飯は喰いたし、眠気は強し。
そんな感じののらくら雑記帳。
Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2000.10.22,Sun
やさぐれシモン(♀)にロシウくんが苛められる話。やさぐれだけど8話以降どうやら兄貴は存命の模様?
あーこれビッチというやつではなかろうか。
さほどエロくはないけど多分下品。
特にこれといってその日何かが起こったというわけではなかった。
作業を終えたロシウが就寝前にガンメンの様子を見て回る役目を負うのは珍しいことでもない。
良し悪しはともかくとしてシモンがグレンラガンの、ラガンのコクピットに篭っているのもままあることだった。
一日三食摂ること、夜は寝台で寝ること。ダイグレンでは誰もが享受できることをシモンはわざわざ自分から放棄している。
杜撰な健康管理にロシウが難色を示すのもまた常の話で、だから彼が今日こそはと説得する気になったのもいつでも起こり得る出来事ではあった。
確率の高い偶発事故。ロシウがラガンに籠ったシモンと会話するためにグレンの中に収まったのも、合体中の専用回線を開いたのもつまりはそういうことだった。
そこまではロシウにとって当たり前の行動でしかなかった。
そして彼に予想出来たのは、まずまともに話も聴いて貰えないか、素気ない返事だけで終わらせられるかといういつもの結果だけだ。説得するつもりでいながら最初から敗戦濃厚の予測をまさか裏切られるなどとは思いも寄らないまま通信のスイッチを入れる。
「…シモンさん?」
立ち上がってすぐ、ノイズの走る画面の端に音声のみを示す印がついた。画像の処理が追いつく前に名前を呼んでもやはり返事はない。それもいつもと同じだ。ただ、見慣れた陰鬱な表情を画像が映し出す前に珍しくラガンの集音装置がシモンの声を拾い上げる。
声と呼ぶよりは息遣いに近かったが、吐息混じりの声音は上擦って常の彼女の音質からずれていた。浅い呼吸の合間に跳ね上がる声が苦痛を耐えるものに聞こえてロシウの血の気が下がる。
「シモンさん!」
思わず名前を繰り返すのと、映像が繋がるのは同時だった。薄暗いラガンの中に収まったシモンの姿を捉え、ロシウはグレンの操縦席から腰を浮かせた姿勢で硬直する。
映像の中のシモンはいつもの青いジャケットの下には何も身につけていなかった。普段きつく巻いているさらしが無い所為で胸元から腹までがさらけ出されている。
見てはいけないものを目にしてしまったのだと言うことだけがとにかく判断出来て腰が抜けたのか逃げようとしたのか、ロシウの背と尻が硬い座席に落ちた。
彼がグレンに乗るようになってから既にそれなりの日数が経過している。その間に目に慣れたはずの通信画面からかけ離れたものに動揺して引きつる頬に血が昇った。
シモンにもグレンからの音と映像は届いているだろうに彼女は俯いたままこちらに反応しない。忙しない息を繰り返しながら心臓を抑えるように細い指が胸の脂肪を揉みしだいていた。身切れた画面の下、下半身に伸びた腕の先で何をしているのかまで想像し、罪悪感に襲われた癖にロシウは見入る目を逃すことも出来ない。背骨をぞわぞわと悪寒に似たものに這い上がられる感触がして落ち着かなかった。見てはいけないと思うのに目を閉じることも出来ない。
少年が固まって動けなかったのは彼が思う時間よりは短かった。一際高い悲鳴がロシウの耳をくすぐり、映像の中の痩せた肩が震える。自分の胸を弄っていた手が剥がれ落ちて線の細さの割りに豊満な乳房が晒された。その白さに息を呑んでいる暇にシモンがのろのろと顔を上げる。
仕草に視線が引き寄せられて逸らせないまま、挙げ句灰色の瞳と目が合った。
「…なんか、用か。ロシウ」
僅かの疲労を載せた声はいつも通りに愛想が無く、いつもと違ってどことなくべたついている。さっきまでの吐息と違って自分に向けられた声にロシウが感じる悪寒は指先にまで至っていた。身を竦めて返事を惑っている彼を暫く眺めてからシモンは頭を振る。
次いで頭上に接続されたドリルが開き、グレンの座席の定員数はオーバーした。
画面が空のコクピットを映す代わりにロシウの目と鼻の先にシモンが座り込む。対面するには狭苦しい場所に収まって一息吐く姿はやけに現実感が薄くてロシウは間抜けにぽかんと口を開いた。彼の足の上に乗っている体重は人一人分にしてはやけに軽い。
