉の形を脳に送り込んできたもののそれを処理するだけの余裕はシモンにはなかった。
「ぃ、あっ…ぅあああっ!!」
体を満たす痛みが捌け口を求めて喉を振わす。痛みの波が高い位置で固定され、認識の枠を越えた。なにがなんだか解らないまま緊張した体が上下に揺さぶられる。開きっぱなしになった口の端から唾液が落ちた。
白痴じみた顔を見せるシモンを冷めた顔で見下ろし、螺旋王は何の前兆も無しに小さな体の中へ己の精液を流し込む。更に奥を熱で犯されたシモンが声を上げ、不安定な体は後ろへと倒れ込んだ。既に興味を失ったかのように逞しい腕は細腰から外れている。ずるりと抜け出ていくものにまた粘膜を痛めつけられながら幼いグレン団の首領は螺旋王の足下に崩れ落ちた。引きつけを起こしたように震える身体が落とす息は浅い。
涙で満たされた瞳が視界を取り戻すより早く、シモンは螺旋の台から蹴り落とされた。糸の切れた操り人形のように段差を転がり落ち床の上に放り出される。いつの間にか引かれていた布と共に幾らか滑ったまま彼は暫く動けなかった。痛みの余韻と倦怠感がなかなか頭を回転させない。
彼がようやっと考えることを取り戻したのはきゅるりと自分の腹が音を立てた所為だった。
「…っ!?」
あまりの苦痛に感覚のぼやけた腹の底で、押し込められていた白濁が存在を主張する。それが何を意味するのか理解し立ち上がろうとして出来なかった。せいぜいうつ伏せた体を膝と肘で支えて四つん這いになるのが関の山の体力しかない。
そうして、身体の下に広げられた布がなんかのか気付いた少年の顔色が変わった。
手をついた下の紅と藍、二色で染め上げられた図案は見紛うはずもない。
ダイグレンに背負わせていた、大グレン団の団旗だ。
炎と髑髏とサングラス。世界の誰よりも慕った男が遺したもの、その象徴に眼を見開いている間にもう一度腹が鳴った。
「っ…!」
詰めた息と共に王座へ腰を落ち着けた男を振り仰ぐ。なにもかもに飽いたはずの男が、そこで醜悪な笑顔を浮かべていた。シモンが今何に煩悶しているのかを理解している。しているからこそ楽しんでいる。
螺旋王から視線を離し、シモンは腹の切迫感を押さえ込む為赤く腫れた入り口に力を篭めた。熱を持った門は自分自身が触れ合うことも責め苦になるとでも言うように閉じることを嫌がる。くすぐったさにも似た疼痛にともすれば開きそうになる場所で注ぎ込まれたものをせき止めるために、自身の唾液と螺旋王の先走りで汚れた唇を噛みしめた。
だが散々暴虐を与えられた腰回りの筋肉は思い通りに動いてくれない。
「ちっ…き、ショォ…!」
浅くなる息で悪態を絞り、シモンは仕方なく肘で体を支えることを諦めた。痺れもたつく腕を叱咤して背中側から自分の股間に手を回す。丸まっちい指先が充血した尻の入口にさしかかって腰が震えた。その動きで奥に留めていたものがこぼれ落ちそうになり余裕が無くなる。だらしない場所に栓をするため、シモンは揃えた人差し指と中指を自分の内側に突き込んだ。
漏れそうになる喘ぎは上着の襟を噛んで耐える。ぎゅっと窄まった入口は先程の凶器とは違い細くおうとつも無い指を苦もなく飲み込んだ。怯えを示した指が中で暴れ、柔らかな壁を引っ掻く。意図を越えた自分の身体の動きに刺激されシモンの顔が真っ赤に染まった。そもそもが排出するための部位である場所が蠕動し溜まった精液を吐き出そうとする。
だが団旗を汚すことは尊敬する兄貴分を汚すことに等しい。呻き、瞳に涙を溜めて我慢を続ける少年を、高い場所から支配者が嘲笑った。
「諦めを知れば楽になれるものを」
