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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2007.09.30,Sun
9話っぽい感じのめのこ話。ニア姫様がやっと御出来です。
アニメのAパート分程度しかありませんが文字にすると(自分の文に無駄が多いこともあり)30kb近くあるようです。もし本編のノベライズやったら偉い文字数になるんだなーという謎の結論を得ました。

ではロシウさん(めのこ)の一人称で中途半端にどうぞ。











暴走したラガンはまるで他人の体温にシモンさんが怯えるのと同じ仕種でグレンを引きはがした。明滅するコンソールが伝えて来た異常に目を白黒させていた僕は、頭上に突き刺さっていたドリルが離れていくのに泡を食う。
「シモンさん!」
叫んでも返事はなかった。ラガンの操作系が入力を受け付けていない。このところ低迷していたはずの出力値は今やめちゃくちゃな波を描いていた。おまけにそのエネルギーは使われることを拒むように暴れ、逆流している。人のように苦しみもがくラガンの姿はシモンさん本人のように思えた。
「シモンさん!」
バカみたいに繰り返した僕は去ろうとするドリルに手を延ばす。グレンから離れるラガンは僕を拒絶するシモンさんだった。置いていかれてしまう。恐怖が僕を追い立てる。今にもラガン内部に収納されようとするドリルを僕の手が掴んだ。
接続端末でありながら紛れも無く武器でもあるドリルの溝が掌の皮膚を切り裂く。でも気にしている余裕はなかった。
収納される直前、ドリルが展開してコクピットへの通路が剥き出しになる。肘まで血まみれになっていた手は滑ったけれど僕は座席の背を蹴ってがむしゃらに身体を押し込んだ。
グレンのそれに比べて狭い操縦席にシモンさんがうずくまっている。真下からそれを認めて名を呼んでも、彼女は反応してくれなかった。
「シモンさん、しっかり!」
喚く声音が狭いコクピットに反響する。やっと昇ってはきたけれど暴走し続けるラガンは上下左右に揺れ続け、立ち上がるのは難しかった。操作も入力も断るラガンのモニターは真っ黒のまま外の状況を教えてくれない。
今、獣人に襲われたら?
肝を冷やした瞬間、それまでとは比べものにならないくらいラガンが揺れた。短い浮遊感の後、僕の体は隔壁にたたき付けられる。天地を混乱させたラガンは数秒後、どうやら走り出したようだった。ついにグレンから完全に離れてしまったのだろう。
頭を打ったせいか視界がぼやけた。赤く染まった手を伸ばしてもシモンさんには届かない。
「…」
背中への衝撃は僕の喉までおしゃかにして、結局僕はなにも出来ないまま気を失った。




寄り掛かっていた壁がふいに無くなり、意識を取り戻すと同時にべしゃりと粘ついた水音が耳に届いた。頬と言わず場所を選ばずに降りしきる雨の冷たさは僕の頭を次第にはっきりさせた。
「…シ、モン…さん…?」
睫毛だけでは目に入る水を防ぎきれない。瞬きを繰り返し、僕は傍にいるはずの人を呼んだ。今度も返事はない。
やっぱり僕なんかじゃ。
陰欝な気分で痛む頭を上げ、彼女の姿を捕らえようとして出来なかった。目の前の座席は空になっている。
「…!?」
状況が飲み込めず息を飲んだ。さしたる時間気絶していたわけではないと思っていたのに、シモンさんはここにいない。
遂にラガンすら捨てて大グレン弾を離れてしまったのかと延々危惧していた想像が頭を擡げた。
けれど掠めた考えを耳に残る音が否定する。壁が開くのに大きな揺れが前後していたことを思い出した僕は痛みも忘れて立ち上がった。
「シモン、さん!」
案の定、ラガンのすぐ傍の地面に小さな体が投げ出されている。雨に打たれる泥土の上、俯せのまま微動だにしていなかった。呼吸の上下すら見て取れず僕は転げ落ちるのと変わらない動きでラガンから降りる。
泥を跳ね散らかして駆け寄り、隣に膝をついて痩せた体を揺さぶった。うめき声すらない。
雨粒よりも心臓が冷たくなった。冷え切ったシモンさんの身を抱き起こす。されるがまま力の入らない間接は人形じみていた。
「しっかりしてください、シモンさん!」
ぼんやり開いた瞳は、閉じていてくれたほうがマシだと思えるくらい何も映していない。覗き込む僕のことも見えていなかった。
悲しい?恐い?辛い?