しかしズボンの布越しに染みこむ体温が確かにシモンがいることを伝えた。遅ればせ泡を食うロシウに呆れ顔を見せたシモンはジャケット以外にはゴーグルをつけているだけで、少年の足を挟んで座っている腰回りを隠すべき下着も服も無い。それに気付いて背中を仰け反らせたロシウは強かに椅子の背に後頭部を打ちつけた。
「なにしてるんだ」
隈に縁取られた目を眇めたシモンが黒髪の頭に手を伸ばす。患部には届かず耳の上あたりを撫でられ、そうしてやっとロシウは自分がほぼ裸のシモンに乗り上げられていることに気付いた。ロシウの首の横を通って骨の形が解る程細い腕が彼女の体勢を支え、従って前を開いた上着を押し上げ存在を主張している乳房が目の前に来る。動いた所為で揺れる脂肪の塊を視界に捉え意識を飛ばしそうになりながら慌ててロシウは目を閉じた。
「シ、シモンさん!」
やっと働いた喉から押し出した声が裏返る。今更瞳を閉ざしたところで既に白い肌の色も痩せぎすでも明らかに女性の丸みを持つ身体の形も脳裏に焼き付いて瞼に浮かんできた。それを厭って頭を揺らしてもどうしても消えてくれない。泣きそうになりながらもう一度シモンの名を呼んでも体温は離れてくれなかった。離れて欲しいと訴えようにも舌が固まって口が動かない。他人の体温や肌の感触が気持ちいいのだと認められない少年は、言葉の代わりに態度で示そうとした。
手が胸の丸みに触れたのは故意ではない。目をつぶったまま押し返そうと腕を突っ張る場所を探しただけだ。
普通の肌より更に柔らかなものが最初何だか解らずに思わず瞼を開く。そうして自分の指がシモンの乳房に埋まっているのを認めたロシウは狼狽えつつもどうにか手を離した。
痺れた様に宙を掻く指先に写し取った感触と体温を嫌が応にも反芻して生真面目な少年は耳まで赤くなる。謝罪も拒絶も言えない彼を見下ろす灰色の眼から逃がれて黒い視線があらぬ方向に向いた。
が、離れる仕種を途中まで見送ったシモンはほっそりした指をロシウのそれに絡める。
「もっと触れば?」
彼女は力が抜けている腕を引き、自らロシウの掌に体を寄せる。重なったままの指がもう一度シモンの胸元に触れさせられた。上から操られて胸に押しつけられた少年の指が痙攣する。その動きで指の腹が色の薄い乳首を弾いてシモンが墨を掃いたような目元を歪めた。
痛みを報せるような表情に脅えて逃げようとした手を抑えたまま、痩せたうなじを伸ばしたシモンの唇がロシウの耳元で囁く。
「見てたんだろ?」
密やかな呟きだけでなく舌が動く小さな水音も体温に近い温度の呼吸も流し込まれて少年の背筋がざわめいた。落ち着かなさにロシウは身を竦める。責められることに怯えている所為だと思ったのは本人で、反応を正しく理解したのはシモンの方だった。
「…教えてやろうか? 気持ち良くなる、方法」
返事も待たず片手で器用に帯を外し、緩んだ腰周りから手を突っ込む。遠慮のない無体ぶりに流石に暴れようとしたロシウの耳を近い位置に居残っていた唇が噛んだ。さしてきつくもなく、しかし確かに歯を食いこまされてロシウは首根っこを抑えられたように錯覚する。
ケープに覆われた肩が意図せず竦み上がった。
「別に痛くないだろ?」
からかう口調を乗せる他人の舌が耳朶を舐める。逃げようにも背もたれに体を押し付けるのが限界のロシウにシモンが体を枝垂れかけさせた。服越しとはいえ下着もない胸を未発達の胸筋に擦りつけられれば嫌でも先端が硬く尖っているのが解る。目を白黒させるロシウの脇腹を支えになることを放棄した白い掌が撫で下ろした。くすぐったいだけではない感覚が脳を混乱させている隙に、うっすら汗をかく手に落ちて来たシモンのそれが重なった。
彼女の両手はまるで別の生き物のようにうごめく。成す術なく小刻みに震えるロシウの指の付け根を撫でさすり、或は黒いシャツの下に潜り込んで子供から脱却しきらない腹の線を辿るかと思えばへそをひっかいてきた。
乱暴ではない、しかし優しいとも思えない刺激にロシウは逐一反応を示す。短い呼吸や引き攣る声、震える背筋を眺めながらシモンはまた耳たぶを唇で挟んだ。
その刺激がロシウの逃避願望を高め、彼はやっともう一度年かさの娘を振り払おうと試みる。
