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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.12.04,Wed
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2000.10.25,Wed
女装は似合うに合わないじゃなくてそれそのものを羞じているという状況がイイんだと思うんですよ。
という話。
黒ニア様の頃は最終回がどうなるかも知らず散々シモ方面に妄想が暴走したものです。
前半は着替えてるだけで別段エロくもない気がする。







暫くうつらうつらと船を漕いでいたらしい。寝台ではなく仕事用の椅子で寝る癖がついてからどれだけ経ったのかもう覚えはなかった。未だ霞がかった意識のままぼんやりと瞬きするシモンの覚醒を他者の指先が促す。
「…に、あ?」
頬を撫でる手の温度に覚えがあった。或いは今見ていた朧な夢を引き摺っていたのかも知れない。舌足らずに呼んで、それで遂にはっきりと眼が醒めた。
呼び求めた相手が望む姿をしていないことを嫌でも思い出す。その実感を駄目押しするように抑揚のない声が浴びせかけられる。
「眼が醒めましたか」
名残を惜しませる余裕も与えず手は離れていた。最早お飾りの範疇すら越えて粗悪な舞台装置と化した総司令の椅子に納まる青年は冷える頬を歪めて問いかける。
「…今日はどんな遊びをするつもりだ、ニア。
 花冠をつくろうか。歌を歌うか。それとも像でも彫って欲しいのか?」
目の前にいるのではない女が好んだことを並べ立ててシモンは自嘲する。しかし相手の感覚からすればおそらくさしたる違いも無かろう。今の彼の立場はニアのお気に入りのぬいぐるみと大差なかった。とはいえぬいぐるみにとって持ち主の意向がそうであるように、お遊びに聞こえる要求もシモンには絶対的な命令に値する。
螺旋人類はアンチスパイラルに敗北を喫した。いや、そもそも勝ち負けを論じる立場にすら至れなかった。戦力も整わぬままに人口の三割を失い、政府が求心力を失い、人類は内部から崩壊した。今集団として曲がりなりにもまとまり、政府が政府としての力を保っているのは皮肉にもアンチスパイラルの後ろ盾を得たからに過ぎない。
一度ロージェノムに免じたアンチスパイラルは、お前にもチャンスをやろうとシモンに告げた。80万の人類生存数制限を守り、そして自分達の命に絶対服従するのならば滅亡だけは回避させてやっても構わない、と。
螺旋遺伝子研究の為の素材、あるいは余興。どちらともつかない扱いで彼等は人類を恐怖政治でまとめ上げていた。一度は人間の英雄として祭り上げられた青年はアンチスパイラルにとって最大の研究材料であり、支配力を示すための傀儡でもある。
無力な人間達は最強の男ですら反螺旋生命体の前に膝を屈したことに絶望し、そして自分達の期待を裏切った青年を憎む。恐怖故にアンチスパイラルへは示せない反抗心や恐怖や憎しみを転化する形で。実に都合の良い道具だとシモンは自らを嘲笑う。恭順を体現し、そこに存在すること以外に彼の役目は残っていなかった。
「そうですね、まずはこれに着替えてもらいましょう」
物思いを無視したニアは正に真の意味での傀儡として、シモンを玩具扱いする。どこからともなく姿を現した布の固まりが床に散った。それが服であることを認めた青年は肩を竦める。
「ニア…また、そんなことか」
着せ替え人形扱いに嘆息するシモンへ、悪戯めいた指示とは相容れない程冷徹な声が与えられた。
「あなたがやらないのなら、ムガンを向かわせる迄です」
こともなげに、それこそ友人同士の罰ゲームよりも簡単にニアは言ってのける。床に腕を伸ばし、肌触りの良い布を掴んだシモンの手が震えた。脳裏に閃いた炎と耳に残る爆音を押さえ込むために彼は無理矢理唾を飲み込む。
…30万。
粛正と称して行われた虐殺の死者数だった。
この星最大の都市カミナシティに住む人間と同数の命が、たった一夜で奪われた。