よく解らない。でもないまぜになった感情は僕を叫ばせようとした。
音が喉の手前で霧散したのは僕が思い止まったからじゃない。
さらさらと妙に軽い、だけど視界を塞ぐ雨霧の向こうから耳慣れた音が響いた。金属の軋み。近づいてくるそれはガンメンの足音だった。
一瞬、大グレン団の人達が来たのかと錯覚する。未だ動かないシモンさんを抱えて途方に暮れていたせいだ。心細さが産む甘えは、だけどすぐに打ち消される。
大グレン団は獣人と交戦中だ。一段落つくまで僕らを迎えに来る余裕なんてあるわけがない。
だとすればガンメンは危険な代物だ。須らく獣人は地上の人間を苅ろうとする。僕には今グレンがないし、ラガンはシモンさんにしか動かせないんだ。見つかれば殺されて、それでおしまい。
顔神様は、死に神なのだ。
もし村にいた頃にお前の死を顔神様が望んでいるのだと言われれば僕は大人しくそれに従っただろう。小さく貧しい僕の村では神の定めは絶対的な命令だった。従わなければ村は呆気なく滅んでしまう。
でも、今は。
僕は近づいてくる死から腕の中に居る人を守るために、頭に浮かんだ赤いクジを振り捨てた。濡れそぼった地面から膝を起こす。
どんなに強く決意したところでシモンさんを抱き上げるのは僕の腕では無理だ。いとも簡単にやってのけるだろう入墨の腕は今傍に無い。
重みよりも想像が僕に歯を食いしばらせた。細い腕を肩に回し、ジャケット越しに痩せた脇腹に手を添わせて立ち上がる。
こんなことでもなければ僕がシモンさんに触れるだなんておこがましくてできなかっただろう。でも今は迷っている暇はない。引きずることを覚悟したけれど、足を数歩重ねたところでシモンさんのブーツが地面を捉えた。千鳥足めいて頼りない、でも彼女は確かに自分の足で前に進んだ。
それを救いにして僕は手近の岩陰までシモンさんを連れる。ガンメンがラガンを探してやってきたのなら、シモンさんをラガンの傍に居させるのは危ない。少しは雨よけになりそうな場所があったのは運が良かった。
岩肌に背中を凭せかけ、がっくり折れるかと思った首がどうにか俯く程度で藍色の頭を支える。きちんとは開かない瞳が何度かゆっくり瞬きをしたけど、シモンさんは抜け殻のように言葉を失ったままだ。
どうしてもぼんやりしたままの彼女の頬から泥を拭う。さっきよりは呼吸が強くなっているような気もするけど、そうしている間にも遠くからの音は次第に近づいてきていた。冷えたままの身体の中でどくどく脈ばかりが強くなる。
しっかりしろ、ロシウ。今動けるのは僕しかいないんだ。
シモンさんの力になると、決めたじゃないか。
落ち着くために息を吐いてもあまり効果はなかった。情けなさを噛みしめたまま僕はシモンさんの顔を覗き込む。
「様子を見てきます。ここにいてくださいね」
どうにか歯が鳴るような真似は避けられたけれどシモンさんは状況が飲み込めていないのか硝子みたいな目のままで僕を見ているかも定かではなかった。
戻ってこられなかったら、これが僕の見る最後のシモンさんなんだ。今生の別れかもと思えばますます冷たい体温と精気の無い顔が悲しかった。
僕がいなくなってから、いつかはあなたは僕が好きだったあの笑顔を取り戻すんでしょうか。
まだ仲間と呼ぶことも出来ない人々の中でシモンさんが笑っているところを想像しようとしても上手くできなかった。
ここしばらく、いやもうずっと、シモンさんと大グレン団に入ってきた新しい人達は上手くいっていない。
シモンさんが勝手な行動ばかりするからだとその人達は言う。
それも間違っている訳じゃない。確かにシモンさんのグレンラガンは他のガンメンと連携を取ろうとしないし、時には遠距離型の射線に割り込んだり、あまつさえ今まさに殴り倒されようとしていた敵を横から蹴り飛ばしたりもする。人によってはそれを獲物の横取りとも受け取るんだろう。
でもそれはあまりにも表面的な考え方だ。彼等は自分達がグレンラガンに、シモンさんにどれだけ守られているか解っていない。この人が敵の不意打ちを防いだことは数知れず、そしていつだって一番危ない位置を負って立っているのかを。
無理矢理体をねじ込んで代わりにミサイルを食らうようなことも日常茶飯事だ。そうやって庇われていることすらも、男の人達にとっては苛立つ理由になりうるのだろうか。
