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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.11.23,Sat
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2008.06.21,Sat
5月20日の兄貴追悼日(08年8話放送日)の為に書いたのにその日に間に合わなかった!というとんでもねえ間抜け文(つまり既出)。
26話の幽霊(?)兄貴とアバンシモンの話ということで一つお願い致します。
でも26話のあのマント兄貴はシモンに内在されてたイメージが具現化したものだったような気もするんですけどね。だからこの文章も本編シモンの中のイメージが具現化された兄貴を具現化できるイメージを持たなかったアバンさんが貰って行こうとした、みたいな視点でもOKなんだと思うんですけど…
書いてる本人に解釈が多々あるからまとめるのが難しい。読みにくくてすみません。
あとタイトルまた三秒くらいで考えました。






懐かしい緑の光が天に立ち上り、白々と尾だけを残して飛び去った。
それでいい。頷いてカミナは目を細める。弟分は正しく彼が選んだ道へと戻った。もう迷いはしないだろう。
シモンの心の揺らぎそのものだった自分が消え去ることがその証だ。
役目を果たした男は世界と己の境界が曖昧になっていく感覚を知る。死んだ人間が辿らなければならない、それもまた道だ。カミナもまた剛胆に笑って受け入れる。
しかし、彼の意識はいつまで経っても消えなかった。既に傍にいた仲間達は一足先に去っているというのに。
何かがおかしいと気づいて見渡せば、いつの間にか彼は黒っぽい岩に覆われひび割れた大地の上に立っていた。再び天を仰げば先ほどまで晴れ渡っていた筈の空に陰鬱な雲が広がっている。光の軌跡など望むべくもなかった。
虚空に帰ろうとする自分の存在を何かが引き留めている。消えることは許さないと激しい憎悪と狂おしい執着を以て、カミナはこの場に引き寄せられたのだ。そうと理解する彼の耳に遠くで鳴り響く轟音が届く。
思わず振り向いた先で、雨雲をまとわりつかせた巨大な山が火を噴いていた。
いつか見た光景なのだと理解した瞬間にいきなり手首を掴まれる。何事かと反射的に払おうにも相手の力は異様に強かった。
「つかまえた」
暗然とした声が小さく呟く。己を捉える力と同じ気ぶっせいな空気にカミナは眉を潜めた。湿った穴蔵の中に閉じこめた闇を更に煮詰めたような憂鬱に視線を向ける。
その先で、黒いマントを羽織った藍色の髪の男が俯いていた。
問わなくてもそれが誰なのかをカミナは知っている。男もそれを理解しているはずなのに、わざわざのたりと答えが連なった。
「アンタがさっき言っていた、"もし"とか"たら"とか"れば"の存在さ」
ゆるゆる面を上げて男の限りなく黒に近い灰色の瞳がカミナを映す。その口元はうっすらと笑みの形に歪んでいたが、笑顔などではないと嫌でも判った。
「アンタは俺の傍にいなきゃならない。そうする責任と義務があるはずだ」
顰められた顔にどう考えたのか早口に言い切りますますカミナを捕まえる手に力がこもる。恨みがましい声でそのくせ求めずにはいられないまま男の喉が引き攣れた。
「どの次元でも!どの世界でも!アンタの存在が俺を狂わせる!!」
ぎらつく双眸は怪しく燦めき、その奥で澱む拘泥がカミナをますますこの場に縛りつける。
「アンタさえいなければ、俺はただの穴掘りでいられたのに…!」
死をはねつけようとする緑の光は子供の駄々めいた言葉に呼応してカミナにまとわりついた。螺旋を描く力は天ではなく地を目指しカミナをどこにも行かせまいとする。
誰よりも正しく、カミナが一処には留まれない人間なのだと知っているはずの相手の、骨の浮いた手の甲に亡霊の掌が重なった。宥める仕草で撫でるカミナを妄執に爛れた眼が見上げる。食い入るように見つめ返す紅に外套の腕が震えた。
「…穴掘り」
馴染んだ二つ名を呼ばれ狼狽えた男が離れようとする。それを今度は入れ墨の腕が許さなかった。
「グレン団の頭、総司令、戦争犯罪人、カテドラル・テラの艦長」
冠した名を数える度、灰色の眸が縮まり、広がり、迷子のような気弱さを映し出す。何故彼が自分を此処に留まらせようとするのかを知り、カミナは相手の冷えた手を握った。鼻面同士がぶつかる近さで覗き込む。その先にあるのは子供の頃と同じ孤独だった。
「いったいいつまで名前に振り回される?
