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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.05.03,Fri
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2008.09.11,Thu
やっぱりどうも今のままだとオマケ群が見辛いんじゃないか?ということでインデックスを作ってみました。
無論オマケの場合は更新に含みません。
テキトーに増える予定です。

なんか管理ページと実際の文章数が合ってないんでどっか不都合が生まれてる気がするんですが、ちょっとあまりにも眠いので一応コレでいいことにしてみます(管理しろよ)。

で、これのオマケはめのこシリーズで大グレン団の描写が陰湿になってしまう為没にした部分です。






「…っなに考えてるんですか!やめて下さい!」
叫びはどうにか届いたようだった。
高い位置から喚いたロシウはその勢いのまま金属の細い階段を下りる。肩に掛けた作業道具さえ投げ捨てるような勇ましさに、怒鳴りつけられた男達は幾分怯んだようだった。
その人だかりの奥に俯いた藍色の髪を認めてロシウは足を踏みならす。上部の通路から覗いた時に掴み上げられていた襟首は一応解放されていた。
ここで何が行われていたのかを察し、背中にシモンを庇った少女の鋭利な視線が周囲を睨め付ける。切り込まれ、陰湿な空気は僅かに払われた。それでもロシウの怒りは収まらない。
集まった男達は、ここでシモンに打擲を加えようとしていたのだ。制裁という名の身勝手な暴力を。
いくら大グレン団の人員が増えたとはいえ広い艦内を満たす程に膨れ上がった訳ではない。人目の死角を見出すことは容易だ。
これが初めてではないことを察知してますます理知的な少女の肺腑が煮える。上手く立ち回ればもっと早く現場を押さえられたはずだった。
少し前、頬に痣をつけたシモンをカミナが見とがめたことがある。その時彼女はラガンの操縦桿にぶつけたのだと主張して譲らず、一応場は収まった。
傷の元など今となっては明白だ。そして男達はカミナの怒りに反省を見せた訳でもシモンの疵に溜飲を下げたわけでも無い。
ロシウが止めなければおそらくサラシに隠された腹が打たれていたことだろう。傷をつけるならば隠せば見えない場所がいい、と。あまりの卑劣さに今すぐ男達をダイガンから放り出したい気持ちになってロシウは爪が肌を抉る程拳を握った。
男達はシモンに戦場で先を行かれることが不快であり、そして敵を奪われ手柄を立てられるのにも憤るのだろう。
確かに彼等が言うとおり、シモンは集団連携を無視した動きをとりがちだ。ダイグレンを手に入れてから彼女は常に誰よりも前に立ちたがる。
しかしそれは功名心などでなかった。彼女は誰よりも大グレン団を思い、守ろうとしていることをロシウは知っている。その思いを尊敬し、迷いの無さに憧憬すら抱いていた。ロシウにとって地上を解放するための道行は、故郷の閉塞を救うための希望でもある。彼女にとってシモンはある種英雄ですらあったのだ。
大グレン団の地上解放という大儀すら汚すような男達の行為が不愉快で、ロシウはすぐには言葉が出ない。その間にも数名が少女を懐柔しようとし、態度に迷った者の中にはとっとと退散する者も出てきた。元から道義のない荒くれ者たちなのだ。憂さ晴らしが出来なければ用は無いとばかりの態度にロシウは大きく息を吐き、行ってくださいとだけ告げて腕を払って見せた。
蟠る空気にいい加減辟易していたのだろう、連中はあっさりと姿を消していく。憎々しげにその様子を見、それからロシウは急いで振り返った。
そしてその先に、まるで余計なことをとでも言いたげな表情を見つけてびくりと身体が震える。シモンは隈に縁取られた澱んだ目でロシウを一瞥し、また視線を床へと落とした。
何を言えばいいのかすぐには解らずロシウの口元が震える。それでも彼女はどうにか言葉を吐き出した。
「シモンさん、手当を」
コンテナの影にどこか白々しく声が響く。頬っておいてくれとまた灰色の瞳が語り、ロシウは伸ばそうとしていた手を硬直させた。
だいたい、傷が見えないというのに何処に触れるつもりで居たのかも解らずロシウの思考はから回る。シモンに触れ、何かをしなければと考えていたのは間違いないはずなのにすぐさま自信は霧散した。
こんな思惟の空転がもう幾度繰り返されたのかロシウには判らない。
最初に触れたいと思ったのはいつだっただろう。
出会った頃はは言葉を交わすだけで緊張した。相手もそうだったと教えられて少しだけ距離を詰めた。その次に相手が自分に手を差し延べてくれて、恐る恐る指を握った。
そうして最後に、優しい指先は滑り落ちたのだ。
近づいた距離は離れ声は届かなくなり、柔らかな笑みも穏やかな言葉も失われて。
今や端から崩れ零れ落ちるシモン自身という欠片をを掬い取り抱きしめたかった。
出来ることならそれらを彼女に返してあげたい。出会った頃のように、グレン団として旅をしていた頃のように、控えめで優しい笑顔を取り戻してくれれば。
願いは強く、しかしこれだけ傍にありながら二人の断絶は深かった。
自分の呼吸音すら緊張しながらロシウは生唾を飲み下す。開いた唇は乾き、まるで発声が憶えたての技術のようにすら感じられた。
「…シモンさん…」
凍えた空気をそのままに返されようとしていた踵が止まる。まだ、声は届く距離なのだと信じてロシウは喉を振るわせた。
「…シモンさん、僕、強くなります。勉強もします。あなたの支えになれるくらいの人間になります。なりたいんです」
手前勝手な決意を聞かせる恥ずかしさに彼女は強く瞼を閉じる。頬が固まり情けなく声は揺らいだ。それでも溢れる想いが止まらない。
「あなたがカミナさんの傍に居るように、僕がシモンさんの傍に居ます」
蚊の鳴くような宣言に、シモンが動揺を示したことを目蓋を結んだロシウは知らなかった。自分の思いだけで精一杯で、こんな自分がシモンを支えようなどというのはおこがましいとしか思えない。それでも。
「だから、全てを投げ出したりしないでください」
全力の願いを言い切ったロシウはへたり込みそうになる。シモンからの返事はなかった。
足下まで下がっていた血が一気に頭にまで昇ってきて真っ赤になり、ふらつきそうになる。そのロシウを見つめ、シモンはうっすらと唇を蠢かせ、しかし喉が音を乗せることはなかった。
「     」
本人にすら聞こえない言葉を残し、今度こそシモンはその場から去っていく。やっとロシウがシモンへ視線を向けることが出来たのは、彼女が背に負ったグレン団のマークが廊下の向こうへと消えていく様だけだった。
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