だけど周囲にどう言われたってシモンさんは先頭で戦うことを止めてくれたりしないはずだ。逆に言われれば言われるほど自分の行為が足りないんだと考えるんだろう。
なんでそんなことをするのか、を、僕は多分解っていた。
守らなくてはならないから。一番最初に戦うのは自分でなくてはならないから。
彼女はずっとその考えに取り憑かれている。
少し前までカミナさんが考えもせずにやっていたことをシモンさんは代わりに果たそうとしているんだ。
…何故って、シモンさんは、カミナさんのことが好きだから。
前に温泉でキヤルさんに対して言葉に詰まっていた時に気付くべきだった。考えてみたら当たり前のことなのに。
今のシモンさんは多分、カミナさんにしてあげられるのは戦うことしかないんだって思ってる。命を賭けるのも、無茶をするのも、壊れそうになってしまうのもみんなみんなカミナさんのためなんだ。カミナさんは、解っていないけど。
あの人は酷く聡い人で、でも同時にとても鈍くて、優しいけどだからこそどこか残酷だから。
いつの間にか歩調が荒くなっていた。泥を散らかしているうちに少し開けたところが見えてくる。気付けば音もすぐそこまで来ていて、慌てて岩壁に身を寄せた。背中に揺れが伝わる。ガンメンは僕のほとんど真上を歩いていた。湧いてもいない唾を飲み込んで見上げる先で高台の縁にガンメンが陣取る。その両手に少し大きな箱を持っていた。脇見もしない姿は何かを捜しているようには見えない。
僕らを追ってきたのではないのだろうか。幽かに安堵を感じた僕が見ているのも知らず、ガンメンは高々と箱を抱えたままの両手を上げた。
あやすように箱を揺すり、それから無造作にそれを放り投げる。
僕からあまり遠くはないところにその箱が落ち、足の骨まで揺れが響いた。濡れた地面を滑った箱が動きを止めたところまで見届けるとガンメンは踵を返して去っていく。
大きな背中を眺めている内に気が抜けてへたり込みそうになった。だがその前に腕を掴まれて、僕は跳ね上がる。
「…!」
声にならない悲鳴を上げつつ僕は自分を捕えたものに瞳を向けた。油の足りないガンメンみたいにぎこちなく振り向く。
その先にいたのは、シモンさんだった。
追いついてきた気配を全く感知していなくてもう一度僕は度肝を抜かれる。今度こそ膝から力が抜けて水たまりに腰が落ちた。大きく息を吐く僕を追いかけてシモンさんも濡れた地面に膝をつく。
僕がどうにか落ち着いて彼女に何か言うよりも、シモンさんの手が僕の手首を握って引っ張る方が早かった。びっくりして見上げた彼女の瞳は疲労を溶かし込んでいたけど、同時に僕の姿をちゃんと映している。
「ロシウ、血が」
言われ、見てみればべったりとシモンさんの上着には血がついていた。一瞬彼女が怪我をしたのかと肝が冷えたのだけど、僕に注がれるシモンさんの視線を辿ってそれが僕の血なのだとやっと気付く。しまった、ドリルを握った時に皮膚が裂けたのを忘れていた。
シモンさんが久々に浮かべた表情が難色を示しているのが居たたまれない。
慌てて手を腰の後ろに回そうとしたけど、固くなった皮膚を持つ手にとっくに握られているんだから無理に決まってた。さっきまで疵自体忘れていたのに雨が染みこんでくるとそこが心臓になったような感じがぶり返す。
「手、開いてて」
素っ気ない声と共に手が離される。放られた感触が淋しかったけどそれどころじゃなかった。シモンさんは彼女の身体を服代わりに覆っているさらしに指をかけていとも簡単に解いてしまう。
「シ、シモンさん?」
するすると淀みなく白い布を巻き取る動作を眺めるついでに喉元で揺れるコアドリルの存在を知った。でもそんなの後回しだ。
ほっそりしてるのに筋肉の形が浮いたお腹もヘソの窪みも惑わず晒し、一繋ぎの布は最後に乳房を隠す役目まで放棄する。布が剥がれて解放された姿に引きつりかけて僕は急いで両手を伸ばした。青い上着の合わせを握って少々乱暴にジッパーを上げる。
びしょ濡れではあるけどどうにか肌を守る役割を果たした服に一息ついた。そんな僕にシモンさんはきょとんとしたあともう一度眉を顰めた。
「ロシウ、手を握っちゃ駄目だ」
どうにかやるべきことを終わらせた僕の手をまた手首を持って引き剥がし、シモンさんは真剣な面持ちで僕を見る。その顔は僕が知っている、僕が好きなシモンさんのそれに近くて反抗なんて思いつかなかった。