床に額を擦りつけるシモンが気付かない間に、王に指示を受けた獣人が彼に近づく。それは最初ここに引きずり出された時に大グレン団の首魁を拘束していた者達だったが、気付く余裕などシモンにはこれっぽっちも残っていなかった。気配を察することすら出来ずにひたすら耐える彼の腕が掴まれる。
「やめっ…!」
何をされるのか察した途端腕が引っ張られた。粘膜に爪を立てて抑えようとしても空しく指が引きずり出される。抜かれる瞬間、指に纏わり付く精液を拭うように粘膜がすぼまった。充血しきった門が痛めつけられ、内臓が引っ張り出されるような感覚を覚えても締め付けなくては精液が零れ落ちてしまう。
「うぁあ…」
力のない悲鳴と共に栓が無くなった。下腹に力を込めて耐えようとするが、逆にそれは押し出そうとする力も増してしまう。暴行によって倦怠感に満たされた筋肉を区別して操ることは難しかった。ぎゅる、と追い詰めるように内臓が音を立てる。なりふりを、構っている、時間は無かった。
「いっ…れ、ろよ…!」
煩悶に真っ赤に染まった顔を上向け、左右で腕を押える獣人を睨む。しかし赤く染まった頬と潤んだ眼では精一杯の去勢も鋭さも鼻で笑い飛ばされるものに過ぎなかった。何様のつもりだと下に滑り込んだ足で腹を押される。内側に留めた他人の体液が逆流し、出口を求めたそれに肛門を叩かれた。今にもこぼれ落ちそうなそれにシモンは切羽詰まって懇願する。
「入れっ、て…いれてくださいっ!」
舌足らずな、泣き叫ぶのに近い声が訴えた。だが獣人たちはそれで許したりはしない。腹にますます強く足の甲を押しつけられて藍色の服の背中が大きく震えた。下卑た笑いを浮かべたもう一人の獣人が剥き出しになっている白い尻を叩く。
「ひゃっ…!」
かふりと塊のような息を吐いてシモンは眼を見開いた。もう一度丸みを平手打ちされて耐えきれなくなった入口が盛り上がる。
「だめっ!だめなんだぁっ!!」
頭を振り乱して狼狽するシモン自身がこれ以上は耐えきれないことを一番良く理解していた。隙間から白濁液が粘り落ち、次いでその滴りが太さを増す。奥から狭まった腸が精液を押し出した。
「…ぅう…」
空気混じりの破裂音と共にどぷりとはち切れ、粘液が赤い意匠の上に散っていく。恐れていた事態にシモンの堤防も崩れた。ぼろぼろと大粒の涙が頬を濡らす。
「あ、にきっ…」
呼ぶ自分の声が本人を打ちのめした。これ以上はと引き締めようとした尻をまた獣人の手が撲つ。更に二度三度とその手は既に力を失いだらしなく脱力した体を揺さぶった。螺旋王の精液を全て絞り出させるように叩きつける責め苦は、同時にシモンの心も削り落とす。
されているのは幼い子供にする仕置きと同じだ。その程度のことにすら反抗できない。
俺は、殺す価値すらない子供でしかなかった。
打ち拉がれる心の内を読んだかのように螺旋王は口を開く。
「所詮お前はその程度ということだ。
 兄の仇など取れん」
力無く倒れ、体を丸めて泣く子供にとどめの言葉が刺し下ろされた。
「うっ…ふぐ…」
頑是無く嗚咽を漏らす度に端から闘志が崩れていく。弱い心を押し隠す為に張りつめていた気力が死んでいく。眼の奥で赤い布が遠ざかっていくのが見えた。無力感に苛まれるままシモンは慕う男を呼ぶ。もう死んだ、何処にも居ない男を呼ぶ。
「あ…あにきっ………カミ…ナぁ」
名を呼ぶ度に負ったはずのものが抱いていたはずのものが流れ出していった。留め置けぬままに兄譲りの虚勢も自尊心も打ち砕かれ、後に残り剥き出しにされるのは未だ子供のままのシモン自身だった。
俺のピンチを助けんのは、いつもお前だ。
かつて与えられた言葉の残滓が耳の奥から消えていく。そしてもう地震から、恐怖からシモンを庇ってくれる腕はどこにもなかった。

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