これもカミナが亡くなる前に書いたものなんだが一体わしゃあどれだけカミナが死ぬと思ってたんでしょう。
最初書き始めはガンメン技術を応用したサイボーグだったんだけども色々あって獣人ということに落ち着きました。その節はネタ泥棒マジ済みませんでした…そんなんばっかやで
限りなく色気はないけど致してるので一応R18で。描写的にはR16くらいな気もしますが。
「おゥおうおう!やぁっとお出ましかい!」
それは、有無を言わせずシモンの魂を昂揚させた。
交戦の構えを解き棒立ちになったグレンラガンを見て通信越しに仲間達の悲鳴が響く。だがそれらはシモンの耳には届かなかった。彼の五感は、いや第六感までも全て今目の前に対峙しているガンメンとその搭乗者に振り分けられている。
無意味に開いた唇が戦慄き、操縦桿を握る手が痺れた。灰色の瞳が丸く見開かれる。
その瞳孔の中に、一体のガンメンの足下で倒れ伏した何人もの仲間達とその機体は映っていなかった。
現実か?幻か?正気か?狂気か?本当なのか?
自分に問いかける理性を感情が凌駕する。確信があった。
あの名乗りがあの戦い方があの声があの熱が。解る。間違えるはずがない。誰が違うと言っても、自分だけには必ず解る。
あのガンメンの乗り手は、カミナだ。…生きていた!
「兄貴!兄貴なんだろ!?」
歓喜がシモンを突き動かす。男は確かに眼前に居たが、シモンは今や正しい認識を失っていた。カミナの生存の前には背負った仲間も責任も吹っ飛ぶ。17歳の青年は、今この時14歳の少年へと立ち戻っていた。
「テメェが大グレン団の頭だな?」
赤い機体から名を問われ、もどかしそうにシモンはグレンラガンを前に進める。その歩みがふらふらと頼りないことに彼は気づかない。
「俺だよ、シモンだよ!わかんないの?そうか、装備追加したから」
「うるせぇ」
カミナも絶対に自分に気づいてくれる。思い込んだまま続けた言葉を、他ならぬカミナ…だった男が断ち切る。脚部に収納されていた刀を構えた敵ガンメンに下がって援護に回っているヨーコが悲鳴を上げた。しかし彼女の甲高い声の意味をシモンは受け取らない。
振われた刀は無防備なグレンラガンの腹、空のコクピットにみしりと埋まった。
「兄貴…?」
明確な攻撃を受けて尚、コクピットのシモンは首を傾げるだけで操縦桿をまともに動かさない。完全に戦いを放棄している仲間に、ヨーコが通信音量を最大にした警告を叩き込んだ。
「シモン!そいつは敵よ!獣人なの!」
彼女の言葉を証明するように放たれた蹴りがグレンラガンを地に伏せさせる。操縦席も揺さぶられ、Gのかかる苦痛に顔を歪めながらそれ以上にヨーコの言葉に怒ってシモンは声を荒上げた。
「違うっ!兄貴は敵なんかじゃない!」
グレンラガンが主人を否定するようにぎちりと機体を軋ませる。それを振り切ってシモンは自分のガンメンを立ち上がらせながら叫んだ。
「兄貴、生きてたんだろ?無事だったんだ、そうなんだよね?俺達月に…っ」
全部は言わせて貰えない。迫った拳に対応を取らないグレンラガンは玩具のように打っ飛ばされて地面を転がった。
「弱ェ奴いたぶる趣味はねぇんだよ…テメェ、巫山戯てんのか?
頭張ってんだろうが少しゃあ気合い見せやがれこの腰抜け野郎!」
胸に取り付けられた巨大なサングラスをメキメキと赤いガンメンの足が踏み抜く。シモンと、そしてカミナの象徴を痛めつけられて頭に血が昇ったヨーコは構えていたバズーカのトリガーを引いた。が、その着弾前に素早くグレンラガンの頭が掴み上げられて敵ガンメンの前に晒される。
「…!」
声にならない絶叫を上げるヨーコの眼に他ならぬ彼女自身の武器によって腹をえぐられたグレンラガンが映った。
「なっちゃいねぇんだよ!」
そのままシモンの乗り込むガンメンは大地に叩きつけられ、頚関節をめきめきと引きちぎられる。
「こんな弱っちい奴とガンメンが本当に螺旋王のお望みなんだかな…っと!」
グレンラガンの核であるラガン部分が赤いガンメンの手に抱え込まれた。止めようにも既に大グレン団に残存戦力はない。たった一機に良いように弄ばれてしまった。シモンと繋がる回線は雑音ばかりが聞こえてくる。回線自体がやられたのか、それとも気絶しているのかは解らなかった。
ヨーコは固い地面を拳で殴る。どれだけ悔しくとも、悠々と撤退していく赤いガンメンを見送るしか彼女に術はなかった。
いつもその背中を見ていた。
おれたちは、ちじょうへいく!
