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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.04.28,Sun
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2007.12.13,Thu

めのこコンビんところのギミー話。
多分アンスパ騒ぎの半年~3カ月くらい前?







ロシウが昔シモンさんによく言っていた言葉の意味が今なら解る。
シモンさん、無防備すぎます。
「…シモンさん、ちゃんと服着てよ」
どんな状況かっていうと、俺が風呂から上がって何か飲み物でもと踏み込んだ居間(その先に台所があるんだ)、でんと置かれたソファの上にシモンさんが寝っ転がっているって、ただそれだけではある。いくらシモンさんがあんまり家に帰ってこられないって言ってもここはやっぱりシモンさんの家な訳で、彼女とロシウとニアさんが連名の家主なんだから彼女がどこに居たって文句を言う筋合いじゃない。
だけどもだらけた姿勢で両端の肘置きに頭と組んだ足を乗せたシモンさんの格好は、一応思春期に突入している俺にとって看過しきれないものだった。
「着てるじゃないか。変なこと言うなよ」
逆になっている顔が顰められる。でも本気で文句を言うって雰囲気じゃなく、同居人らしい気安さが表に出ていた。そんな顔をしているとシモンさんはロシウと同い年だなんてとても思えない。とはいえ童顔の彼女も身体はしっかり大人な訳で、しかも背が低い割りにばっちり成熟しているのであって、それがはっきりみせつけられるというのは青少年としては困るんだ。
「服じゃないでしょ、それ。下着でしょ」
こっちこそ思いっきり顔を顰めてやるとシモンさんは心外だとでも言いたげに返事を投げてくる。
「何言ってんだ、試作品とは言え超高性能な生命維持装置内蔵スーツだぞ」
だからボディースーツなんでしょ。それ。身体の線とか丸出しでしょ。それ。
エナメルっぽい薄い生地は細い身体を覆うだけで形を隠したりはしない。ヘソのくぼみまで見て取れるし、まあもし望むなら胸の先だって丸出し同然だ。背骨に肋、あとは腹筋を模して武骨な金属パーツがついてはいるけど。
まあ百歩譲ってそれを服だと認めますよ。でもね、表面積なんて脚の付け根までしかないじゃんか。真っ白い脚はほっぽり出しですかシモンさん。細っこい腕も丸出しですねシモンさん。下手に首筋は覆われているってのがなんとも言えないよシモンさん。
昔っから胸のおっきな人だから、きっとスーツで抑えてなければもっとぽよんぽよんなんだろうなあと思ってしまってちょっと自己嫌悪だ。
シモンさんもロシウもそれからニアさんも俺とは血が繋がってないけど大事な姉さん達な訳で、つまるところ彼女らに反応するというのはダリーに反応するのと同じだろう。お年頃とはいえ近親姦は避けたいです。
「ていうか家の中でそんなスーツ試さないでよ。落ち着かない」
直視できなくなりつつもぶつくさ言ったらシモンさんは事も無げに返してきた。
「仕方ないだろ。医者が五月蝿いんだよ最近さ」
検診受けろ検診受けろってそんな暇あるわけないのにな。
いや、無理してでも受けてください。仕事なんかカミナさん辺りにぶん投げてちゃんと身体を大事にしてよシモンさん。医者に言われるってそれものすごくグレーゾーンだよ。何気ない言葉で人の肝を冷却しないで欲しい。
だいたい俺と同い年くらいの頃からもうずっとこの人とロシウは働き過ぎだ。
政府がまだ大グレン団と名乗っていた頃最年少組だったというのに今では二人がいないと統治機構がまともに回らない状態になっている。
戦っていた頃だって一番強いガンメン乗りで毎日毎日出撃してて、敵を山ほど倒してたけど同じくらい怪我も多かったのを思い出す。あの頃は日常の一部だったけど、今思えば俺とダリーが連日のように見舞いに行ってたってことは負傷頻度がそれだけ高かったってことだろう。
まだチビの頃風呂に入れて貰った時も、真っ白な肌の上に紅色の傷痕が沢山あった。勲章だなんて笑ってたけどあの全てがもともとは血を流してたんだ。
…昔を思い出したついでに、かつてはしょっちゅう見ていた裸を思い出してたりなんかしないぞ。シモンむねでっけーなとか言って触ってたことも忘れたからな。怖い夢見ただのなんだの言っては抱きついたり、寝しょんべん垂れたのを慰められたりしたことも忘却の彼方だ。彼方だってーの。
「…ギミー、熱でもあるのか?」
一人で眼を白黒させてた所為で、聞こえた声の近さに口から心臓を吐くかと思った。気付けばシモンさんはソファから離れて俺のすぐ傍に立っている。昔は見上げていたのに今となってはシモンさんの方が小さかった。
そのくせ腕を伸ばして白い指を俺の額に触れさせる動作はどう考えても俺のことを子供扱いしている。でも俺はそれに落ち着くんだ。ロシウやシモンさんのことを守りたくて強くなりたくて勝手にグラパール隊に入るって決めた癖に、この人が俺のお姉さんでいてくれるのが嬉しくてそして安心する。
そんな情けない弟分の気持ちがどうなってるのか知らないシモンさんは、だから俺の頬が赤くなっていた理由も解らないまま気遣わしげに俺を見上げた。熱は無いみたいだけどと一応の安堵を含ませつつも、俺の肩を叩いて早く休めと促してくる。
「お前もダリーも頑張りやさんだからな。すごく努力するけど、その分無理もするだろ。
 そういうところは俺としてはやっぱり心配だな、うん」
同じことをそっくりそのまま言い返したかった。でも、出来ない。だってそうじゃないか、シモンさんが無理しなくて良いように、ロシウが休めるように、俺が何かを出来るならともかく今はまだ俺は何も出来ないヒヨッコなんだ。どんなに教練で誉められてエースパイロットだなんだと呼ばれていても、まだまだ全然二人には敵わない。
立ちつくす俺の背中を押してシモンさんは楽しそうに言った。戯けた動きで着込んだスーツを示してみせる。
「これが完成したらパイロットスーツも改良できるんだぞ」
そんなことを嬉しそうに言う彼女は肩も腕も脚も細くてどう見たって女の人で、多分体力だけなら俺の方がもう上なのに、それでも自分の身体のためじゃなく俺たちのために試作スーツを着ているんだ。
全部全部背負おうとするこの人に抱きついてわんわん子供の頃のように泣きたいような気分になって、でも俺はそれを堪える。
もう俺も子供じゃないよ、シモンさん。
それをシモンさんが認めてくれる日がいつになるのか、皆目見当もつかないけれど。
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