天上を突き破った螺旋人類はアンチスパイラルにとって危険なものではあったかもしれないが、それでも未だ彼等にとって下すに充分な生き物でしかなかったことが証明された。
グラパール。螺旋弾。確かにムガンに対抗する兵器を人間は手にしている。
だがグラパール生産には専用の施設が必要だ。アンチスパイラルは当然工場の建設を認めないし、既存のものは規模縮小を余儀なくされている。
よしんばグラパールの増産が可能になったとしても乗り手が必要なのだ。ムガンとの戦闘になればその弱点である螺旋弾を装備していたとしても死傷者が必ず出る。致死率の高い役目に志願してくれる人材など殆どいない。
治安維持のために配備されているグラパール部隊では、地上にある都市全てを守ることは不可能だ。カミナシティ、近隣の村。そのレベルならまだムガン発生の報を受けてから出撃しても間に合うかも知れない。しかしムガンが星の裏側に現れてしまえばどうにもならなくなる。グラパールの移動速度には限界があるがアンチスパイラルは距離を無視するための技術を所持している。そして全ての村に配備出来るほどのグラパールも、人材も、ありはしないのだ。
息を吐き、頭を振る。従う以外に道はなかった。
作業を中断していた手がのろのろと服を掻き集める。最初に拾い上げた飾りの付いた白いシャツこそさして違和感を憶えなかったが、続く衣装にシモンの表情が曇った。
レースで飾られた黒い衣服がスカートであることは紛れもない。けれど見覚えのないふわふわとした布の固まりはどうやって身につけたものか見当もつかなかった。おそらく靴下の類と思われる品も色こそついているものの向こう側が透ける薄さで頼りない。金具のついた紐に至ってはそもそも服なのかすら怪しかった。
仕立てを頭の中で組み立てたところでどう考えても似合わない代物の筈だが、そもそも考え てみてもニアの思考を読むことなどできない。そんなところばかりは昔と同じだ。
仕方なく、指定された衣装を机に並べて着込んでいた上着を椅子に放り投げる。靴の留め具を外して脱ぎ、靴下を剥ぎ、そこで一端動きが止まった。腕に巻かれた赤い布を外すことを一瞬だけ躊躇したシモンは悲しげに眼を伏せて結び目を解く。そこだけ丁寧な手つきで机の上に布を載せ、単純な構造のつなぎを脱いでしまえばシモンが身につける衣服もあとは下着だけだ。コアドリルを失った頼りない胸元も、肉付きが薄くそれでも筋肉の形が浮いた腹も、未成熟な骨格のままに細く見える腕脚も無造作に晒される。色素が薄い肌の上についた赤い痕も同じようにニアの目の前にさらけ出された。鬱血に始まりみみず腫れ、擦過傷、致命傷にはならないが目を引く傷痕が点々と皮膚を飾っている。
空調の効いた部屋でも何とはなしに肌寒く、シモンは渡された衣装に手を伸ばす。だが何が気にくわなかったのか支配者から叱責が飛んだ。
「それを着るように言った筈ですが?」
動きを留められ訝しげな顔を隠さないシモンに、咬んで含めるようにニアが付け足す。
「他は、許しません」
言われた意味がすぐには飲み込めなかった。きょとりと眼を丸くして年齢に見合わぬ幼さを覗かせたシモンは、直後意図を理解して肝を冷やす。確かめるのも嫌だがそうせずにもいられずに頼りない声が漏れた。
「……下着、は」
突きつけられるだろう現実を想像するだけで声が震える。意にも介さずニアが顎を上げた。動きの鋭さに思わずシモンは肩を揺らす。
「それがそうです」
指さされたのはシモンが頭を捻っても着用法が解らなかった紐の固まりだった。
「どうやって着るんだ、こんなもの」
思わず普段(普段がどんなものだったのか、も、もう記憶の彼方ではあるが)どおりに尋ねたシモンにニアが冷めた眼を向ける。
「着せてあげましょうか、シモン」
もし彼女が柔らかな微笑みを浮かべているのだとしたら、シモンも冗談として受け取ることが出来た。悪意というものをどこかに置き忘れてしまった、シモンの良く知る彼の愛した少女が同じことを言うのならばまた変なことを言ってと笑いながら付き合ったかも知れない。
しかし相対する女は彼女であって彼女ではなかった。
