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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.04.26,Fri
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2007.09.29,Sat

対等な友情というものは燃え要素なのでそれをシモンとロシウにえらい期待しててですね。
そういう希望というか欲望を詰め込みつつ、5話終了当時にキャラの性格とか考えとかを多少なりともまとめようと書いた物。
二次創作は曲がりなりにもキャラを掴めてないと書けないもんだと思うんですが、その掴み方が読んで下さる方と重なっていないと矛盾が目立つというか納得出来ないというか
まあ兎に角難しいもんですね。







外の世界は酷く広くて、身を隠す場所も殆ど無い。途方もない開放感は逆に常に何処からか自分を見られているようで威圧感があった。
顔神…否、ガンメンに括り付けられた居住区の屋根の上(これも元は顔神だと言う!)で空とそこに瞬く星とやらを眺めてロシウは息を吐く。聞いたことのないもの、見たことのないもの、知らないものばかりだ。夜だと告げられたこの時間帯ですら光の粉がまき散らされているかのように明るく、ロシウの常識は悉く覆され続けている。頭も体も酷く疲れているのに興奮冷めやらぬのか上手く眠れなかった。
かたりと金属がぶつかる音がして、物思いを断ち切られる。ロシウは自然勢いを付けて振り向いてしまった。大きな動作に驚いたのか、屋根に登ってきた少年がどんぐり眼を丸くする。
「ごめん、邪魔するつもりじゃなかったんだけど…」
遠慮がちな言葉になんと言えば良いか迷っている間に、ロシウとそう年の変わらない少年は覚束ない笑顔を浮かべた。どう、この人々と付き合っていけばいいのか。ロシウはまだ判らない。だが気を使われたのだと了解して申し訳なくなっているロシウに、彼はやや早口で言い添えた。
「寝なくて平気?疲れてるんじゃない?」
「いえ、そろそろ寝ようとは思ってたんですが」
足音がロシウの隣で止まる。僅かな、それでも呟きならば聞き逃すかも知れない距離を置いてシモンが腰を降ろした。彼もまた空を振り仰ぎ、それからロシウに顔を向ける。
「…地上って、なんか色々ありすぎてよくわかんないよね」
苦笑気味の言葉に親近感を感じてから、ロシウは自分が存外道連れ達に対して壁を作っていたことに思い至った。同じ人間の彼等ですら、全く知らない新しいものなのだ。お守りのように離せなくなってしまった聖典へ無意識に指が触れる。故郷の教義は地上に相応しくないものなのだと判っていても、ロシウにとっては生まれた時から彼を守り支えたものだった。
「…字、読めるの?」
ロシウの仕草に視線を誘われたシモンが小首を傾げる。
「あ、いえ…教えは頭に入っているのですが」
地下世界は口伝が主で、文字という技術はほぼ失われていた。そしてそれをどうにか利用して、あの小さな村は守られている。狭い狭い故郷と、そこで苦悩を背負い込む司祭の姿がロシウの脳裏に浮かんだ。軽く唇を噛みしめ、彼は誤魔化すようにシモンに訊ねる。
「シモンさんは字が読めるのですか?」
水を向けられたシモンは、瞬間びっくりしてからすぐに恥ずかしそうに目を眇めた。
「あ、いや、俺は…全然駄目。
 ロンさんは読めるけどね」
ロンさんが文字を説明する道具を持ってるけど、その説明も文字だから借りても解らないんだよね。首を振って、それからシモンはおかしそうに笑った。つられてロシウも強ばっていた頬を緩める。
「それと、俺に"さん"なんかつけなくて良いよ。その代わり、俺も呼び捨てにしちゃうだろうけど」
いいかな、と探る目を向けられてロシウは素直に頷いた。お互いに距離を測りかねているのだと知れて僅かに気が楽になる。少なくとも、シモンは他の人々よりも付き合いやすいように感じられた。
冷えた風が吹き抜け、その清冽さにロシウは目を細める。ここは目に見えないものですら住み慣れた場所とは異なっていた。
「ごめんね」
揃って遠くを眺めていた沈黙が唐突に破られる。何を言われているのか理解しきれなかったロシウがシモンに目を向ける間に、ややぼそぼそと言葉が続いた。
「俺、ずっと謝らなきゃ駄目だなって思ってたんだけど、なんか機会掴めなくて」
腕に抱き込まれた膝に顎を触れさせ、シモンが眉を寄せる。
「謝るって」
意図が分からずに先を待つしかないロシウに困ったような声が届いた。
「兄貴のこと、さ」
溜息を吐いてシモンは笑う。ロシウの顔に自然苦みが浮かんでいるのを見て取って、それは苦笑に近くなった。
「すごく、乱暴に見えたかもしれないなって。でも、兄貴あれ悪気とか全然ないんだよ。
 そういう人なんだ」
意志の強さは我を通す我が儘にも繋がる。表裏一体とはいえ己を律する心は必要だろうとロシウの心は断じたが、彼はシモンに対して芽生えつつある友誼によってそれを胸の内に留めた。
「兄貴はね、駄目だって思ったことは絶対駄目なんだ。納得出来ないことは許さないんだ。
 放っておくことが、出来ない人なんだよ」
欠点。それとも美点だろうか。あげつらいながらも声音は優しげで、慕わしげだった。言葉を挟めないでいるロシウに、一呼吸置いてからシモンは続ける。膝を留める手に力が籠った。
「俺の親、落盤で死んでさ」
ロシウが目を見開くのを敢えて無視して言葉が続く。
「一人ぼっちになって、なにがなんだかわかんなくなって、毎日毎日地震に怯え暮らしてた俺のとこにね。兄貴、毎日来て言うんだよ。そんなに怖ェなら俺と一緒に来いよって」
一度沈んだ声が嬉しそうに跳ね上がった。呆れたような空気を纏い、だがシモンは笑う。
「地上には天井はねえ!落盤もねえ!だからそんな湿気ったツラしてねぇで俺と一緒に地上に来いよ!