そう言われたから、地上に出て戦った。
あのつきってとこまでいってみようや
そう言うから、空を越えられるガンメンを手に入れた。
無理を通して道理を蹴っ飛ばすのが、俺達グレン団。そう思えば何でも出来た。
「…兄貴」
呟いた、自分の声で眼が醒めた。すっきりしない頭は薄く開いた瞼の隙間から見える天井が見知らぬものだと理解しない。部屋の中は暗く、だが高い位置にある窓から月明かりが差し込んでいた。肌寒さに身震いする。自分で己を抱いて気づけば着込んでいたはずのジャケットもマントも剥ぎ取られていた。足もズボンは履いているものの膝丈まであるはずのブーツを抜き去られている。
流石に状況の異常を了解して身を起こしたシモンは、自身が見たことのない狭い部屋に押し込められているのだと知った。継ぎ目のない石の壁に三方が囲まれ、奥には先程から見えていた窓がついている。窓とその正面に当たる側には金属の格子がはめ込まれていた。四歩もあれば奥から鉄格子まで届いてしまう程度の広さしかない。腰掛けている寝台もシモンがギリギリ横になれる程度の大きさで、それが部屋の半分を占めていた。牢であることは寝起きで惚けた頭でも充分判断出来る。しかし処理オチした脳が彼に気を失う前の戦況を思い出させなかった。
「どうして」
気の抜けた疑問が口に浮かんぶ。鋭さの抜けた顔はいっそあどけなくシモンを年より幼く見せた。開いた膝の間に手をついて、ぽけっと口を開けて瞬きを繰り返す姿はとてもではないがレジスタンスを率いる頭目には見えない。
「おぃおい、もっとシャッキリしやがれ!」
立場にそぐわぬ見目に苛立った声が投げかけられた。が、その詰る口調に構わずシモンはぱっと顔を明るくする。
「兄貴!」
勢いよく振り向いた先、鉄格子の向こうに男が一人立っていた。赤い瞳がシモンを射抜く。その眼はカミナが弟分に向けるはずもない敵対意識に満ちていたが、シモンはそれを無視した。寝床から飛び降りたシモンが鉄の棒越しにカミナに向かって手を伸ばす。
「兄貴、帰ろう!皆待ってるんだ」
拘束の危機感さえ置き去りに告げる青年に、螺旋王の部下は顔を顰めた。
「俺ァ螺旋王率いる獣人軍の中央戦団長様だ!
人間共のレジスタンスだかなんだか知らねぇが、テメェなんぞに馴れ馴れしくされる覚えはねえ!」
不快そうに言う言葉振りは、だがシモンの確信を深める材料にしかならない。ガンメンから降りてみれば正に男はカミナ以外の何者にも見えなかった。空と同じ色の髪、強い意志と共に輝く赤い瞳、肌を飾る刺青。全てがシモンの知るカミナが持つものだ。
だがただ一つ、決定的に違うのは。右の肩口から先が、人間のものではなくなっていることだった。しなやかな筋肉を日に焼けた肌と刺青で覆っていたはずの腕はみっしりと被毛に覆われ、長さも膝を超えるアンバランスなものになっている。太い指先には鋭い爪を備え、それだけで立派に人を殺せる武器になっていた。
「何言ってるんだよ兄貴…」
否定を受けて尚認めないシモンが嘆く声を出す。相手がカミナ以外では有り得ないと彼の魂は確信していた。その強情さに獣人は苛々と格子を蹴飛ばす。
「こちとらただでさえムシャクシャしてるってのによ!」
吐き捨てた男は大きく舌打ちして、腰に下げていた大降りの鍵を手に取った。古風な錠前を開き、狭い入口から独房に入ってきた彼へシモンは無防備に近づく。
兄貴。しつこくも呼ぼうとした彼の首を素早く伸ばされた獣の手が掴んだ。細身の青年の華奢な首は荒々しい手の平の中に簡単に収まってしまう。
「眼が醒めてみりゃあ昔のこたぁ憶えてねぇわ、後遺症だかで動けねぇわリハビリ長いわ、やっと思う存分暴れられると思ゃあ発情期、挙げ句敵の大将は頭おかしいガキときた!起きてからこっち碌なことがありゃしねえ」
獣人と名乗る男はぎりりとシモンを締め上げて毒突いた。苦しい息の下、それでも一言一句聞き逃さなかったシモンは閉じかけていた目を開く。
「憶えて…な、い?」