長くを過ごした友人でも恋人でも婚約者でもなく、主人となった女は動きを止めたシモンに問う。
「…それは、あなたのストリップを放送してほしいという意思表示ですか」
「バカを言うなっ!」
すぐにでも実行に移されそうな行動を即座に否定して元英雄はボザムで飾られたシャツを引っ掴んだ。どれだけレースやリボンで飾られていようとシャツはシャツ、こればかりは着方を間違おうはずもない。ボタンを留め、首を戒めるようにリボンを結び、次が解らず彼の手は困惑を示した。おそらく靴下の替わりになるのだろうと見当をつけたものに足を通しても薄すぎる布地は皮膚にまとわりつく癖に自身の位置を定めて置けないらしい。乱暴に扱えば今にも破けそうなそれに四苦八苦するシモンを入れ替わりに椅子に腰を降ろしたニアが眺め回した。視線に気付いたシモンが諦め顔で教授を乞う。面白くなさそうに息を吐いた女が自らの身体に走る赤い線を散らして自身を分解し、そして直後シモンの背後に姿を現した。己の足で歩くことすら忘れたような行動にシモンが鼻白む隙に彼の腰回りを庇っていた下着が摺り降ろされる。
「…!?」
喉を引きつらせた彼を無視して裸にされた腰に紐が回った。背骨の終着点に近い位置で金具が嵌る音がする。思わず逃げようとした脚は足首に絡まる自分の下着にひっかかってたたらを踏んだ。
「あとは自分でなさい」
言い置いて背後から気配が消える。椅子の上に戻ったのだと知ってシモンは取り急ぎ彼女に背を向けた。流石に丸出しの股間をみせつけたくはない。反射的に浮かんだ涙を留めて彼は己に巻き付けられた紐が先程用途不明だったニア曰くの下着であることを確認した。ついでに外気に触れる股間を少しは隠すはずの毛がまともに生え揃っていないことまで自覚して目尻が歪む。剃り落とされた記憶は生々しく脳裏に刻み込まれていたが思い出したいものではなかった。
遅ればせひっかき傷が残る太股に垂れる紐がサスペンダーの類であることを理解してシモンはそれがストッキングを止めるための用具だとやっと了解する。いそいそと金具で布を吊り上げ、全く以て下半身を隠すことを放棄している下着に嘆息が湧いた。だがその間も後ろからの視線は注いでいる。着込んだシャツの裾も図ったように腰骨の上辺りまでしかなく、お陰様で隠すべき部分が強調された。
シモンは振り向けないまま机の上に並べた残りの衣装をたぐり寄せる。当たるを幸いに手にした服は一枚一枚なら向こうが透ける布を幾重にも重ねたものだった。形としては一応スカートだろう。風が吹けばまくれ上がりそうな軽さだが何もつけていないよりはマシだ。乱暴にウェストを開いて脚を通しリボンで腰回りを調整してどうにかシモンは人心地吐く。間抜けな姿であることは確認するまでもないがまだしも下半身裸よりはまともな姿だった。ふわふわと空気を孕むそのスカートもどきが膝どころか太股までしかないことを除けば。室内の僅かな空気の動きにすら反応して幽かにスカートが揺らめいた。その動きに剥き出しの性器や脚の内側をくすぐられて青年は唇を噛みしめる。
残る布地を引き寄せて、それが黒いワンピースであることを確認してもシモンはもう迷わなかった。ウェストのボタンを手早くはめ、腰の後ろで大きくリボンを結ぶ。
まるで激しい運動を終えたようにぜふりと息を吐いて彼はどうしようもなく顔を上げた。外の夜闇によって鏡同然となったガラスが情けない姿を映し込んでいる。全面硝子の部屋では何処に視線を逃しても自分の姿と対面せざるを得なかった。どこもかしこも何もかもがおかしいと憤慨しながらシモンは被服面積を増やせないものかとスカートの裾を引っ張る。だが破けそうなくらい頼りない布はせいぜいがシモンの太股までにしかならなかった。流石に尻の丸みが覗けはしないが落ち着かないことに変わりはない。スカートのボリュームを増すために何枚も薄布を重ねて作られた下穿きも風通しが良すぎた。
ただでさえ下着を許されていないというのに女物の衣服は下からの視線に無防備だ。仕方なくシモンはスカートを押さえつけて膝頭を合わせ、極端な内股で股間を庇う。
「…終わったぞ」