大人しくしている僕の手にシモンさんがさらしを落として疵を覆ってくれる。三重ほどになったところで布の端にコアドリルで傷を付けて破り、結びつけられて応急処置が終わった。
「…はい」
なんとはなしに動きを追っていた指が離れる。覗いた手の平には血豆があった。ドリルを操るシモンさんの皮膚にそんな物が出来るのは、多分ラガンのレバーのせいだろう。僕も、グレンのトリガーで何回も肌を傷つけた。コクピットの中では縋る物がそれしかないから。
じっと見つめた僕の不躾な視線をどう思ったのか、灰色の瞳が俯いた。
「…悪かった」
「え」
そっぽを向いたままのシモンさんの声は押し潰されて歪んでいる。
貴方はそんな声で喋る人じゃなかった。
でも指摘したらシモンさんは僕から離れて消えてしまいそうで、結局僕の喉は働かない。爪が食い込むほど握った彼女の拳をどうやって解かせればいいのかも解らなかった。
…前は、ドリルを使う時に障るからと深爪のように揃えていたのに。
短かった髪も心なしか伸びて、そのくせ脂っ気は抜けて、元々痩せているのに益々小さくなって骨が浮いて目も黒々と隈に囲まれて、彼女は少しずつ別人になってしまうかのようだった。いや、別人にされてしまうと言う方が正しいんだろうか。
当面の脅威は去っていて、でも僕はここから動く気になれなかった。すぐにダイグレンに戻ろうという気も起きない。少なくともシモンさんが言い出すまでは。
いっそ、このまま戦場から逃げてしまえば…不可能な妄想が頭を掠める。
無理だ。ギミーとダリーを置いては行けない。大体それじゃ村を出てきた意味も無くなる。
そしてきっと、シモンさんはカミナさんから離れることなんか出来ないんだ。
屋根代わりにもならない岩壁からぼたぼた雫が落ちてくる。
ああ、シモンさんがこんな風に泣いてくれたらいいのに。そうしたら僕は、悪夢に脅えて飛び起きたギミーやダリーにそうするように、抱きしめて頭を撫でて大丈夫だよといってあげられるはずなんだ。
でも僕は彼女が望んでいる手が他人の物だと知っている。シモンさんが欲しているのは、あの太陽すら掴もうとする人の物だ。
 ──────本当は、僕の代わりにギミーとダリーの傍についてくれているブータさんの方がシモンさんの慰めになるのだろう。
ついてきたのは、はっきり言って僕の我が儘だった。
一人で血を流し傷つくシモンさんを見ているだけなのが辛くて、この人を守りたいと願ってしまったんだ。そんな力、ないくせに。でももしかしたら痛みの一片くらい肩代わりを出来るんじゃないか、共有出来るんじゃないかって。そんな風に考えてしまった。
だってあのダイガンザンとの戦いの朝、見送る僕のことをシモンさんが見たから。
いつもならグレンラガンとしてカミナさんと共に出撃する彼女はその時大グレン団の仲間達から離れた位置で操縦桿を握っていた。他のガンメンは言ってしまえば全て囮。シモンさんはその時初めて一人で戦場へ向かったんだ。
ラガンの上から、シモンさんは確かに僕を見た。まるで迷子みたいだった。頼りない瞳に縋られたような気がして、でも声が届く距離ではなくて。
だから周囲に溢れる音の代わりに僕は頷いた。シモンさんが何を感じて、何を思ったのかは判らない。今も判らない。
でも僕はその時頷いて見せた。彼女の中にある物全部を肯定したかったから。
…シモンさんも、頷きかえしてくれた。錯覚でなければ、顎を上げて前を見据えた横顔からは緊張が少し抜けていた。無事を祈りながら小さな背中を見送ったことを憶えている。
けれど彼女は大怪我を負って帰ってきた。抱き上げたカミナさんの腕の中限りなく死体に近づいたシモンさんを見て僕は後悔に飲まれた。だって、僕は何の力にも慣れなかった。頷き一つじゃなんにもならない。
思い知ったからこそガンメンの操縦訓練も進んで受けてきたっていうのに、結局今こうなっている。
濡れそぼったシモンさんは寒そうで、僕も寒くて、寄り添えばいいと判っているのに距離が詰められなかった。僕は、シモンさんに拒絶されるのが怖い。
まるでその恐れを察知したかのようにシモンさんが立ち上がった。少しふらつきながら彼女は足を踏み出す。
…置いて行かれる!
