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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.11.24,Sun
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2008.09.14,Sun
話の長さ的にはオマケでいいかなというレベルなのですが、ちょっと全体に絡んでくるかもしれないのでこちらに並べることにしました。
ニアニア視点でシモンです。






猫背のシモンがダイニングに姿を現すや否や、朝からすっきりとした挨拶がかかる。
「おはようございます、シモン!」
手にしていたティーカップを置いてふわりと微笑むニアにシモンも疲労の残る笑顔を浮かべた。毎日の激務に足りない睡眠時間、どうしても元気溌剌とはいかない。
血圧も上がらないのだろう、のそりと椅子に座ったシモンへココ爺がエスプレッソを差し出した。ニアは紅茶党だが、シモンはコーヒー、それもとびっきり濃いエスプレッソが大好物だ。朝から手間暇を惜しまないココ爺へ礼を告げながらシモンは薫り高い飲み物を口にする。
「シモン、なんだか顔色が悪いみたい」
その仕草を見守りながら、ニアはふわんと朝日色の髪を揺らしてテーブルに手をついた。多少お行儀悪くシモンの顔を覗き込み頬に手を添え小首を傾げ、花散る瞳が心配そうに瞬く。
「またお仕事が大変なのですか?
 …ううん、それとはちょっと違います」
シモンや、今日この家には帰ってこられなかったロシウが忙しいのはニアも重々承知だ。なにせその多忙を極める生活のあまり自宅を管理しきれなくなり、遂にシモンとロシウ(と彼女の家族であるギミーとダリー)はニアと共に暮らすようになったのだから。そんな有様なので、この家が生活空間として万全を期しているのはココ爺の手腕の賜物だ。
ニア自身も七年前、大グレン団が獣人と上手くやっていくために始めたプリンセス・ニア・キャンペーンの為に家を空けることも多い。螺旋王直系の王女の存在により獣人との争いは極力避けられ、企画の成果は大きかった。が、プリンセス・ニア・キャンペーンは当初予想外だった結果も生んでいる。この七年で急速にメディアが発達し、それを利用して獣人との共存を促した結果、テレビやラジオによく登場するニアがアイドル化することとなったのだ。その人気は地上解放の英雄カミナと並ぶ、とも言われている。カミナが政府の要人という側面を持つ分、純粋な人気ではニアの方が上という説もあった。
と言うわけでニアも他の同居人達同様繁劇な毎日を送っている。しかしそれでも彼女は今朝のシモンが見せた疲れの中に、日々のそれとは違うものを見いだした。
口元を人差し指で押さえ考え込んだ親友を見つめ、エスプレッソを飲み込んだシモンが唇を苦く染める。勿論、その理由は飲み物が理由ではなかった。
「…ニアには敵わないなあ」
流し込んだ液体の熱を吐き出すように深呼吸して藍色の睫毛がぱさりと音を立てる。昔からおっとりして見えて酷く鋭い友人に隠し立ては無理と判断して、シモンは静かな声で応じた。
「ちょっと夢見が悪かったんだ」
肩を竦め、ココ爺が差し出してくれたパンを受け取り土木作業より書類仕事に馴染んできた指がバターナイフへ伸びる。わざと別の作業を続けることで落ち着こうとしているのだと気づいたニアはそっと容器を相手の方へ押し出した。
「いつも通り、議事堂の廊下を歩いてさ…それがやけに長いんだけど…それで、総司令室のインターフォンを押す。総司令、次の案件を持って参りました、なんて言いながら」
薄くバターを塗り伸ばし、俯く代わりに視線をパンへと落としたシモンは何気ない風にどこか現実的すぎる夢を口にする。
「ドアが開いて、脚を踏み入れて、それで…そこで、誰もいないって気づくんだ」
くるりとバターナイフを回した指が食器の上に落ち着いた。シモンは表情を緩めていたが、逆にニアはぎゅっと自分の膝を握りしめる。
「行ってくるぜ、兄弟!
 そんな言葉が書かれた紙が…辞表、がテーブルの上にぽつんと残ってる。
 夢だからさ、脈絡もなくて、振り向いたらあの紅いマントがドアから出て行くとこで…」
のたのたと、しかしところどころ妙に早口に夢の内容が重なった。
それまで声を紡いでいた喉が鳴り、シモンは手にしていたパンを口にする。伏せられた灰色の瞳はテーブルの上に並んだ食事ではなくどこか遠くを見ているような感触にニアの胸がきゅっと縮まった。
ニアはシモンがカミナのことがとても大好きなのを知っている。ニアが二人と出会うずっと前からそれは変わらないことなのだ。そのシモンがカミナと離ればなれになってしまう夢をみるのはどんなにか辛いだろう。
思わず潤んでしまった瞳が瞬きして、それから顔にぐっと力を込めたニアはパンを食べ終わったシモンの手を取った。急な行動に目を丸くするシモンに鼻面が付く程顔を近づけてニアは彼女なりの夢判断を告げる。
「でも、それは、兄貴さんがシモンのことをとーっても信頼している証、なのではないでしょうか?」
そう。カミナはシモンのことを強く信じている。総司令というのは大事なお仕事だ。それを任せてふいに旅に出てしまえるくらい、カミナはシモンの能力を買っている。そういうことなのだろうと納得したニアは満面の笑みを浮かべた。
「…そうかな?」
「そうです!」
自信ありげなニアは困ったように眉を寄せるシモンへ胸を張る。
「シモンはいつでもすごい人ですから!」
自分自身もシモンのことを信じ切っているニアは、見つけた答えに微塵も疑念を抱かなかった。今までニアも何度シモンに助けられたか知れない。
カミナから受けている信用や絆が、溜まっている疲れや仕事への不安からマイナスの形で現れたのだろうと納得して、ニアはココ爺が運んできてくれた食事を機嫌良くシモンの皿へと取り分けた。
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