一応役目は果たしたはずだとシモンは悠然と椅子の上に構えるニアへと振り返った。睨みつける目許は既に羞恥でほの朱い。完全優位を得た娘の眼を愉しませるばかりだ。
逃げ場もなく検分を受ける青年は相手の双眸から逃れる為に俯こうとする。が、娘の手が捉えているものに気付いて彼は勢いよく顔を上げた。
「それを返せ、ニア!」
顔色を変えたシモンは肌を庇うことも忘れて腕を伸ばす。しかしニアは彼の指先が届くことを許さずにまた転移によって距離を離した。
「断ります」
摘んだ赤い布をひらひらと揺らす女の顔は温度がないまま笑みを浮かべる。ふわりとスカートとリボンを揺らして追おうとしたシモンの足は、床を捉えきれずに派手に転んだ。滑らかなストッキングのせいで足下が怪しくなっていたのも嘘ではない。だがシモンは再びギャザーの入った黒いスカートを抑えたまま立ち上がることが出来なくなった。息を詰めたシモンは震えたままニアに訴える。
「ニ…アっ、巫山戯るな!」
物質転移はアンチスパイラルの十八番だ。行使された力がシモンの内側に捻れた玩具を送り込む。体の内側に馴染まない無機物をくわえ込まされてぶるぶると白い脚が揺れた。玩具は違和感を腸壁に押しつけ、背中を駆け抜ける冷たい電流が身体の支配権を奪おうとする。動きを鈍らせるその刺激を気持ち悪いとも言い切れないのが恐ろしかった。確実に慣されてきている身体を服と同じように脱ぎ捨てられればどんなにか楽になるだろう。頬を赤らめ唸るシモンをニアの瞳が冷ややかに見つめていた。
「遊びなど全て戯れの内でしょう、シモン」
弱い反抗など嗜虐を煽る材料に過ぎない。ゆるりと近づいてきたアンチスパイラルのメッセンジャーは目覚めを促した時と同じようにシモンの頬へ手を添えた。
「…っ」
他者の体温が内側を炙る熱を膨張させて灰色の瞳が揺らぐ。どうにか矜持を保とうとして歯軋りする顔は弱った獣によく似ていた。だがそれが主人の温情を引き出すことはない。
飼い犬の躾けに余念がない娘は、何度めかになる転移の力を顕現させた。立方体の輝きとして分解されていくのがニアだけではなく自分もなのだと気付いたシモンが驚愕に眼を見開く。
気付けば彼は、遠く居城を眺める夜の街角へとへたり込まされていた。何が起きたのか解らずに子供の挙動で辺りを見回すシモンに宙へとその身を躍らせたニアが命じる。
「ここから自分の足であの部屋まで戻りなさい。
 そうしたら返してあげましょう」
夜風を孕んだ赤い布がこれ見よがしに夜の闇の中で存在を主張した。空しく伸びた手の先で形見の姿から空気に溶けていく。指示を二度繰り返すつもりはないらしいニアがそれに続いた。呆けてそれを見送っていたシモンは冷たい空気に藍色の髪を揺らされて主人の言葉を繰り返す。
「も、どる…?」
ぱちぱちと瞬く瞳が遠くに見える政府機関を捉えた。歩けばかなりの距離があるだろう。ストッキング越しに肌が伝える地面の感触はどうしようもなく現実だ。そして彼が女物のお仕着せを身につけさせられていることも身の内に性戯用の玩具を飲み込まされていることも否定しようがない。
このまま歩いて帰るのか?
そうする以外に道がないことを確認してシモンは喉を鳴らした。服を変えようにもまさか往来を歩く人間に追い剥ぎを仕掛けるわけにもいかない。身体を蝕もうとする道具にしても外せばアンチスパイラルの女からの叱責は免れないはずだ。それが自分に向くならまだしも腹いせとばかりに人命を奪われてはたまった物ではない。出来うる限り人目を避けて戻るしかなかった。
立ち上がろうとして飲み込んだものを食い締め、シモンの喉から甘い息が漏れる。この状態で裏路地を伝って帰るにはどれだけの時間が掛かるのか考えようとしてやめた。どうせ答えはでないし、嫌な予想をすれば足が竦みそうにもなる。なんにしろ人出の少ないうちに出来るだけ早く帰るのが先決だ。大丈夫、なんとかなると自分に嘘を吐く。
一度瞼を閉じて息を吐き、シモンは身体を引き摺って帰路に着いた。
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