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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.05.02,Thu
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2008.09.09,Tue
カミナ書きたくない、で逃げ回りまして、どうにか要素を抽出して再構成。
裏で色々カミナもやってたんですよって部分は臭わせられ……てないな!
カミナ難しいよカミナ!






四天王怒濤のチミルフを下し、流麗のアディーネを制し、王都テッペリン前に陣を引いて早一ヶ月。戦力から考えて短期決戦になるものと思われた大グレン団の戦術は、嬉しい誤算により方向を転換するに至っていた。獣人に抵抗し地上を取り戻そうとする意志の元、それに賛同する人間達が続々と集まり、人材も物資も予想を遙かに上回る範囲で充実したのだ。これが一ヶ月にも及ぶテッペリン攻略戦を可能にした背景だった。
だが、それももう終わろうとしている。急場ごしらえの兵站は膨れあがった大グレン団を切り盛りするには瀬戸際の線だ。腹が減っては戦が出来ない。
そして一方でテッペリン側も残る二人の四天王のダイガンへ甚大なダメージを与えられ、確実に戦力を落としてきていた。鉄壁だった守りへ生じた綻びを見逃すほど大グレン団は甘くはなく、そして余裕もない。
…決戦の朝だった。
知れず高揚する空気の中、誰もがそれを感じ取っていた。出来うる限りガンメンのメンテナンスを整え、ダイグレンの装備を調え、人員の体調も万全。ここで攻めなければいつ攻める。そんな機運が高まっていた。そして実のところ、この波を逃せば大グレン団に次の波が来るより早く獣人に潰されることは目に見えていた。故に今日の闘いはテッペリン中枢へ攻め込む戦となる。
ご多分に漏れず、いやおそらく大グレン団の中で最も魂の炉に熱を炊き込んだカミナはゆっくりと夜明けも近い甲板へと足を向けていた。自分たちを地下へと閉じこめ続けた親玉が陣取るデカブツを、そしてそれをぶっ倒して手に入れようとしている美しく晴れ渡った空を眺めるために。
徹夜で作業してくれている仲間達に声を掛けて意気を上げつつカミナは甲板へ続くドアを開いた。肩に掛ける赤い布が吹き込む空気を孕む。喉元を駆け抜け冷やすその空気に意識をしゃっきりさせられカミナは笑った。雪駄が広い外へと一歩を踏み出す。
ザァッと耳元で風が躍った。顎を引き見上げた空はまだ夜闇を残し、しかし星と月の姿は薄れ確実に太陽の領分へと足を突っ込み始めている。
大きく息を吸い込み、その清冽さにカミナは満足を憶えた。いい朝だ。ここ一番の勝負には丁度いい。
充実感のままカミナは赤い瞳を煌めかせ、そしてその先に予想していなかったものを見つけた。既に機材は全て運び込まれ人の姿も無いはずの甲板、それも舳先に小さな人影が立っている。
背中に踊るマークは自分と同じだ。見覚えのありすぎる姿に何故か息を呑みカミナは立ちつくす。
風を受けふわりと夜色の髪と空色の衣服を風に揺らせた後ろ姿は、間違いなく少女のそれだった。村から連れ出した頃から背はどれだけ伸びただろう。未だに細く小さいが、それでも確かに彼女は変わった。骨と皮と筋肉によって組まれていた身体に幾分柔らかな脂肪が乗り始め、今やさらしでは隠しきれていない。たなびく藍糸の隙間に覗く白い首筋は細く、しかし幼くはなかった。子供の脆さから乙女のたおやかさを手に入れた身体は外側から変化を見せつける。さらりと髪を掻き上げる仕草さえ昔とどこか変わって見えるのは錯覚だったろうか。