恐怖が食い込み呼吸が止まらなくなるくらいの衝撃が僕を襲った。小さくなる背中は僕の頭に激しい警鐘を鳴らす。行かせたくない。でも僕じゃ止められない。どうしてそう思うのかも判らなかったけど、僕にとってそれは他の全てを忘れさせるほどのことだった。
シモンさんは行ってしまう。
けれど僕の想像を裏切ってブーツの足はそう遠くないところで止まった。雨でぺったり髪を貼り付かせた顔が振り返る。その仕草で僕の胸は安堵に支配された。変だと自分でも思うくらい力が抜ける。
雨幕のむこうのシモンさんには僕の変化は伝わらなかったらしい。彼女は何度か咳き込んで、それからゆっくり腕を上げた。
「…アレ、なんだろう?」
掠れた声を聴いてやっと、シモンさんの手指が指し示す形なのに気付く。その向こうにあるのはガンメンが投げ捨てた箱だった。すぐには応じられないうちにシモンさんは視線を箱に移す。僕は慌てて彼女の隣へ走った。
「結構、大きいですね」
ガンメンのコクピットよりも小さいけれど、人一人くらいは入れそうな箱。謎めいた立方体の表面をシモンさんは手を差し伸べて撫でる。一歩後ろに立った僕は、恐る恐る滑る手元を眺めた。指先は継ぎ目のない箱の表面を伝い、最後に上部についた窪みをつつく。
「ここ」
何かに気付いたらしいシモンさんがジャケットのポケットをまさぐった。重そうに動く手がしばらくして引きずり出した物を見て、僕も遅ればせ彼女の意図に気付く。
確かに、穴は丁度コアドリルが嵌まるような形だった。そう思ってみればラガンのコンソールのそれと具合がよく似ている。
「…シモンさん」
なによりまず呼んでしまった僕が感じたのは、不安だった。箱はガンメンが運んできたもので、つまりは獣人のものだ。僕たちに危険をもたらすかもしれない。
「うん」
だけどシモンさんは浅く頷くと輝きを失った錐体を穴に嵌め込んだ。僕の声を促しと受け取ったんだろうか。肝を冷やして、それから覚悟を決めた。僕は、シモンさんを全部肯定するんだから。
自分に言い聞かせても息を飲むのは止められなかった。
ふしゅっと空気を吐いた箱が直後勢いよく蓋を開く。間抜けにも声を上げてしまったのは白い靄が箱から吹き出したからだ。
雨で沈静化した煙の中には、…女の子が、眠っていた。
それはあまりにも非現実的な光景に見えて、僕はあんぐり口を開く。シモンさんにも予想外だったんだろう。驚いて丸まった眼が何度も瞬いた。二の句を告げないシモンさんが手をさ迷わせる。視線を箱の中に注いだまま、彼女の指が僕の掌を手繰り寄せた。場違いにも眼の前の謎よりシモンさんの体温に意識と視線を持って行かれる。握り返そうにも怪我をした手は痺れて上手く動かなかった。その硬直が傷のせいなのか触れる相手のためなのか、はたまた状況故なのかは解らない。
肩を並べながら別のものを眺める僕らの奇妙な沈黙を破ったのは、箱の中の女の子だった。冷たい雨垂れは箱の蓋では防ぎきれず外気に晒された彼女をうつ。
忍び寄る冷気に身じろぎした女の子は、長い睫毛に縁取られた瞼を揺らした。何故だか気圧され下がりそうになった僕をシモンさんの手が留める。
箱の中に広がる金に不思議と青みがかったふわふわの髪、仕立ての良さが一目で判る薄桃の服、華奢な身体に傷一つ無い皮膚。まるで彼女自身が煌めいているような姿に気後れして僕はシモンさんの傍に身を寄せた。この世の好ましいもの全てを煮固めたような女の子。そんな表現が似合う姿だった。もしアダイに彼女が現れたならまさしく天上人と見做しただろう。
「…」
女の子は最初僕らに気づいていなかった。ぱちくり瞬きを繰り返して細くて汚れたことも無さそうなくらい透き通った肌の手で顔を擦る。寝ぼけ眼がゆっくりと辺りを見回して、それからやっと花を閉じ込めたような華やかな瞳が僕らを捉えた。
僕達を上から下まで眺めた眼が笑む。
「ごきげんよう」
まだ少し眠気を残した声が僕達と彼女を繋いだ。
「ご…?」
シモンさんの声がまごつく。僕も一瞬かけられた言葉が挨拶だと気づけなかった。
「…あ、…こ、こんにち…わ」
間を置いた返礼に女の子の笑顔が深くなる。箱の縁に手を置いて立ち上がった彼女は会釈してからまた微笑んだ。
「私は、ニア。あなたがたは?」
ニア。柔らかな仕草で一礼した少女の名乗った音は耳に馴染まない。
「…ニア?」
シモンさんもそうだったのか訝しげに繰り返した名前に、ニア、さん、が頷いた。それを受け少ししかめ面のシモンさんが僕を見、もう一回ニアさんに向き直る。
「俺はシモン。こっちが、ロシウ」
ロシウ、と僕の名を告げた時シモンさんの手指に幽かな力が籠った。声音もまだ警戒を浮かべている。僕だって、目の前の女の子が災いでないとは言い切れなかった。少なからず構えた態度をだけどニアさんは気に留めない。
「…ココは外ですね!?これが雨!」
名を知ったことで一応興味が収まったのかニアさんは自分を打つ雨だれを拭い、ついで天に腕を伸ばして水滴を受け止める。はしゃいだ声で言いながら、彼女は箱から抜け出した。
軽い水音を立てて地面に降ろされたのが素足だと気づいて僕はびっくりする。飾り物みたいな小さな爪をつけた指が泥を潜ってなんだか慌てた。綺麗な足なのに、いいのかな…人の身体なのだから後で洗えば良いだけなのに、どうしてかハラハラする。
「…冷たい…これは?」
僕の気も知らないで足指で地面をつつきながらニアさんは眼を丸くした。まるで、それに初めて触れるみたいに。地上に出たばかりのギミーやダリーみたいな口調だった。
「土。…いいの、裸足で?」
答えつつ、シモンさんも僕と同じ気分だったらしく尋ねる。でも問いかけの意味が解っていない顔でニアさんはころころと笑った。
「つち、ですか!これが、土!