 …まだ子供で、仕事もまともにできないような年だったのに、無茶言うよ」
くつくつ笑いを交えていた言が不意に真剣さを帯びた。首を巡らせたシモンの、灰色の瞳が真っ直ぐにロシウの瞳を射抜く。
「無茶言うけど、兄貴は嘘は吐かない。兄貴は俺を連れて本当に地上に来た」
真摯な台詞に応じるだけのものが自分の中にみつからなくてロシウは視線を外した。
「強い…人、ですね。カミナさんは」
やっと言えたのはそれくらいで、生真面目な少年は顔を顰める。シモンの語るカミナという青年は、確かに素晴らしい資質を持っていた。だが、真っ直ぐすぎてなにかが間違っているような気もする。シモンのように全てを受け入れることが出来そうになかった。
口に出さずともシモンはロシウが抱え込んだ反論を汲み取ったらしい。金の粉を葺いたような夜空を見上げ、カミナの弟分は溜息混じりに口を開いた。
「兄貴は…自分が特別だって、解ってないんだ」
その気になれば必ずやる。無理を通して通りを蹴っ飛ばす。本当は、そんな生き方は難しいものだ。例えばロシウの村ではどんなに頑張っても今以上の食料を得ることは出来ない。地上に出て今より豊かになろうとしても、おそらく獣人に襲われて為す術無く滅んでしまうだろう。ヨーコの村のように武器がある訳でもないのだ。顔神と呼ばれたガンメンもリーロンのような技術者が居なければそのうち使い物にならなくなる。
「自分が出来るんだから、皆出来るんだって。きっとそう思ってるんだよ」
意地悪なんじゃない。いつの間にかシモンの口調には熱が混じっていた。それがおそらく、自分の抱く悪感情に反応してのものだろうと理解してロシウは申し訳なくなる。カミナの強引さは確かに彼にとって認めがたいものではあったが、同時に眩しくあるのも本当だ。もしかしたらこれは彼の強さに嫉妬しているんだろうかと目から鱗が落ちる。
シモンはロシウが開眼したことに気づかずに声に力を込めた。
「すごく優しいんだよ。兄貴は、すごく優しい」
畳みかけるような言葉はやけに必死で、だというのに反比例するようにシモンは俯いていく。時折言葉が見つからず、それでも言わなければという使命感に突き動かされてシモンは科白を重ねた。
「兄貴の親父さん一人で地上に出て死んじゃってさ。兄貴一緒に行かなかったこと後悔してたけど…でもやっぱり子供が生きていける環境じゃないって、解ってもいるんだ。
 だからギミーとダリーを連れて行くの嫌がった」
風習を嫌った所為だけではなく、現実も知っているんだと。ロシウの印象を覆す為にシモンは必死になっていた。シモンのカミナに対する信頼が透けて見えて、それが微笑ましく思えたロシウの頬が緩む。しょうのない所のある人ではあるけれど、ここまで慕われているのならば確かにシモンの語るとおり美点も多い人だ。
「言葉足らなくて解らないかも知れない。でも兄貴にも兄貴の考えがあるから。
 そうだってこと、良ければ、ロシウにも解ってて欲しくて、俺」
顔を上げないまま続けたシモンには軟化したロシウの顔は見えない。意外と周囲が見えなくなるところはカミナと似ているのかもしれなかった。仕方ないなと、今度はロシウが眉を寄せて苦笑する。
「解りました」
受け入れるには時間が掛かることだ。カミナという人も、地上の世界も。しかし。
「すぐに慣れることは難しいですけど…僕も、カミナさんのことが嫌いな訳じゃないんです」
地上も空も美しい場所で、共に行く人々もきっと優しい人達なのだ。それだけあって、それ以上この道行きに何を望もう。
「じゃあっ!」
がばっと顔をあげたシモンに、ロシウは頷いて見せた。それから立ち上がって伸びをする。
「そろそろ寝ましょうか。明日もありますし」
やっぱり疲れました。素直に言ったロシウに、俺もだよとシモンが応じる。彼等は連れだって寝床へと足を向けた。
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