ズボンもブーツも腰に下げたドリルもリットナーの村から着てきた上着も左腕に結びつけた紅い布も見覚えがある。ただ、中身だけは間違えようもなく昔のままではなかった。
いつの間にこんなに育ってしまったのだろう。射し込む光にではなく眼を細め、カミナは片手で両目を庇った。
既にもうシモンは、守られてばかりの幼い少女ではない。地震に怯え暮らしていた地下の娘ではなく、獣人と戦う戦士の一人だった。
しかしだからこそカミナはシモンを守りたかったのだ。地上に引きずり出してしまった、それが責任だと遅まき感じた。けれど命さえ失いかけたシモンはカミナの庇護を断り、自分の手で闘い自分の足で歩くことを選んだのだった。
その意図が解らず荒れ始めていたカミナに、リーロンは呆れ返った声で呟いたものだ。
「…シモンにだって理由が必要。
 そういうことでしょ」
シモンは新しく来た仲間達との馴れ合いを避け、無理矢理乗り込んでいる状態のロシウをつれてグレンラガンでの戦闘を繰り返していた。そんな時期だ。無茶と無謀の大盤振る舞い、使い間違えも良いところのシモンに何かを伝えたいのにカミナはシモンが何を考えているのかさえ解らない状態に成り果てていた。それを見たリーロンがコーヒーを啜りつつ告げたのだ。
「シモンが一度だって地上に来たいと言ったの?」
それは、カミナが思考停止してきた現実だった。地下にいるより絶対に良いはずだと思って連れてきた、にも関わらず死ぬような眼に遭わせてしまった。今も命を削って闘いに赴くシモンはとても幸せには見えない。
「あの子、村一番の穴掘り師だったんでしょう。
 そのまま村に居たって十分に生活していけた。
 わざわざ地上に出てきて危ない目に遭う理由なんてどこにあったの?」
リーロンの正論は胸に突き刺さり、カミナはグゥの音も出なかった。カミナはシモンを必要としていたが、シモンの方では必ずしもそうではない。それを現実として認めるには、カミナはシモンに固執し続け過ぎていた。
部屋に籠もり、人との接触を断ったシモンにカミナが言えたのは「言いたいことがあんならはっきり言いやがれ」、それしかない。いつもの調子で指をつきつけどうにか問いつめたカミナに、俯いたシモンはしばし無言だった。間違えたかと焦りがこみ上げる中やっと妹分が言葉を紡ぎ、自然カミナは猫背になる。
「…兄貴はいいんだ、兄貴のままで」
言うべきことはないと宣言したシモンの口端が歪んだ。皮肉にそまったそれはカミナにとって気に食わず、しかし殴れば治る類とも思えない。
硬直するカミナに話は終わりと見て取ったのかシモンは脚を引き摺るようにしてその場を去っていった。小さく小さく囁かれた言葉を聞き取れたのは僥倖だろう。
「…変わらなくちゃいけないのは、俺なんだ」
唇を噛みしめ流れた血を嘗めとりながら不明瞭な声音でシモンは呟いた。
「なにかに寄り掛かり続ける、俺なんだ」
お前が一体なにに頼ってるっていうんだ。むしろ俺すら頼ってくれはしないじゃないか。目を向いたカミナが腕を伸ばしシモンを捉えようとするには反応が遅すぎた。シモンは角を曲がり、自室へと消えてしまう。カミナの両雪駄は根が生えたように持ち主をそこで佇ませた。
今甲板に立つカミナもまた同じように歩を止めている。前方から吹き込んでくる風と射し込む光の中、彼は背後に背負った影に縫いつけられてしまったようだ。己の足で立ち、己の眼で世界を睥睨する妹分の背中を眺めたまま彼は動けない。
この世界へ飛び出した時、ヨーコやブータも加え眺めた空は夕暮れだった。しかし今や夜の帳は薄れ行き、朝日がやってこようとしている。紛れもなく激戦となるであろう昼を前にして随分と暢気なものだとカミナが喉を振るわせた。
