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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.05.03,Fri
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2008.09.15,Mon
長さ的にはオマケレベルですが(以下略)。
カミナの心情を描写しようとしたのですがやはり難しいです。
ちょっと書き手の迷走が出てしまっているので読みづらいかと思います。
回想現状入り乱れ、です。






会議の顛末はいつも通りに過ぎるものだった。
遅々として進まぬ人口調査にジョーガンとバリンボーがロシウに叱責され、それを取りなそうとした面々もまたそれぞれの省庁の状態を糾弾される。空気が悪くなってきたところでカミナが全員を宥め、最後にシモンが新しい情報を持ち出す、といったところだ。
特別だったのはシモンが示したものだろう。科学省と繋いでリーロンのアナウンスを受けながら、首脳陣は月へ打ち上げられた探査艇がを見送った。自分たちが経てきた時間をまざまざ見せつけられて息を零した者も少なくない。
その中で、思わず目を輝かせたカミナにシモンが耐えきれないというようにくすりと笑い、慌てて表情を固めたのを赤い眼は見逃さなかった。そんなシモンの表情を久々に見た、という感慨がどこか空しい。
人見知りこそするものの、あれでシモンは心を開いた相手には喜怒哀楽をはっきり示す少女だった。ジーハ村に居た頃、何度も無謀な計画に呆れ果てられたことをカミナは憶えている。あれは駄目、これは無理。特に地上への道を掘ろうという話になると、地盤の強度だの何だのを持ち出して必ず駄目出ししてきた。それに救われたことも数多い。
そう思えば、今こうして総司令補佐官としてカミナよりよほど上手く采配を振るうシモンは昔とそう変わらないと言えるのかも知れなかった。
女ってのは解らねえもんだな。
会議を解散させ、足早にロシウと共に去っていくシモンの後ろ姿を見つめながらカミナは思う。七年の月日は間違いなくシモンを子供から脱却させていた。今や彼女はカミナがあれほど願った、お天道様の下で平和に暮らさせてやりたい子供たち、という年齢の枠から外れている。自分の頭で考え、自分の脚で前へ進んでいるのだ。
いや、昔からシモンは己で道を決めて歩いていける娘だった。だから今感じている感傷は、自分が置いてけぼりを食らっている気分を味わっているのに過ぎないのだろうとカミナはテーブルの上に残された資料を見るとも無しにまくりながら考える。
総司令の名を与えられ、やっていることは日々運び込まれてくる紙に名前を書くだけだ。これで本当に目指しているものに辿り着けるのか、いやそもそも自分が何を目指しているのか解らなくなっていることに思い至ってカミナは苦虫を噛み潰した顔になる。
「…おうカミナ、聞いてんのか?」
やる気のない仕草をしていた空色の髪の男は、やっと呼ばれていることに気づいて顔を上げた。昔なじみ達がさっきの会議にぶつくさ言いながら集まっている。そう言えば昼飯の時間かと気づいてカミナも腰を上げた。
気分転換に外で食おう、と言い出したのはアイラックで、男ばかり色気もなくぞろぞろと行政区を歩く。気づけば街路樹には蕾がつき始め、咲き誇るのもそう遠くはない季節になっていた。あのてっぺんの部屋は空調が効きすぎて、しかも地上が遠すぎて、細かな変化を見逃すもんだとカミナは鼻を鳴らす。
…ヨーコと別れたのも、こんな季節だった。
もう四年にもなるだろうか、カミナシティが一応形になりカミナが総司令になって、ヨーコは次の季節から始める子供達の教育施設に勤めることが決まっていた。
三年付き合った割には、さっぱりした別れだったように思う。恋人という意味で女と付き合ったのは実際の処ヨーコが初めてだったから、それが本当なのかは怪しいところだが。
「昔あんたが言ったみたいにさ」