 冷たくて、どろどろして、ねちょねちょして…気持ちいい!」
感触を確かめて白い足が泥の上を滑る。そのまま2,3歩僕らとの距離を詰めようとするのを見て、石で皮膚を傷つけやしないかと心配になった。だけどニアさんはにっこりと笑ったまま、繊細な手指をシモンさんに伸ばす。
指先がシモンさんの顔に触れようとするのを見て、今更僕はニアさんが敵かも知れないのだと思い出した。繋いだ手を引いて警告を促す。シモンさんも目尻を険しくして首を下げようとしたけれどニアさんの方が早かった。
ぺたりぺたりとシモンさんのこけた頬や目元を探りニアさんは小首を傾げる。
「────何故、あなたは私と同じなの?」
「え」
予想外の質問に思わず声が出る。シモンさんも疑問顔だ。
「尻尾もないし、牙も鱗もない。肌も柔らかい」
当たり前のことを言いながら、ニアさんも冗談のつもりではないようだった。ついには極真剣な顔を見せてシモンさんの顔を検分し始める。
真っ直ぐな視線を嫌ったのか、それとも触られるのが嫌だったのかシモンさんは首を振ってニアさんを払い一歩下がった。僕と肩を並べて一息吐いてから掠れた声が律儀に答える。
「…人、だから」
あまりにも的確な答えはニアさんの理解の範疇を越えた。
「ヒト?」
彼女はオウム返しにしてから短く逡巡し、それから邪気のない笑顔と共に質問する。
「ヒトって、いったいなんですか?」
その言葉を聴いた時のシモンさんの表情が目に焼き付いた。久々に大きく表情を変え、唖然として固まった彼女は少しの間返答に惑い、そうしてから僕に縋る目を向ける。ニアさんまでもが僕に視線を据えた。そんな。でも求められてしまうと答えざるを得ず、もごもごと説明にならない説明が口から出る。
「え、あ、そのっ…だから、ヒトっていうのは、僕やシモンさん…みたいな」
ニアさんを含んで良いのか少し迷った。でも彼女の言を信じるのなら僕達は"一緒"だ。
「獣人とは違って、牙とか大きな爪とか尻尾とかはなくて、大体みんな同じ形で…」
しどろもどろになりつつの解説にニアさんの瞳が輝く。
「みんな?他にもいるの?本当に?それは全部あなたと同じなの?同じ顔をしているの?」
「え、えっと」
矢継ぎ早の問いかけに舌が回らなくなった僕の横から鋭い否定が飛んだ。
「同じじゃない」
早口に切って捨てられたニアさんが声を収める。シモンさんはそっぽを向いて繰り返した。
「同じじゃない。みんな同じにはなれない。
 顔も、…」
最後まで言い切らないまま彼女は口を噤む。その横顔は傷ついて見えて、僕はシモンさんが悟っているのだと察した。
解ってるんですね、シモンさん。
あなたはあなたでカミナさんの代わりなんかじゃないし、─────そうなることだって出来はしないんだってことを。解ってるから、苦しいんだ。
ずるりと手から剥がれそうになったシモンさんの手指を握りかえして留める。彼女の体温は酷く落ちていてすぐ温めないと身体に障りそうだった。何も知らないニアさんにしたってずっとここにいたら危ない。
「…ここを出る方法を探しましょう。風邪を引いてしまう」
提案にシモンさんは控えめに頷き、ニアさんは唐突に何故私は外にいるのかしらと言い出した。…大丈夫かな。
不安は山ほどあったし、ニアさんをダイグレンに連れていっていいのか判断に迷うところもある。でもじっとしている訳にもいかないんだ。
辺りを見回し様子を窺う僕の手をシモンさんが離した。
「あ」
名残を惜しむ僕を知らず彼女は靴を脱いでニアさんに差し出す。さらしの時と変わらず当然みたいな所作だった。なんでこの人はこんなにも与えることを惜しまないんだろう。あんまりにも誰にも平等だ。
「これ。そんなんじゃ歩けないよ。履いて」
つっけんどんでも気遣いを示されてニアさんがまた笑顔になる。なんだか落ち着かない気分になって、僕は来た道を振り返った。ラガンを拾わないとまずいのだろうけど、先にダイグレンに戻って他の人に運んで貰うべきだろうか。考えはするのにどうしてだろうちゃんと頭が回らなかった。シモンさんやニアさんより先に僕が雨にまいってしまったのかもしれない。
情けなさを感じて、取り敢えずまたガンメンが来るかもしれないしこの箱だらけの場所を抜けようと言おうとして背筋が冷える。もしかしたら他の箱も空じゃない、その可能性に思い至ってしまったから。箱の中に人が居て、ずっと放って置かれたら、つまりそれは生きたまま入れられる棺だ。