 他人が決め込んだお前なんぞに従う意味はねえ!」
彼は迷ったのだ。カミナが居なくなったあと、一人になって迷った。迷ったからこそ誰かに自分が何なのかを決めて欲しいと願った。
他人が道を決めてくれれば自分は一人ではないと、そう思っただろうか。
だが違う。
道は一緒になるもので、一緒にするものではない。現に、疾うに彼とカミナの道は分かたれていた。即ち生者と死者に。
「お前はお前だ。シモン」
呼ばれ、シモンが硬直する。その目の前で深紅のマントを払い入れ墨の腕が天を指した。
「顔を上げろ、シモン。そこにお前の道がある」
つられて顎を上げる所作の幼さにカミナは笑う。確かに間違いなくそこにいるのはシモンだった。さっき見送ったシモンとは少しだけ違う道を歩んだ、カミナの弟分だ。
「下ばっか見てっから訳わかんなくなっちまうんだ。
 俺の弟分だからお前なんじゃない。お前が俺の弟分なんだろうが」
ぺちりと弱い音を立ててカミナの手がシモンの頬を張る。眼を丸くし触れられた場所を抑え、それからシモンはまた悄然と肩を落とした。
「でも、俺は」
またも両眼が下がり背が気鬱で撓む。固まった空気を吐くように言葉が重なった。
「声が聞けて、触れて、傍にいてくれる兄貴が欲しかった。ずっと探してた。そのためならどんなことだってした」
ぎこちなく伸びた腕がカミナを捉えようとして、結局出来ないまま落ちる。
「一緒が良かった。いなくなって欲しくなかった。だから俺は…!」
しゃくり上げるのと同じ調子で言い連ねる語尾が断ち消えた。しばらく下を向いていた貌がゆるゆると上向く。認めたがらない葛藤に藻掻き、それでもカミナにだけはごまかせずシモンは呟いた。
「でも、…俺が求めてたのは"兄貴"であって"カミナ"じゃなかったのかな」
何故迷ったのか、自分で見つけ出した弟分にカミナはわざわざ頷くことまではしない。ただくしゃりと藍色の髪を撫でた。その感触にシモンが泣きそうな顔で笑う。
このシモンがどんな孤独を背負ったのか、どんな道を彷徨ったのかをカミナは知らなかった。しかし知ろうが知るまいがカミナが語る言葉に変わりはない。
「ぶつかった壁にゃあ風穴ぶちあけてやれ、お前には出来る!俺には解る!」
言いながらカミナは天に差し伸べたまま握り込んでいた拳の中にシモンに渡さねばならないものがあることに気づいた。ニヤリと笑ってそのまま人差し指を相手の胸元に突きつける。
「お前のドリルは天を衝くドリルだ!」
言い切り開いた手の内から、このシモンに預けられたままになっていたコアドリルが零れた。空の掌にコアドリルを載せこちらを向いたシモンの眦から一粒涙が落ちる。
「…解ったよ、兄貴」
死に際して送られるべきだったその雫をコアドリルの代わりに受け取ったカミナは、己をこの場に留めていた楔が消えたことを知った。今やカミナではなく天を見上げたシモンが緑の光を身に纏う。
「終わらせなくちゃいけないんだね。俺が歪めた全てのことを」
どことなく寂しげな口調にカミナは背を叩いて激励し、隣に並んで空を眺めた。
「男なら自分のやったことにゃあ責任を持つもんだ。始まりがなんであれな。
 生き死にどうこうより大事な話だぜ」
「うん」
素直に首肯したシモンが黒いコートの裾をはためかせる。
「行ってこい!」
叫ぶと同時にシモンの姿が風に溶けた。満足げにそれを見つめ、今度こそカミナは虚空に帰る。全ての命がそうするように。
「またな、兄弟」
いつの日かやって来るシモンのことを、カミナはそこで待っていた。
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