問いかけた細い声に不愉快そうに鼻を鳴らして、男は人間一人を掴んだ腕を振りかぶった。奥の壁に投げつけられ、リバウンドしながらシモンは床に体を投げ出す。打ちつけた部分が酷く痛み、苛まれていた喉は呼吸が危うかった。それでも彼は腕で体を引き摺ってカミナに近づこうとする。
芋虫のように這う青年を見下ろし、その動きに焦れた男が大股で距離を詰めた。爪先で倒れた青年の顎を持ち上げ面を上げさせる。
体勢の辛さに無言になったシモンをしげしげと眺めた後、獣の腕がもう一度相手を持ち上げた。今度は寝床へと落とされて背中を打ったシモンが呻く。それを無視したカミナが自身も寝台に乗り上げてシモンの胸を押さえつけた。
「…あ…にき…?」
「俺はお前の兄貴なんかじゃねえ」
心細く呼んだシモンを容赦なく否定して、カミナは己の唇を湿らす。縋るように覗き込んだ赤い眼は獲物を捕まえた獣のそれだった。本人の意志の如何を問わずに体が後退ろうとしても押さえ込まれて叶わない。どころか抵抗は狩人の意識を刺激して、ズボンのウェストを握られそのまま一気に引き裂かれた。人ではない膂力を見せつけられてびくりと年の割に骨の細い肩が揺れる。見せつけるように脚から余った布が引き抜かれ、意地の悪い笑みを投げかけられた。
「兄弟じゃこんなこたぁしねぇよなあ?」
毛に覆われた手の甲で腹筋の浮かぶ腹を撫で回される。その手が次第に下腹へと下がり、透けて見えた意図にシモンは目を見開いた。丸くなる瞳の驚きが怯えにすり替わっていく様を眺めて笑い、赤い眼が鼻先がつく程近づく。
「言ったよな、俺は今発情期だって。
無闇に落ち着かねえからよ、相手なんざ誰でもいいんだ」
歯列の向こうから忍び出た舌がシモンの唇を湿らせた。肌を晒した脚を膝で割られる。意識が混乱に近づいているシモンは何も拒めなかった。大人しい餌を前にして獣が耐える訳もない。
胸元まで滑り落ちた口が胸の飾りに歯を立てる。食い込んでくる痛みに身を捩ると宥めるように噛まれた部分を舐められた。ぴちゃりぺちゃりと水音が耳に入り込んでくるのと同時に悪寒が背中を駆け上がり、シモンは顔を歪める。嫌が応にも目に入る水色の髪と俯いた顔は確かに見知った男のものだった。カミナが自分にこんなことをしている現実が信じられない。
カミナはヨーコのことを憎からず思っていた。ヨーコもカミナのことが好きだった。自分は、二人がお似合いだと思っていた。二人の間に割り込めなくなってもそれでいい、と。
努力して思い込んだ。本当はヨーコにカミナを奪っていって欲しくなかったし、カミナがヨーコのものになるのも見たくはなかった。カミナはたった一人だけシモンを認めてくれた人間で、そして一番憧れていた人で。誰より大好きな人だったから。
けれどシモンは男だから、カミナと一対になれないことくらい解っていた。自分の抱えていたものが友情や憧れを越えて恋慕の域に達していると自覚した上で我慢もした。…カミナが死んだと思った時に、一欠片の安堵があったことをシモンだけが知っている。これでもうただ慕わしさだけを抱き続ければ良いのだと、叶わないと知ったまま思い続けることも無くなるのだと、少しだけ、だが切実に考えた。
カミナは察していて、今こうしてそれを責めているのだろうか。
一人錯覚の沼に引きずり込まれるシモンを無視してカミナは自分のズボンを脱いで適当に床へ投げ捨てた。滑らかな肌は触り心地こそいいもののそもそもカミナは男色趣味がある訳ではない。獣人の牡が定期的に発散しなければならない熱の処理さえ出来れば相手に構わないだけだ。肉欲をぶつけるための身体さえそこにあれば前戯も必要なく男根は勃起する。己を衝き動かす本能に疎ましさを感じて、カミナはシモンを乱暴にひっくり返した。
茫洋と瞳の焦点を失いつつある瞳は、急に体勢を変えられたことで現実に引き戻された。うつ伏せにされて相手の姿が視認出来なくなる。何が起こっているのか何をされるのか予測がつかないでいるうちに、股間に他人の体温が触れた。