想像に固まった僕の手をシモンさんが急に握った。
「走れ、ロシウ!」
乱暴に引っ張られてつんのめり、どうにか言われたとおり走り出す。何故、と訊く前にシモンさんがもう一方の手で連れているニアさんが暢気に質問した。
「ねえシモン、あれはなんですか?」
言いながら振り向いたニアさんに釣られて僕も背後を見遣る。何、だと解った僕が泡を吹くかと思う間に前を向いたままのシモンさんが叫んだ。
「ガンメンだ!」
まだ雨の壁の向こう側に居る敵から逃げる為にぬめる地面を裸足で駆け、彼女が進む先にはラガンがある。
「地上にいる人間は、あれと戦ってるんだ。戦わないと殺されるんだ」
ガンメンの足音に負けないくらい大声で、でも淡々と。常識を自分に言い聞かせる口調だった。…殺される僕らを守るのもガンメンだなんて皮肉ですね、シモンさん。
少し離れていた気がしていたけどラガンまではすぐだった。だけどその分ガンメン…あれはニアさんの箱を投げた奴だ。何しに戻ってきたんだろう…との距離も詰まっている。人の足とガンメンの足じゃお話にならなかった。
いち早くラガンに乗り込んだシモンさんがコアドリルを差し込む。ラガンの目に鈍い光が宿った。
動くのか。
それが生死を左右するのにやけに平静に考えた僕をシモンさんが呼ぶ。
「ロシウ、乗れっ!」
彼女はニアさんに手を貸しながら怒鳴り、三人収まったのを確かめてラガンを走らせた。だけどその足取りは危うく、コンソールの光も明滅して安定しない。
「くそっ…」
毒突くシモンさんは操縦桿を握り直して急角度に倒した。なのに焦りにも命令にも応えないラガンはよろめいて、遂に僕らは大きなガンメンの射程に入ってしまう。振り下ろされた混紡を避けるだけの速度は出ない────代わりにキャノピーが閉まって盾になる。
でも、そこまでだった。
消しきれない衝撃にラガンは吹っ飛ばされて岩壁に激突する。折角閉まったシャッターもそれでまた開いてしまい、横倒しの機体から僕ら三人は投げ出された。
「…くぅ」
呻き、シモンさんは縋り付いたコクピットで何度もコアドリルをスピンオンする。でもラガンの目が輝きを取り戻すことはなかった。弾かれたお陰であいた距離も迫るガンメンには大したものじゃない。
死ぬのかな。やっぱり変に冷静に思った膝立ちの僕に、シモンさんが身体をぶつけた。押し出されるようにして立ち上がった僕の背を叩いて一歩踏み出させ叱咤する。
「逃げろ!」
僕と、先に立っていたニアさんを睨んでシモンさんは僕達に背を向けた。その手にはいつものハンドドリル。ラガンに似てぐらつく足で土を踏みしめ、彼女は先端を向かってくるガンメンに向けた。戦うつもりなのか、まさか、それで?一目で解る意図に息を呑む。ガンメンに追いかけられても落ち着いていた頭が一気に混乱した。
「…俺なんか、どうなったって」
囁く声音が届いて足が竦む。敵にじゃない、シモンさんの姿にだ。
彼女の小さな背中が、忘れたはずの人と重なって見えた。
「…母さん」
思わず呟いた僕の隣からニアさんが歩き出す。言われたのとは、逆の方に。
「シモン、逃げましょう?」
仁王立ちした横に寄り添い、こんな時でもニアさんは笑顔だった。今その表情は無邪気というより優しい。
ニアさんはドリルを握る手に手を重ね、それを降ろさせようとした。
「怖いのなら、逃げれば良いのです。死んではいけません」
シモンさんの腕が震えているのだと僕もやっと気づく。当たり前だ、だって。
「怖くなんて」
拒絶が虚勢なのだと僕にも見抜けた。そしていつでも意地を張り続けたことを知らないニアさんはいとも簡単に指摘する。
「嘘も、いけません」
責める声じゃなかった。シモンさんの肩が跳ねる。
ガンメンはすぐそこ、もう混紡は僕らに届くかも知れなかった。ニアさんは重ねた手をそのまま握る。
「さあ!」
僕がどうしても自分からは触れられなかった手をいとも簡単に取って、箱から現れた女の子は駆け出した。まるで、草原を駆けるみたいに。
それを見て何故か僕の足が固まった。だけど後ろから来るガンメンの叫びに慌てて二人の背中を追いかける。
正直、逃げられるタイミングではなかった。僕らが必死に走ってもガンメンの一歩にも及ばない。
それなら、いっそ、僕が先に殺されてシモンさんの逃げる時間が稼げれば。思って速度を落としかけた、その時だった。