だが先んじてシモンは末端の動きを止めてロシウに虚を作らせた。延々続いた刺激が断ち切られたことで開放を期待した少年はするはずだった抵抗を納めてしまう。
ある意味素直に人を信じた反応を勿論シモンは裏切った。戦いの中脂肪の削ぎ落とされた身体をロシウに預けきり、口許が触れる耳元を声で揺らす。
「したことないのか、こういうの」
ある訳がない。
叫ぼうとした声がまたもシモンに封じ込められた。緩んだズボンのウェストから手が滑り込み、下着の中に入り込む。全く予期していなかった行為に意味を持たない情けない声が漏れたが娘の手は迷わなかった。
なにをされているのかわからずグレン団のマークが刻印された背中を不安げに見下ろしていた目が見開く。男の急所をかさついた指に握られたのだ。
「ちょっ…!」
あまりのことに制止の言葉すら紡げない。
他人に触れてほしくはない場所だ。急所で、汚くて、大事な場所で、シモンさんは女の子で、そんなところ触っていいはずがない。言いたいことは山ほど浮かんだがどれも形にならないうちに、付け根から形を確かめてはい上がったシモンの指が先端手前の括れを摩った。
「なんだ、剥けてるのか」
あっけらかんと事実を確認する言葉に一瞬ロシウも状態を忘れた。
「え、だ、だって普通でしょう。割礼すれば」
言うべきことを置き去りにした科白は一種の自己防衛だったのかもしれない。吃音のようにつっかえた言葉尻を、きょとりと首を傾げたシモンが繰り返した。
「かつれい?」
そんな所作をしていれば彼女はダイグレンに乗り込む前とあまり変わらずに見える。目の下の隈も細身から胸ばかりが強調された痩せぎすへと変わった体つきも、なにより笑顔を失ったことも僅かに意識から外れた。
内容と場所と恰好の異常さもついでに頭から飛ぶ。
「…シモンさんのところでは、なかったんですか」
延びた藍色を揺らしてシモンが否定を示した。
「なに、それ」
久々に質問を受け、思わずロシウは普段なら躊躇するような知識を口に乗せる。
「男の赤ちゃんの、ええと…その、性器の皮を切り取るんです」
瞬きしながら説明を咀嚼した少女が目を丸くして俯く。衣服の下で指を這わせた部位を見下ろした彼女はぽそりと問い掛けを重ねた。
「…痛くないの?」
律義な少年も無論赤子の頃の記憶は無い。が、司祭の手元で育てられた彼は村の儀式に同席した経験も多かった。故に容易に答えはみつかる。
「少なくとも、ギミーの時は平気そうでした」
そう遠くない過去ではこうしてお互い知らない知識をやり取りするのは常のことだった。村同士の交流がない場所で育った二人には常識の差異は数多い。地上に出て来たばかりのロシウは歳の近い少女に勝手を尋ねることが多かったし、少年がリーロンに師事し始めてからはシモンも彼に知識を求める機会が増えた。
懐かしいというには近しい、だからこそ失ったことを恐れていた空気を取り戻した気分でロシウは言葉に縋る。
だが知るべきことを知ったシモンは未練もなく会話から離れた。
「ふうん」
気の無い返事を添え、形を覚えるように握られ、或いは撫で回される刺激で竿にあっさりと血が集まる。
「や、やめてくださいっ!」
結局会話が役立ったのは、ロシウの発声を促したことだけだった。捕まったままの片手を振り切れない少年は、余った手で上からシモンの指を剥がそうとして自分の肌着に邪魔される。
服の中で自分を包むシモンに触ることも自分の分身に触りかねないことにも戸惑われ、かといってこのままではいられないが自ら下着を下ろすこともままならなかった。羞恥心が高ぶりすぎて違う感情に変化してきた気すらする。喉奥から唸り声が押し出されるもシモンは肉塊をなぶることをやめなかった。這わせた掌から体温を染み込ませ、指が裏の継ぎ目を擦り、くびれをこそぎ、先端の粘膜をくじる。
「だっ…め、ですっ!」
下腹を締め付ける異様な感触がロシウに悲鳴同様の拒絶を上げさせた。しかし熱心に年下を追い詰める娘は鼻先どうしが触れる距離でまた質問を繰り返す。
「なにが駄目なんだ?」
解りきったことを尋ねられ、歯ぎしりしていたロシウは切迫感に叫んだ。
「僕、のっ!…そんな場所、触らないで下さぃい!」
逃げるために背もたれに腰を擦り付ける動きで無駄に刺激を増やして甲高い音が語尾を飲み込む。
恨めしげにシモンを映す瞳は涙さえ浮かんでいた。敬謙な村で育った彼にはとても許容出来ない。
