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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2007.12.31,Mon

色々と咀嚼できぬままあんまり出来の良くない感じに。
なぜこんなコンビの話になったんだろうかと言うと、ギミーに対応する人を上手く見いだせなかったんじゃなかろうかと。
ロン姐さんは見守りそうだしなと。







あれは英雄の時代の終りだった。
後年彼はそんな風に考えるようになるのだが、少なくとも今のギミーの心は簡単に結論を出せるような状態ではなかった。
様々なものが容赦なく奪われ、失われ、去りゆき、取り残された少年は戸惑うしかない。
かといって既に彼は涙を流して地団駄を踏めるほど幼くはなかった。彼とその双子の妹の兄代わりですら、昔のように自分達を抱きしめて慰めるようなことをしないくらいには。
ギミーにも解っている。全てを受け入れるしかないことは目に見えていた。
死んだ者は戻らないし時間は逆巻きにはならない、代償に手に入れたものを手放すことは積み重ねてきた時を否定することと同義でもある。
けれどまだギミーは子供で、納得出来ないことも山ほどあって、なのに満ち足りた顔の大人達にそれを問うことも出来なかった。ギミーには理解出来ない理屈で彼等に言いくるめられてしまうことは目に見えていたから。
或いはそれは問いかけても意味のないことなのだろう。誰もが自分で答えを見つけなければならない。
それを今すぐに得られるとは思えず、ギミーは貰ったコアドリルを弄びながら人気のない格納庫に籠っていた。
ここには居ない元の持ち主が握った時には鈍い光を発した円錐も今は大人しい。
これはあの人以外には誰一人として光を灯すことなどできなかった代物だった。
貰ったところでどうしろというのか。思い出として抱えていけとでも?
…解ってはいる。これはあの人なりのケジメだったのだ。
きっとずっと、高い塔の上に居座ることに違和感を感じていたのだろう。口には出さずとも自分よりロシウの方が向いた役目だと己の役職について感じていたことをギミーも知っていた。だからこそムガンに真っ先に立ち向かいたかったのだ。それが、彼が果たせる一番の役割だったから。
敵を失い、愛する人とも別れた今、彼にとってラガンもコアドリルも総司令の椅子も過ぎたものではある。彼が彼として生きていくためにもうそれらは必要のないものだった。
次の世代としてそれを託された。信頼され、選ばれた。
それは事実だったがギミーがそれを素直に受け取ることは難しい。
息を吐き、コアドリルを見つめる。応えの光は無い。
疲弊した心は動かすのも億劫に腕を持ち上げ、コンソールに錐をはめ込んだ。結果が得られるとは思っていない。手にしているのが嫌になっただけだ。
ねじ込むことも出来ずに指を放してまた息を吐く。その、長い溜息の裾にざわめきが重なった。
「!?」
ざらついた音の連なりは次第に呼吸音に似る。それがラガンの内部スピーカーから響くのだと見当をつけた瞬間にハッチが閉まった。心臓が跳ね上がる。
幽霊?
声にすぐ連想出来たのはそんな幼子じみた存在だった。
閉じ込められたことにも反応出来ずにいるうちに音は法則性を持ち声としての態を成す。誰かが喋っているのだと気付き澄ませた耳に幾つかの言葉が雪崩れ込んだ。
幾つかの知らない単語が連続する。それがおそらく軍隊の識別番号なのだろうと見当がつけられたのは頭に着いた所属や云々隊という言葉と、グラパール隊に勤めていた経験のお陰だった。その最後に、機籍カテドラルテラと声が告げる。
「カテドラルテラ?」
思わずギミーは捉えた言葉尻を繰り返した。
『そう、カテドラルテラ』
知っているのだと語調から受け取って声だけの存在が嬉しそうに繰り返す。よもや声と対話出来るとは思っていなかったギミーの心臓が今度は口から零れそうになった。少年の動揺を知らずにどこか優しげな声が尋ねる。
『君は?』
「ギミー」
思わず答えてから頬を引きつらせたギミーに、相手が丁寧な口調で俺はこのラガンのパイロットです、と告げた。
「ラガンの?」
ギミーにとってそれはたった一人を示す。だが声はその男とは異なる音を孕んでいた。得体の知れない存在に身の毛をよだたせる。しかし相手は竦むギミーの姿が見えていないのか極おっとりと問いを重ねた。
『…ロージェノムは、どこに?』
カテドラルテラに続いて既知の単語を与えられ、ギミーは眉を寄せる。なぜその男の名を?