夕日色の髪を風になびかせ、きらきらした金色の瞳でカミナをまっすぐに見つめながらヨーコは告げた。
「このお天道様の下で生まれた子供達のこと、見守っていたいの。
 地下を知らない、明るい世界で育った子たちのこと」
その頃既に都市は十万以上の人間を抱え、彼等の生活はカミナの双肩に掛かっていた。子供達だけを守るわけにはいかなくなった男に、ヨーコは底抜けに明るい笑顔で言ったのだ。
「だから、ここでお別れだね」
ああ、そうだな─────カミナも自然に頷いていた。カミナとヨーコの恋は同じ夢を見たことに始まり、そしてその夢は叶ってしまった。もう同じ道を歩むことはない。
それがはっきりしてしまったのなら、ぐだぐだと付き合い続けるのはお互いの脚を引っ張ることになる筈だ。
あの時、あんな風に別れを切り出したヨーコの勘の良さは、やはり女の謎の一つだろう。
「負けんなよ!」
「そっちこそ!」
ぱん、と手を打ち鳴らし二人の恋はそれで終わった。ヨーコは新設された校舎へ向かって歩き出し、カミナは議事堂へと向かう。背を向けることに二人揃って迷いはなかった。
今その議事堂から離れ食堂へと歩きながら思案するカミナの肩を荒っぽくキタンが叩く。
「浮かねえ面してんなあ、総司令様がよ」
ニヤリと笑った顔にはついさっきロシウにやりこめられた怒りなど欠片も無かった。他の面々が少しは不機嫌を残しているというのに、キタンだけは当たり前のようにさっぱりしている。
昼時の食堂は混雑して、ゾーシィは待ってる間煙草を吸うと外へ出て行った。キッドとアイラックは馬鹿話でもするつもりかそれに続き、体の大きな双子もついでに外で待つことにしたらしい。律儀に人数を待機表に書き入れたダヤッカへ、便所行ってくらぁとキタンは片手を挙げた。もう片方の腕はカミナの肩に回り嫌でも引き摺り込まれる。
「連れションかよ」
嫌そうに文句を垂れたカミナに、キタンは口端を上げて笑った。
「なぁんか考え込んでるからよ、このキタン様が話ィ聞いてやろうじゃねえのと思ってな」
言いつつやはり便所は便所、社会の窓を開けながらそんなことを言う。気安い口調に肩を竦めて嫌が応にも力が抜けたカミナもそれに習った。
「…シモンのこと考えてたんだよ」
並んで生理欲求を満たし、水を跳ねさせて手を洗いながらカミナは白状する。
「どうもここんとこ、調子が合わねえ気がしてよ」
それが我が儘な感情であることを知りながら口にした言葉にキタンが頷いた。
「バッカお前ェ、妹なんてのぁな、兄ちゃんなんざ置いてけぼりよ。
 いっつのまにかガキから女の子になって、女になっちまいやがる」
カミナの言葉を肯定し、手を適当にズボンで拭きながら三人の妹を育てた兄は口を尖らせる。
「キヨウがよう、ダヤッカと結婚するって言った時…あいつ、"したい"じゃなくて"する"って言ったんだぜ?
 俺がどう止めようったって聞きゃしねえわな」
それでもあいつはいい男捕まえたと思ったがよ。言葉を切ったキタンはまさかダヤッカまで手洗いに来てやしないかと周囲を窺う。幸い、店内の混みように反して男子トイレは空いていた。
「シモンの奴ももう21だろ?
 いつまでも兄貴兄貴って追ってきてくれやしねえよ。仕方ねえのさ」
己に重ね合わせたのか少し寂しげに笑いながらキタンはまたカミナの肩を叩く。金髪の友人の言葉はそれまでカミナが考えていたことを殆ど肯定していた。
だが、だからこそカミナはそこに反駁を見いだす。理屈は解る、だが納得できない、と。
釈然としないものを抱えたカミナは、鏡に映る自分の不満顔を指で弾いた。そこにアイラックが席が出来たと呼びにやって来る。
「おう、解った」
言われてキタンはカミナに背を向け、先に手洗いから出て行った。
…そういやここんところ、総司令ばっかでシモンの奴に兄貴って呼ばれてねえなあ。
何度問答になったか解らないことをまた思い返し、わしゃわしゃと空色の髪を掻きながらカミナはキタン達に続いた。
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