「どうして駄目なんだ?」
だというのに少女はしつこく質問を続けた。根本で揺れる嚢をつつき、逸れた首を舌で舐める。
「神様に、叱られるから?」
言葉もない姿を見守り口にした代弁を認めてロシウが何度も頷いた。延びた黒髪がぱさぱさと操縦席を叩く。拒む意思を示して固く閉じた瞼にシモンはやけに優しく接吻した。
「ロシウ、神様なんてどこにもいないよ。顔神はただの機械の塊だったじゃないか」
言った先から否定して、宥める仕草で頬を摩る。身を竦めたロシウの耳に忍び笑いが流し込まれた。
前触れなくシモンの指が性器を放し息をつくのもつかの間、次の瞬間には下着を引き下ろされ固くなった部位が外気に触れる。座ったままでは全て脱がすことは不可能だが悪戯する方にとっては充分だった。
「シモンさん!?」
声がどれだけ無力かを教えこまされながらもまだ叫ぶロシウに、あくまでも柔らかな声音が告げる。
「ロシウは座っていればいいよ」
言葉が終わるが早いか、太腿の上に預けられていた体重が減った。腰を浮かせたシモンは自分が勃たせたロシウの男根をさっきより少しだけ強く握る。痛みを予感して震えた少年に彼女は薄く笑った。
「…これくらいなら、大丈夫だな」
全く以って大丈夫ではないロシウ本人を無視して結論が下される。根本を掌で支えながら、シモンは膝を擦って更に相手との距離を詰めた。
身長差があまりない二人は片方が膝立ちになればそちらが見下ろす形になる。下を向きどうにか呼吸を整えようとしている黒髪をそっと白い指が撫でて引き寄せた。
次は何をされるのか不安に満ちた少年が僅かに顎を引いたのと同時に彼の鼻面がシモンの胸の谷間に埋まる。
「ふぎゃ!?」
今はどこかに身を潜ませた少女の相棒にも似た悲鳴が上がった。そのまま口を閉じようにも押し付けられた乳房に歯を立てる羽目になりそうで上手く行かない。逃れようともがく動きで余計膨らみに頬を擦ることに気付いてロシウはまた固まった。両手は所在無く宙を掻く。
抵抗が静まったのはシモンにとって好都合だった。ロシウの首に片腕を絡ませて寄り添う体が沈み込む。二人に挟まれ形に沿って胸の脂肪が歪んだ。
ロシウの腰を挟んで置かれている膝が臀を下ろせば当然股座はそそり立つ彼の逸物に触れる。熱く潤んだ入口に先端が潜り込もうとした。やわやわ蠕く粘膜に鈴口を愛撫され、意味を考える前にロシウの眼裏に光が走る。
その隙にずり落ちてきたシモンの唇がロシウのそれに重なった。延びてきた舌がかさかさに渇いた口元を舐める。しかし身体を満たす電流から逃れるため歯を食いしばった彼の口内までは入り込めなかった。
一度離れたシモンは仕方なさそうに息を吐く。許されたかと有り得ない夢想を描いたロシウは次の瞬間鼻を摘み上げられていた。驚く合間にまたも唇が奪われる。首に居座る腕から指が延びて顎を捕まえられた。ただでさえ心臓が暴れ回っている今、ロシウも呼気を長く堪えてはいられない。
酸素を求めて開いた口啌へ代わりに舌がなだれ込んだ。同じ器官が絡み合い、水音を立てて擦られる。開きっぱなしになった口端から無様に唾液が落ちた。痙攣する舌だけでなく歯列から歯茎をなぞられ何もないはずの口の天井を撫で回される。好き放題に弄られる度に何故か腰が揺れた。
本人は自分の動作がシモンの女性器に棹を押し込もうとする動きに酷似していると気付かない。が、息をさせるため唇を開放したシモンは別だ。彼女は頭に血を昇らせ朦朧とし始めたロシウの濡れた口周りを舐めて囁く。
「じゃあ、しようか」
前触れは呆気ないその一言のみだった。
曲がりなりにも緊張を保っていたシモンの腿が力を抜く。触れ合っていた粘膜は待ち焦がれたようにがちがちに固まったロシウの一端を飲み込んだ。
少女の体が拒絶めいた反応を示したのはほんの少し、少年の一番太い部分を納めるまででしかない。それすら出合い頭の挨拶程度のものだった。きつく閉じた肉の袷を亀頭がこじ開けていく。
柔らかく解けた隘路に受け止められ、吸い付かれる心地よさにロシウは短く荒い息を繰り返した。鮮明な刺激は彼の思考を寸断する。
シモンさん。譫言じみた囁きを重ねた彼の背をしなやかな手が宥めた。
そんなものでは足りないと荒れ狂う熱が恋しい人を抱き寄せさせる。