疑問は素直に口に出た。今度は逆に声が訝しさを含み低くなる。
『…アンチスパイラルとの戦線はどうなったんだい?』
静かな声音に思い出したのは仲間が散っていく爆音と、対照的に静かに溶けていく光の粉だった。息を呑みすぐには答えられないギミーを声は大人しく待ってみせる。
「倒したよ」
それだけ言うのが精一杯で、零れそうになる涙を礼服の袖で拭った。
『そうなのか!?』
対照的に声は喜色に染まり狭いコクピットを満たす。しかしその喜びが続いたのはギミーが言葉を続けるまでだった。
「でも、ロージェノム達が戦ってた時代からは、千年経ったって」
伝聞で聴いた、普通ならば信じることも難しい事実をギミーは言葉にしながら噛み締める。そう、あの人が全てを終わらせるまでに本当は千年も掛かったのだ。自分達の代だけで解決した問題ではない。長い長い時間の末端として受け継がされたコアドリルの端を撫でた指が痺れるような感覚を覚えた。
声もギミーも沈黙を下す。最後に、声が気の抜けた囁きを落とした。
『…そうか。
 もう、そんなに経っているのか…』
安堵を滲ませるその音の下に幽かな悲しみを受け取ってギミーは背を正す。唇は勝手に動いていた。
「一緒だった。一緒に戦ったよ、ロージェノムと」
幼い頃、敵として見えた男の記憶はギミーにとって縁遠い。彼の中に残る印象は首だけになりながらも尚自分達に助力した男のシニカルな笑顔と、最後の戦いで見た戦士としての姿だった。あの男ももういない。皆、自分達を置いて行ってしまった。
孤独感に襲われたギミーとやはり対照的に、穏やかな声音が呟く。
『そっか。…そうなんだね』
懐かしさを含む声は一度言葉を切り、逡巡の間を置いてから続けた。
『なら良かった。あの人は負けなかったんだ』
勝利の報せを受けたときよりも粛とした音は、先程と違い喜びだけに満ちている。それはガンメン乗り、戦士としてのそれよりも更に個人的感情までもを従えているように聞こえた。
「…あんたと、ロージェノムって…」
湧いた興味を隠さず尋ねる。声は自分達は同志だと誇らしげに言った。
「アンチスパイラルと、戦っていた?」
『そう』
千年前の戦士。ラガンの乗り手とはそう言う意味だったのだ。今更確認してギミーは言葉を失う。彼もまた自分と同じように置いて行かれた。ロージェノムはどこに、と訊いた彼は勿論あの勇壮な男が失われたことを知らない。突きつけるべきなのか迷い、けれど胸に秘しておくには辛くて結局ギミーは口を開いた。
「ロージェノムは、もう」
『良いんだ』
全てを言わないうちに優しい声がギミーの回答を断る。全て承知していると言わんばかりのその音声に光の粒子となった人を思い出して少年の視界が歪む。
『俺は一緒だった。あの人とずっと一緒だった。』
ギミーに言っているのか自分に言い聞かせているのか口調は判然としなかった。しかし科白に嘘はないと嫌が応にも伝わる。
何故そんな風に言えてしまうのかやはりギミーは解らなかった。少年は会えなくなった人にそれでも会いたいと願う心を諦めきれない。無言になった彼をどう解釈したのか労る声が沈黙を塗り変えた。
『君は、新しいラガンのパイロットかな?』
そうだとも違うとも言い切れず曖昧な音が喉から落ちる。それを肯定として受け取った声は、じゃあ登録変更しないとねと宥めるようにギミーへ告げた。
「登録?」
『そう。ラガンは特殊機体だから、固有の螺旋力を登録しないと動かせない仕様なんだ』
説明する口調は落ち着き払って、兄代わりを思い出させる。そのせいか数秒待たされたギミーは言われるがままにコアドリルをねじ込んでいた。填り込む手応えと共にラガンのコンソールが輝く。暗闇になれていた眼が光に耐えきれず瞬いた。
白か緑か判別しずらい奔流が落ち着くと声がこれでおしまい、と呟く。あまりに呆気ない交替が信じられず絶句したギミーにそれじゃあもう行くねと声が降りかかった。
「え」
どういう意味なのか尋ね返そうとしてギミーは相手が千年前の戦士であることに思い至る。彼もまた去っていくのだと知り思わず言葉が口を突いた。
「待ってよ」
それは、誰もが聞き届けてくれなかったギミーの願いだった。置いていかないで、ここにいて。自分の前を歩く背中が恋しくて引き留めた少年を声が窘めた。
『間違っちゃいけない。俺はもう、とっくの昔に死んだ人間なんだ。ここにいるのは残滓にも満たない欠片でしかない』
やはり声も、逝った人々と同じことをギミーに課す。軽い失望を憶えたコアドリルの新たな主を厳しい、しかし穏やかな声が諭した。
『人は誰だっていつかは行かなければ』
「でも」
まだ良いじゃないかと駄々を捏ねたがる少年を、声は辛抱強く告諭する。どうやって命を繋ぎ止めるのかと聞きただした声にギミーは螺旋力でと囁いた。
『螺旋力は、意志の力。命すら生み出す力だけれど、結局は使う者の心の範疇以外にはなれない』
留められた命は歪み、本人では居られないのだと教える言葉を認めたくない。けれどギミーは疾うに知っていた。死んだ者は戻らないことも。ニアが何故自分が無理に生き続けることを拒んだのかも。
鼻を啜る少年に、厳かに声が注がれる。
『…死は、終りじゃないよ。続く命がある限り』
柔らかい声音が心に射し込まれてギミーはぼろりと涙を零した。顔を押え泣きじゃくる子供の頑是無さを声は、古い時代に生きていた男は受容する。それでいいのだと。泣いて足掻いて苦しんでそれでも最後に前を向くのならそれでいいのだと。誰もが暗に言いながらも明確には伝えなかったことを姿無き男はそれ故に明白に示した。
「わかってるんだ」
『うん』
そしてそうされれば嫌が応にもギミーは頷かざるを得ない。真意を無視して嘆けるのは知らないふりが出来る間だけだ。
「正しいのは、わかってる」
鼻声で認めたギミーを肯定して、納得するのはいつかでいいよと声は少年の涙を受け止める。声だけの存在は少年を撫でる手も抱き留める腕も無く、それでも彼が泣きやむ迄は傍にいた。
それから彼は申し訳程度にラガンの機能を説明し、やはり最後に別れを口にする。
『さよなら、ギミー。元気で』
君に会えて良かったと嬉しそうな声が最後だった。沈黙さえも表わしていたスピーカーから存在が失われる。
名残さえ惜しまない爽やかな声。恐れがなかったのは、たぶん、今からロージェノムに会いに行くからなのだろうとぼんやりギミーは考えた。そんな風にいつかは自分もこの世界から去るのかを想い、最後に見たシモンの背中を思う。
「…さようなら」
目を伏せ、ギミーは彼が受け継いだコアドリルを引き抜いた。
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