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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.11.24,Sun
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2009.04.04,Sat
なんか似たような話が続きますねショタニキは…。
今回はキタン兄ちゃんですが、あんまりキタンの出番はないかな?
あと日常話を一本とロシウとの邂逅話を書けば一応ネタバラし的な意味ではショタニキも一段落なのですが。
その後ヴィラルどんの出番があって、「俺達の戦いはこれからだ!」エンドになったら怒られますかね…!






窓から射し込む夕日がカミナの瞳を一層紅く染め上げる。欠伸をかましながらモップの柄に顎をつき、その眼がトイレを見回した。一応、掃除できた…ように、見える。きっと。
今日も今日とて上級生まで巻き込んでケンカをして、その罰が職員用手洗いの清掃だった。毎度お馴染みのため息をつくヨーコ先生の仕草が頭を掠める。ただ、彼女の心労を減らそうという努力をする気がこの少年にはさらさらなかった。
「いいよな…いいだろ、たぶん」
トイレットペーパーも補充したし、床も拭いてある。嫌々ながら便器だって擦った。確認用のシートにチェックをつけてバケツとモップを用具入れに叩き込む。
職員室に出頭すると丁度赤毛の先生は留守だった。此幸いに担任の机にシートを載せてさっさと退散する。面倒くさがりながらやったせいで下校時刻は過ぎていた。みなさんおうちに帰りましょう、という呑気な放送が流れてくるのも近い。今日はシュリたちと遊ぶ暇が無いだろう事に舌打ちしながらカミナは鞄の留め具を鳴らしながら走った。
宵闇を連れてくるとは思えないほど明るい西日、がやがやとさんざめく人の声。
それらがもう"見慣れたもの"になってしまっている現実にカミナは歯ぎしりする。
赤い空なら知っていた。
真っ黒な夜を切り裂いて走った閃光が引き起こした爆発。戦争とはいえない一方的な殺戮の始まりの日だ。瓦礫の山と化した家屋の中、目の前で母はぺしゃんこにつぶされてへたり込んだカミナの膝に血溜まりが触れていた。なにがなんだか解らず見上げた空、天井さえ無くなった向こう側で初めて見る何かが蠢いていたのを憶えている。
ぼんやりと燃え上がる街を眺めていたカミナを掬い上げたのは、爆炎よりなお赤いガンメンだった。開いたハッチの中から伸びた腕がカミナを抱きしめ、大丈夫だからと囁いた。
…あの、温かさは忘れない。
いつの間にか足を止め見下ろしていた手を握る。日の入りを振り払うように瞼を閉じたカミナはシモンの記憶を反芻した。忘れてはいけない、今に飲まれてはいけない。己の甘さごと肺腑から息を絞り出す。生暖かい風に揺れる髪と一緒に赤い布がふわりと空気を孕んだ。
記憶の海に沈み込んだカミナは、自分のすぐ隣に古ぼけたガンバイクが停まったのにも気づかない。少年の様子に口端を上げた金髪の男は、見慣れ過ぎて目に痛い上着の肩を叩いた。
「よぉ、カミナ」
ぱちぱちと瞬きをしたカミナが車道へ視線を向ける。金色を逆立て、お役所勤務とは思えないだらしの無さでネクタイを緩めた男がこちらを見ていた。
「キタン」
呼ばれ、法務局長はさんぐらい付けろよと喚く。ただ、本気ではないのかキタンはすぐに怒りの表情を治めてガンバイクの荷台を親指で示した。
「…ま、いい。取り敢えず乗りな」
二人乗り仕様の後ろは確かに空席になっている。だが意図の読めないカミナは不審げにキタンを見つめて黙り込んだ。それにニヤニヤと笑いを浮かべたキタンが少年の不信を無視して青い服の腕を引き、叩きつけるように傍に寄らせる。強制もいいところの誘いに、カミナは渋々ガンバイクに体を預けた。
ぐんぐんとスピードを上げていくガンバイクに併せるように空も藍色の幕が掛かっていく。どこかの一瞬、それがシモンの髪と同じ色だったような気がしたがすぐに移り変わってしまっていた。キタンは学校から離れシティの中心からも少し外れた場所へと向かう。運転には迷いが無く、閉鎖されたままの中央公園を過ぎて少ししたところで停まった。
進入禁止のロープと三角ポッドに囲まれた施設。なんだこれ、と首を傾げているカミナを置いてキタンは当たり前のようにロープをくぐっていく。役職的にいいのかどうか、自分を棚に上げて呆れ返っているカミナをキタンが手招きした。
古ぼけた小さなドアのノブに鍵を差しこんで捻るとギィッと音が立つ。放置された場所に見えたが、意外にも二人が足を踏み込むとそれを感知して天井のライトが点灯した。
「ここは元々、記念博物館って呼ばれてたとこでな。
 あれだ、大グレン団がロージェノムをぶっとばした時のガンメンやらが置いてあんだ」