「ヒッ…」
喉から乾いた悲鳴が上がる。男同士で出来なくもないと昔聞きかじった知識はあるが、それでもどう考えても慣しもしない穴に入るはずが無かった。
「む、無理!無理だよ兄貴っ!?」
諫める言葉はあっさり却下される。
「お前の事情なんざどうでもいいんだよ」
不機嫌な声音と共に固い肉塊の先端が窄まりをこじ開けようと押しつけられた。緊張しきったシモンがそれを受け入れられる筈もない。焦れったそうに数度繰り返したカミナは、最後に至極面倒臭そうに言った。
「だから男は嫌なんだ」
その言葉にどれだけシモンが傷つくのか知らないまま、人間の形を残した手が縮み上がった青年のペニスに伸びる。竦んだものをカミナの手の平が適当に扱いた。本当にこれといって技巧もなく自慰より稚拙に上下され、偶に亀頭を摘まれ撫で回されるに過ぎない。それでも相手がカミナだという認識がシモンの神経を刺激した。室温で冷めた肌にカミナの熱が染みこむ。これが欲しかったんだと自分の心が叫んでいて胸が痛かった。食いしばった歯の隙間からどうしても噛み殺せない呼吸が落ちる。それが段々追い詰められるように忙しなくなっていくのが呪わしかった。
「気分出してんのか?」
鼻で笑ったカミナが手を離す。解放され、心労でぐったりとしたシモンを休ませずに尻が割られた。放されて弛緩していた括約筋が抵抗を忘れている内に一度は諦めた勃起が再度差し込まれる。
「いっ…!」
獣人の怪力故かねじ込む力に容赦はなかった。苦痛に背中が引きつれても押し戻すことは出来ず、一番太い部分を収められてしまえば後は奥まで征服されてしまう。シモンは痛覚を耐えるために石造りの寝台に爪を立てた。ぎゅうぎゅうに自分の中を埋められて、どこかで喜んでいる自分を認めるのが怖い。すぐ傍にカミナがいて自分の相手をしてくれているんだと浮かれそうになっていた。それが現実逃避なのか、それとも本心なのかシモンにも区別がつかない。
「やっぱり狭ぇな」
暴力を振っておいて不満を口にしたカミナが腰を捻った。乾いた内壁を擦られてシモンが喘鳴を上げる。押し込められた熱は痛みと相まって身体を灼かれているようだった。だというのにその熱さがカミナの持つ輝きに重なって奇妙な満足感を与える。傍若無人に内臓をこねくり回されても嫌悪の情が湧かなかった。
揺さぶられる度に僅かずつ腸が拡張され、同時に現実感が剥離していく。そもそもカミナが生きていることすら夢のようだった。今こうして身体を繋げていることが妄想を映した夢でないとは言い切れない。
「う…ァ、ぁっ…」
腰骨が無謀を否んでぎしぎしと喘いだ。対照的に、忙しない呼吸に媚びる声が混じっていく。浅い息では必要な酸素を飲み込みきれずに痛覚と相まって意識が明滅を始めた。嘘か誠かが本当に問題なのか解らなくなる。カミナが居て自分が居てそれ以上に何か、必要なものなどあっただろうか。
「兄…貴、兄貴ぃ」
「だから俺はお前の兄じゃねえっての」
昔全く逆の会話をした。自分に兄はいないと言ったシモンに、カミナは自分を兄と呼べと告げた。
「お前なんか、知らねぇよ」
カミナの死後も縋り続けた絆を否定する言葉が神経の処理限界を超えさせて、シモンは痛みも状況認識も失う。思考と身体が同時に限界を迎えて千切れた。ぶつりとシモンの脳内に音が響いて意識が真っ白に染まる。
血を溢れさせながらきつく締めつけたシモンの内側に、カミナが精液を滾らせた。更に奥底まで流し込まれてびくびくと身体が震える。
ずるりと萎えたものを引きずり出されたものの後を追って血混じりの白濁が寝台に溢れた。
「…なんだァ?気絶してんのか」
手前勝手に利用した男がぺちぺちとシモンの頬を叩く。その顔が薄く笑んでいるように見えて、カミナは盛大に顔を顰めた。
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