それに応じて舳先に立ったままのシモンがこちらへ振り向く。バイザーで前髪を全てまとめ上げた彼女は耳に引っかかる髪を払いながら問いかけた。
「…いいの、兄貴」
ヨーコと居なくて。
言外に問うた気遣いに、カミナは口端を上げて応じる。
「別にこれが最後って訳じゃあねえだろ」
肩を竦めた仕草には、妹分がまず気遣う点がそこだという現実にどことなく情けなさを感じたからだった。ビャコウの調子、体調の状態、シモンが尋ねるべきことなどいくらでもあるはずなのに、妹分はカミナとヨーコの関係を気にした。
しかしカミナ自身から心配無用と言い切られたシモンは髪を弄る手を止め、もう一度正面を見つめてから目を伏せた。
「そうかな。…そうだね」
息を吐き、シモンは慣れた仕草で舳先から降りる。届きもしないのに助けの腕を出そうとしている自分に気づいてカミナは舌打ちした。
シモンは名残惜しげに背中に広がる空をちらちらと見ながらカミナの傍へと足を進める。正面に並び見上げる灰色の眼は、かつて地下世界では滅多に見られない決意に満ちたそれだった。この感情の強さを止める術はカミナには存在しない。聞き届けるしかないと覚悟を決めたカミナをまっすぐに見つめたまま、シモンは口を開いた。
「兄貴、お願いがあるんだ」
ぐ、とシモンの指が首から提げられたコアドリルを握りしめる。その錐体が彼女を支えるものの一端になっているのは間違いなかった。
シモンは真上の空を見上げ、甲板を見渡し、そしてカミナの背中の向こうにある格納庫を見据えて続ける。
「ニアをロージェノムの前まで連れて行ってあげて欲しい」
いつのまにか灰色の眼はカミナの姿を映し込んでいた。真摯な声と視線は否を許さない激しさを内包している。
「ニアは、その為に、俺たちと来たんだよ。
 …戦うことだって覚悟してる」
ニアが芯の強い娘だと言うことならカミナも理解していた。自分を捨てた父親と話し合い、真実を明るみに出したいという思いは大グレン団の中でも一番強いだろう。他のメンバーはどうしてもそういった背景よりも、理不尽な支配を止めさせ地上で暮らす道を得ることに執着している。
「俺、解ったんだ。
 言葉は、伝えるべき時に使わなければ死んでしまう。
 だから今この時を置いて、ニアが今抱えている言葉を語るべき時は無い」
少しだけシモンが睫毛を揺らせた。彼女の中にも言えなかった言葉があったのだろう。実感のこもる言葉に、カミナは頷いて見せるしかなかった。カミナ自身螺旋王という相手への興味もあった。どうしてこんな理不尽を繰り返すのか、そんな心境に至るまでになにがあったのか。ただひたすら螺旋王の意志の元にと戦い続ける獣人を見る内、人を腐らせる原因を知りたいと感じるようになっていた。
「…請け負ったぜ、シモン」
紅い布に飾られた細い腕をバシリと叩く。シモンとカミナの考えは重ならなくなってきていたかもしれないが、目指す場所は同じだという安心感がカミナにそうさせた。
ニ、と自信にまみれた笑顔を見せつけられてシモンもやっと顔を綻ばせる。
「兄貴とニアのための道は、俺が作る」
射し込む陽光に緑の光粉を零れさせながらシモンは深く頷いた。
「ああ」
任せたぜ、兄弟…自然にそれぞれの利き手を打ち鳴らす。
小気味よさに満足を憶えるカミナの前で、シモンは打ったばかりの手を空へ向けて差し伸べた。
「兄貴、忘れないで」
ぐ、っと天井を指し示す人差し指に意志が宿る。大グレン団一のガンメン乗りは、決意を籠めて空を指さした。
「俺は兄貴のドリルだから!」
真剣至極の双眸が、カミナのそれと視線を絡ませふっと緩まる。奥底にある柔らかな感情を友誼と敢えて受け取って、カミナも強く頷いてみせた。
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