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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.11.23,Sat
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2007.12.13,Thu
めのこコンビんところのダリー話、テッペリン陥落から6年後くらい。






「…決めたんだな」
シモンさんのそんな厳しい視線なんて、私はその時初めて向けられた。
その隣で今にも泣きそうな顔をしているロシウも、血の気の引いたロシウの手を握っているニアさんの眦を吊り上げた顔も、初めて見るものだった。
でもごめんなさい、姉さん達。私と、ギミーは決めました。
揃って頷いた私達を見てシモンさんが息を吐く。びくりとロシウの肩が揺れた。少し俯いて伏せった灰色の瞳が私達から外れて、うなだれたロシウに向く。
「…だってさ、ロシウ」
ロシウの綺麗な黒い髪ががっくり折れた首に従って滑り落ちた。書類仕事に慣れた指、私達の世話を焼いてくれる手が目元を隠す。それでもはい、と頷いたロシウの肩をニアさんが柔らかく撫でた。でも華に飾られた眼は滅多にない激しさで私達を見ている。
「おっ俺達も!」
耐え切れなかったのかギミーが大きな声で訴えた。姉さん達の眼差しが集まる。ギミーはわたわた両手を落ち着かなく動かした。
「皆のこと守りたい!そ、れからロシウ達の役に立ちたい!あとっ、だって」
言い出した、そのくせ言葉がまとまらなくて、すぐしどろもどろになる。けどあくまで三対の目はギミーを真剣に見ていて、ギミーだって真剣に叫んだ。
「俺達も大グレン団だ!」
ぎゅっと拳を握った片割れの宣言に私も組んだ指に力が入る。弾かれたように顔を上げたロシウの黒い目が縮まり、それから何か言いたそうに唇が揺れた。けれども何も言わないまま私達の姉さんは瞼を伏せて息を吐く。
対照的にシモンさんは懐かしいものを映す眼をして私達を見、少しだけ口許を緩めてから肩を竦めた。眉間に皺をよせたままのニアさんがロシウを見て、シモンさんを見て、それから私達を見て、ぷぅっと頬を膨らませる。厳しさの抜けた表情に私が瞬いたのと同時にシモンさんが背もたれに身体を預けた。
「…自分で戦うって決めた奴は、止めないことにしてる。俺はね」
俺は、と限定したところで灰色の双眸が隣に座るロシウに向く。組んだ長い指が自分の手の甲を引っ掻いて、多分言いたいことを抑えたんだろうロシウはちらっと私達を見遣ってシモンさんに頷いた。それを受けてシモンさんが苦笑いを浮かべる。
「俺は流されて戦い始めた人間だから、覚悟のある奴にはどうこう言えない。言う権利は無い」
そうと告げている間にロシウがゆっくり席を立った。慌てたギミーが引き留めようとして、いつもは凛とした声が喉を詰まらせたのに失敗する。
夕食の支度をしてきますと短く言って部屋を出て行こうとするロシウに、手伝いますとニアさんが続いた。私もギミーも言い訳しようと腰を浮かせかける。でも、扉を出るところで振り向いたロシウはぎこちない笑顔を私達に向けて、合格おめでとう、頑張りましたねなんて言うから何も言えなくなる。黒髪と金髪を見送っていたシモンさんがまた首をこちらにむけて、疲れたと言わんばかりに姿勢を緩めた。
つられてギミーも大袈裟なくらい身体から力を抜く。バカね、って私が思った直後案の定シモンさんがまた目元をきつくした。
「止めはしないけどな」
やや低められた声が何度か聞いた、私達の悪戯を窘める時のもので思わず身を竦める。ギミーに至っては座ったまま椅子から跳ねる有様だった。
「…でも、二人のお姉ちゃんとしては、叱りたいとこはある」
ココお爺さんが淹れてくれたお茶を手に取り、グレン団のエースでも新政府の補佐官でもない私達のお姉さんは琥珀色の水面に視線を落とす。その横顔がなんとはなしに寂しそうだと解って胸が痛んだ。でもどうしてそんな顔するのかな、って疑問を感じた心にシモンさんが質問を投げかける。
「ロシウがなんで泣いたのか、二人とも解ってるか?」
溜息混じりの声にギミーと顔を見合わせて、それから私達の声が重なった。
「…二人で勝手に決めたから?」
「危ない仕事に志願したから」
少しだけずれた、でもきっと似たようなことを考えていて選ぶ部分だけ違ったんだろう台詞にシモンさんがお茶を飲み込む音が続く。カップの縁を指で撫で、シモンさんは頷きか否定か見分けづらい仕草をした。
「正解。でも外れ」
ことり、カップを手放したシモンさんが頬杖をつく。じゃあなに、と言わないまま問いかけた私達に灰色が難色を示した。
「二人が一言も相談してくれなかったからだよ」
ギミーが呻き声を上げる。私は項垂れた。
だって止められると思ったんだもの、なんて子供の理屈だって解ってる。どこかで驚かせたいって考えがあったのも自分で知っていた。グラパール隊に入ればテロリストとの交戦も有り得る、無事ではいられないかもしれないということは理解している。それが心配をかけるだろうということも。
でもね、でも、そうだって解っていても私達は戦いたかったんです。
「ロシウはずっと二人と一緒だった。アダイ村からテッペリンに来るまで、カミナシティが出来上がってからもそうだ。違うか?」
力を無くした私達にシモンさんが言い聞かせる。無言で了解を示した私とギミーにシモンさんも落ち込んだ声を零した。
「ここ二年くらいはロシウも俺もちゃんと帰って来られなかったよな。ニアだって出ずっぱりだった。
 二人の面倒も見ずにココ爺に任せきりで…ギミーとダリーに悪いことしてるとは思ってたよ」
そんなの、ロシウやシモンさんやニアさんのせいじゃ全然無くて、寂しいって思ったことはあったけどだからってそれで拗ねたから話さなかったんじゃないですよ!
って叫びそうになったけど、ギミーもそんな風だったけど、シモンさんに手で制された。まずは言わせろという態度に渋々私達は主張を留める。
シモンさんは自分の藍色の髪を弄り、言葉を探してから諦めたように肩を落とした。
「それでも俺たちは、我が儘でも、失格でも、二人の親代わりでいたかったんだ。
 だって」
俺たちには親がいないからね。
最後に付け足された言葉に私達は息を呑む。両親はいないんだって私達は知ってたけど、それで悲しいとか寂しいとか感じることはあんまりなかった。いたらどうだっただろうと想像したことはあるけれど、いないことに不安や不満があったことはない。ある意味で私とギミーには親が居ないというのは当たり前のことで、でもそれよりも重要なのは両親がいなくたって私達には守ってくれて優しくしてくれていつでも私達のことを考えてくれている人達が傍にいると解ってたってことだ。だから殊更に親を求めたりしなくてよかったんだもの。
眼の奥が熱くなって、でも泣く代わりに立ち上がる。居ても立ってもいられなかったのはギミーもだった。急いでロシウを追いかけようと、シモンさんに言う言葉さえ忘れている私達に声が追いかけてくる。
「ああ、そうだ。言い忘れてた」
その声音はもういつもの調子で、背もたれ越しに振り返ったシモンさんは笑っていた。立ち上がった彼女はおどけた敬礼をする。
「新政府へようこそ。
 ギミー・アダイ、ダリー・アダイ。
 これからよろしくな」
はい、と声を揃えた私とギミーに、シモンさんは満足そうに頷いた。
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