大グレン団。今となっては禁忌ともなっている言葉を誇らしげに口にしてキタンはカミナを導く。薄暗く狭い通路に二人分の呼吸音と足音がやたらと響いた。
「今となっちゃあ単なる倉庫だけどな。いーい塩梅の、よぅ」
くつくつと楽しげな笑いを含んだ声にカミナは眉を寄せる。大グレン団の資料館ということは、アンチスパイラルにより閉鎖された施設のひとつということなのだろう。こんな場所に何故自分が連れてこられたのかが解らなかった。
狭い道をしばらく進み、大きなホールに出る。巨大な影が幾つも立ち並ぶ威容にびくりと無意識に小さな肩が揺れた。それを知ってか知らずか、キタンが手近のスイッチに手を伸ばす。ばちん、と間抜けな音を立てて部屋の一部に灯りがついた。
照らし出された一機のガンメンにキタンがのっそりと近づいていく。小走りに追いかけるカミナの目の端に、いつかどこかで見たことのあるガンメンたちが映った。そんなものが置いてある場所に電気が通っている異常にまでは少年は頭が回らない。
こつん、とキタンは裏拳で赤いガンメンの足下を叩く。その機体がなんなのかを理解して、カミナは息を詰まらせた。
 ───グレン。
本物のグレンラガンは封印処置が施されたというから、これはレプリカだろう。それでも姿だけでカミナの琴線を掻き鳴らすには充分だった。これが大グレン団の象徴であり、そして少年と同じ名を持つ男が乗りこなしたガンメン。膝が震えたのがなんのせいなのかまではカミナには解らなかった。
「シミュレーター、て奴だ」
ニ、と笑うキタンがグレンを示す。男の胸中に何が去来しているのかなど窺い知るのは無理な相談だ。だが少なくとも彼は少年へと悪戯小僧の顔で笑って見せる。
「本物と比べたら玩具みてぇなもんだがな、乗ってみないよりゃマシだ」
その言葉に、カミナの目の色が変わった。喜色、渇望、畏怖…入り交じる感情は一時として固定しない。それでも彼はまだ幼い足を前に踏み出し、グレンの口元に手を置いた。応じて開いたコクピットを見、カミナの喉が鳴る。
「…シモンは俺がガンメンに乗るのを嫌がってたんだ」
痛みを耐える貌で少年は呟いた。髪を飾る布まで潮垂れたように肩が落ちる。なるほど、戦いのない平和な世界とはあの青年が望みそうなことだとキタンは鼻を鳴らした。
「で?お前はどうしたい?」
容赦のない口ぶりに勢いよくカミナが振り向く。それに顔を付き合わせず、使い古されたガンメンたちへとキタンは足を踏み出した。その中には彼が乗りこなしたキングキタンも並んでいる。
「シモンの言うことをきいて、良い子ちゃんでいるのか」
背を向けられたカミナはグレンを前にして歯を食いしばった。
「自分の思う通りにして、戦う力を手に入れるのか」
訊かれるまでも、なかった。迫られる前に決断ならばとうにしていた。自分は宇宙一強い男になる。そしてシモンを捨てた地球の連中にも、アンチスパイラルとやらにも文句を言わせない男になってみせるのだ。
少年は模造品のコクピットへ乗り込みハッチを閉じる。それを見届けて壁に背を付きキタンはポケットから煙草を取り出した。
だがライターを手に火をつけようとして横から奪われる。
「この誘拐犯」
呆れきった声音に今度は苦笑いしてキタンは金髪を掻いた。その隣で腕を組んだヨーコが大仰に息を吐く。
「カミナもカミナよ、先生のチェック無しで勝手に帰っちゃうんだから」
教師然とした物言いに伊達眼鏡がよく似合っていた。ただそれを褒めるほどキタンも空気の読めない男ではない。戦友は肩を並べてカミナという名の少年が乗る偽のグレンを眺めた。
「真面目にやればできる子なのよ。
 運動神経いいし、頭だって悪くない」
額をおさえていた手が眼鏡の位置を直す。島から集団疎開してきてシティの教師となったヨーコは、時折リーロンの家を訪れては勉強の遅れているカミナの宿題を見てやることもあった。
「期待できるってこったな」
そういえばあの男も飲み込みは早かったと郷愁に襲われるヨーコに並んでキタンが肩を鳴らす。鍛え甲斐があるとでも言いたげだった。
小さく頷いたまま、赤い髪を首もとから滑らせてヨーコは軽く俯く。期待できる、の、だろう。なにせあのシモンの秘蔵っ子だ。放逐された英雄が手塩に掛けた少年なのだから。
大事にされてきたのは嫌でも解る。シモンを誇りに思う様子だけでも充分だ。…なにより、シモンがずっと縁にしてきたあの布を託された子なのだから。
期待できなくては困る。英雄がその全てを与えてしまった存在だ。シモンが己の分まで未来を委ねた男の子。でも、本当だったら戦いのない空の下で生きられたはずの少年。
いつの間にか床と対面する程に下がっていた頭へ、ぽんと手が置かれた。払うというより驚いて顔を上げた女の金色の瞳に、キタンの真剣な横顔が映る。
今は厳重に封印されたコアドリルの輝きが眼裏に瞬いた気がして、ヨーコは眼鏡を外した。
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