これまでまともに働かなかったロシウの腕は今や背骨を折らんばかりに痩せた娘に縋りついていた。差し込むのが性器だけでは足りないと指先に力が篭り青いジャケット越しの肌へ爪を食い込ませる。
「気持ち、イイ?」
当たり前のことを尋ねたシモンが細腰を揺らした。じゅぷりと卑猥な音を立てて彼女の内側がロシウのものになすりつけられる。夢中で頷き黒髪を乱した少年は、言葉の代わりに少女の胸元に噛み付いた。埒外の刺激にシモンの体が跳ねる。
うねる内壁に味を占めた身体はもう何も考えずに相手の身体を貪りだした。掻き抱いた身も自身も乱暴に揺らして止まらなくなる。引っ切り無しに漏れる甲高い声がどちらのものなのか判別はつかなかった。
「ロシウ」
舌足らずに自分を呼んだ声の甘さが脳をぐずぐずに煮溶かす。ロシウがシモンを呼ぶ言葉は声にすらならなくなり始めていた。身の内を駆け巡る電流は血と共に性器に流れ込み、一回突き上げるたび彼の神経を発火させる。
切迫感の終わりが近いことが初めてでも分かった。きゅうきゅう抱き留めるシモンの粘膜も次第に蠕動が速まっている。あと少しだと舌なめずりしたのは意思ではなく本能だった。汗でべったり張り付いた衣服が酷く邪魔だ。これさえなければシモンさんの皮膚に直接触れるのに、どうして。
苛立たしく思ったことが、ふいに彼の正気を呼び戻した。
自分が脱いでいないのは、そもそもこんなことはしちゃいけないから。背筋に冷たい悪寒と快楽の熱が同時に走る。駄目だと思い出したのに一度暴走した身体は今更止まらなかった。
罪の意識すら糧にして、これ以上なく膨張していた肉塊が弾ける。同時に彼を支配していた狂暴な衝動まで砕け散った。気持ち良くてしかたないのに恐ろしくてたまらない。
どくどくと、鼓動と共に少女の体に精液を吐き散らしながらロシウは泣き出した。
「ごめんなさい。シモンさん、ごめんなさい。ごめんなさい」
許しを乞うことの他は忘れた少年に体をもたれかけさせた少女は、降り注ぐ謝罪と涙を受けてゆっくり頭を上げる。断罪に怯えるロシウはますます身も世もなくしゃくり上げ出していた。
直前まであれほど情熱的に体を繋げていた娘はあっさりと膝を立ててくわえ込んでいたロシウの一部を引きずり出す。べたべたに汚れたシモンと自分の股間を眼に写してロシウは震え出した。
「…なんで泣くんだ」
その様子を眺め、喘ぐ甘さを無くした声が問う。それは心底の疑問だったが、言われた方には自らの告発を求められたも同然だった。
「だ、だって赤ちゃん出来ちゃ…!」
治まらない息で必死に訴えたロシウに、シモンはきょとりと首を傾げる。危機感のかけらもない所作は流石に自罰へ捕われた少年にも異常を感じ取らせた。
「ロシウの村じゃ、無かったのか?」
なにがと涙目を向けて問い掛けたロシウを置き去りにシモンはグレンの座席から降りる。床にぺったり腰を下ろした彼女はロシウの膝に肘を置いた。
答えるためではなく開いた口が、ロシウの白濁とシモンの愛液にまみれた器官に近づく。なにをと眼を見開いたロシウが止めるのも待たず彼女の口啌はまだしこりを残す性器を収めた。戸惑いなく飲み込む姿に驚愕した直後、さっきまで包まれていた部位とはまた違う温もりを感じ取ってロシウの体が震える。
「ん…」
落ち着かせるためなのか少年の生え揃いきらない毛を指が撫でつつ陰嚢のすぐ傍、根本を唇が締め付けた。舌が幹を舐め清め、すぼまった唇は表面の凹凸を拭って先端に近づく。
最後にシモンは亀頭だけを口に含んで鈴口に残る精液を吸い出し、ぷはっと息とロシウの性器を吐き出した。
それで作業が終わったのか、彼女は手の甲で自分の口元を拭いながら立ち上がる。未だじんじんと疼く自分のものから視線を反らした黒い瞳は、逃れた先に暗闇に浮かぶ生白い足音と伝う体液を見つけて息を飲んだ。とろみのある液が滲む部位まで視界に納めてしまい、また股間に血を集めかねずにロシウは必死で眼を閉じる。どうにかこうにか熱を追い出すために別のことを考えようとして、直前の疑問に突き当たった。
「なかっ、た、って…なにが」
一定しない音量で尋ねるロシウにどうしようもなく感慨のない答えが戻る。
「性欲処理するガキ」
短い言葉に脳を揺さぶられた少年が驚愕のまま瞼を開いた。だが彼の反応の大きさと対照的にシモンは世間話として説明を続ける。
「ロシウのとこみたいとは言わないけど、やっぱり人が増えすぎると困るだろ?