「てめぇ!何してやがるァ!!」
巻き舌気味の怒鳴り声が岩場に反響する。ついで着弾音と共にガンメンが体勢を崩し、それが倒れるより早く僕らの上から一機ガンメンが振ってきた。
「…兄貴」
喜色に染まりきらない声が呼ぶとおり、僕達を庇って立つガンメンはカミナさんのビャコウだった。赤く染めず白いまま、名も変えなかったのはカミナさんが四天王チミルフほどの武人の持ち物を弄くるのは漢として許せなかったから、らしい。だから変わったのはグレンラガンに叩き折られて使い物にならなくなった槍ぐらいだ。
「シモン!ロシウ!無事!?」
高い位置からヨーコさんの声も落ちてくる。岩壁の上のどこかに、多分アインザーと狙いを構えているんだろう。気遣う言葉にシモンさんが強ばる。
「おぅおぅおぅおォ!俺の可愛い妹分に手ェ出すたぁ太ぇ野郎だ、この不埒者ッ!」
運命は逆転した。カスタムガンメンとガンメンじゃ出力が違い過ぎる。
槍から刀に変わった装備をビャコウが構え、一閃。カウンター狙いだったのか横なぎの棍棒をかわして斬撃が幾つ入ったのかまでは数えなかった。
援護は必要ないと判断したのかそれとも僕らを保護するためかヨーコさんが先に上から降りてくる。アインザーかと思いきや、彼女は一人でグレンに乗っていた。ラガン以外のガンメンは基本的に誰にでも乗ることが出来る。戦場に置き去りにしたグレンに固定の自機を持たないヨーコさんが乗っていても確かにおかしくはなかったけど、なんとなく腑に落ちない感じがした。
「二人とも、怪我はない!?」
グレンのコクピットが開き中からライフルを担いだヨーコさんが姿を現す。足場を捜す仕草も見せずに素早く降りてきた彼女は僕らに駆け寄って腕を広げ、多分シモンさんと僕を抱きしめようとして動きを止めた。金色の眼が瞬いてニアさんを見つめる。
「その子は?」
当然の疑念を浮かべながら僕達にヨーコさんが向き直った。でも答える前にまるでつむじ風みたいに駆けてきた紅い影がシモンさんを捕える。
「シモン!無事か!」
長いマントの裾が泥で汚れるのも構わずに走ったカミナさんがシモンさんの細い肩を手でくるんで引き寄せようとした。けれど身体が近づくより早く藍色の腕が刺青の腕を払う。
「…なんで来たんだよ、兄貴」
安堵と喜色に浸っていた朱い目が丸くなり、しゃがれ気味の声に責められて歪んだ。その顔を見上げないままシモンさんはまだしも抑えていた声音を甲高く引きつらせる。
「前に出るなって言ったじゃないか!なんでここに居るんだ!」
癇癪を起こした子供じみて、今にも地団駄踏みそうな具合だった。炸裂した言葉に、いつだって堂々としているカミナさんが珍しく狼狽えて足を下げる。顛末の機微が解らずにニアさんはきょろきょろと僕達を見回し、ヨーコさんが見かねてシモンさんに声を掛けた。
「シモン!つまんない意地張ったって仕方ないでしょ!
 心配したのよ、カミナも私も」
叱ると言うよりは気を揉んでいる口調だったけどシモンさんの双眸が怯む。雨に濡れた貌は泣き顔に酷似していた。
「…ねえ、どうしたって言うの?ここのところ…」
丁度、前からの仲間達、とあまりにも新参過ぎるニアさんだけという状況だったからか、ヨーコさんはおそらくずっと温めていたのだろう疑問を畳みかける。だけどシモンさんはそれには答えず粗い足取りで踵を返した。
「グレン借りる。ラガン運んで戻るから先に行って」
引き留めようとした僕らを遮って一息に言い切ってシモンさんはヨーコさんが乗ってきたグレンに足を向けた。追いかけようとした僕の肩をカミナさんが掴んで止める。
「カミナ」
不安そうにヨーコさんに呼ばれてもカミナさんは雨に濡れそぼった空色の頭を振った。眉を寄せて視線はお揃いのマークを負ったシモンさんの背中を追いかける。シモンさんは一度も振り返らずグレンの中に消え、グレンは離れた位置に投げ捨てられたラガンに向かって歩き出した。
「…戻るぞ」
作業についた元の自機から視界を剥がしてカミナさんは僕らを促す。そうされて、ずっと今まで大人しく動向を見守っていたニアさんが口を開いた。
「シモンは、兄貴さんが嫌いなのですか?」
…思いきり頭から地面に転んだカミナさんに、天罰だなんて思ったのは誰にも内緒だ。
あめは、まだやまない。

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