だから孤児が大人の相手するんだよ。腹の中ぶっ壊して、子供出来ないようにしてさ。
親の居ない子供だったら地震の所為で山ほどいたから」
語る口調は何気ないものだった。だからこそロシウは脚の付け根に纏った粘液を指で刮げながら告げる娘を凝視する。続く内容が予想出来すぎて、汗を掃いた肌が急速に冷えた。
「俺ん中もからっぽ。だから、出しても平気」
汚れた手が本人のヘソの下を突く。誘われた瞳がそれを注視してついでに視界に収めた直下に一本すら毛が無いこと認めおののいた。骨の形がうっすら見えるような身体がいっそ不格好な程胸を突き出していることの異常性をやっとロシウは理解する。
だがシモンは言葉を失った少年のことを気にかけもせず天井のドリルに眼を向けた。
「ブータ」
平素の呼び声に応え少女の相方がグレンのコクピットに落ちてくる。ご丁寧にも彼女の余った衣服まで一緒だった。
「ロシウ。ズボン貸すから、着替え取ってきてくれよ」
シモンは自らの指を舐めて汚れを落とし、慣れた手つきで服をロシウに投げる。半ば自失していたロシウはすぐには動けず頭に見慣れた半ズボンを被る羽目になった。間抜けた姿に大袈裟に肩をそびやかせたシモンはズボンの裾を持ち上げてロシウの顔を覗き込む。
「服の汚れはどうしようもないだろ?」
彼女が指さしたのはさっきまで腰を降ろしていた床だった。呼び出されたブータが一生懸命べたつきを掃除している。促す声音に視線を下ろし、ロシウは何度か口を空回りさせた後にどうにか声を絞り出す。
「…シモンさん、どうしてこんなこと」
「暇つぶし」
をするんですか。皆まで言わせず断ち切って、シモンは藍色の髪を掻いた。やっとの想いで問うた言葉を無碍にされたロシウは勢いよく顔を上げる。納得出来ないでいる彼を冷めた瞳が見返した。シモンはうるさいと言わんばかりに手をふる。
「ロシウだって気持ちよかったんだろ。それでいいじゃないか」
図星、を刺されて一瞬ロシウは言葉に詰まった。与えられた快楽に溺れたのは確かなことで、でもそれとこれとは違うはずだと彼は自分を奮い立たせる。
「だからってこんなことするのはおかしいです!」
しかし投げつけた問い詰めもシモンには一蹴された。
「最初に覗き見したのはロシウだ。別に俺は一人で良かった」
事実はロシウから反論を奪う。言いたいことは山ほどあるのにどうしてもまとまらず、目の前が真っ赤になるほどの怒りだけが湧いてきた。シモンは鼻を鳴らして肩を竦める。
「いいから服取ってきてくれ。
それとももう一度したいのか?」
病的な隈取りを持つ瞳が挑発を浮かべる。憤怒を煽る態度に拳を握りながらもロシウは結局それを解いた。
グレンに乗り込む前にも思ったことだ。自分の諫めはどうやってもシモンには届かない。
意気消沈した少年を更にもう一回シモンが促した。空しい気分で腰を上げてロシウは言われるままグレンを後にする。
彼にはどうしても、彼女が何を考えているのかが判らなかった。
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