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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.11.23,Sat
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2008.09.12,Fri
色々詰め込んだ所為でゴタゴタしています。
文章自体の読みづらさと情報の読み取りづらさが渾然一体となって酷いことに…!
なんだろう、あの、説明回なのだなあと思って斜め読みして頂ければ。

・カミナシティ、政府が未熟でてんやわんや
・シモン、恋心と実情の狭間でキリキリ舞
・ロシウもそろそろ体力の限界です

…三行で説明できちゃったー(ガビーン)!?






紅の機体は一度ふわりと柔らかな弧を描いて空中を旋回した後、蒼天に吸い込まれるようにして急上昇し、そこから重力に全てを任せた。試験場の地面に引かれた白いラインを目指して落ちてきた人型機械は人一人分もない近さまで迫ったところで不意に風を纏う。途端に重さを忘れたかのように空へ羽ばたき、まるで踊るように複雑な軌跡を描いた。鋭角的なデザインに鋭い顔つきを負った新型機はその動きだけでどことなく無邪気な印象を着込む。子供と言うには乱暴さが足りず、乙女と呼ぶには繊細さの足りない真紅の少女はたっぷり10分の舞を収めると規定の位置へ降り立った。
動きを止めてしまえばその製造目的たる兵器としての側面が浮き彫りになる。重い音を立ててハッチが開き、入れ替わる空気にパイロットが深呼吸した。その間を待って管制室から観察を続けていた制作者が問いかける。
「どんなもんかしらね。出力上がった分、姿勢制御に難が出そうだったからバランサー強化してみたんだけど」
まるで自分の身体であるかのように機体を操ってしまう操縦者のデータでは、外から見ても狂いや問題は分からなかった。その程度は腕前で覆い隠してしまう。真摯な表情を見せる性別不詳のメカニックへゴーグルを引き上げた操縦者は慣れたように応じた。
「ちょっと引っ張られる感じがするかな。足下確定してくれるのは有り難いけど、もう少し慣性が残ってくれると俺はやりやすい」
好みの差かもしれないと控えめに告げる言葉が信頼に足ることを機械工は熟知している。
「そう、じゃそっちで調整してみましょうか」
大きく頷いた彼(彼女?)に降りてくるよう促され、幼く見える操縦者の表情が曇った。もう少し乗っていたいと雄弁に語るその顔に苦笑しながら設計者は窘める。
「駄目よ?元々、30分だけって約束で貴方を借りてきたんだから」
既にここに来る前に言い含められていた現実にパイロットが肩を落とした。細い体を包みその稜線を浮き彫りにするパイロットスーツの締めつけに逆らうようにそこだけ似合わない成長を見せる乳房が揺れる。心底残念そうに溜息をついた彼女の肩に乗り上げた小さな獣が頬を舐めた。
「シモン?」
促す仕草と機械工の言葉に、シモンは諦めて頷く。
「解ってる。ロンさん」
重い腰を上げた彼女は小さな身体に見合った身軽さで膝をついた新型機から抜け出した。調整と整備担当のメカニック達にお疲れ様ですと言われる度律儀に言葉を返す彼女に、一人不満な顔を見せている少年が近づく。彼は新型機を見上げ、それからシモンをみつめ、大仰に肩を竦めた。
「なんで俺じゃなくてシモンさんがテストパイロットなんだよ」
拗ねた声で訴える、外見上は殆ど同年代にしか見えない年下の少年にシモンは苦笑を向ける。彼女は更にそばかすの頬を膨らませた彼の頭へ無造作に手を伸ばして撫でた。
「役得に決まってるじゃないか、ギミー」
お前と違って俺は毎日乗れる訳じゃないんだしと付け足した年上に、政府の擁する治安維持部隊のエースはそっぽを向いて不満を示す。
「補佐官様がこんなことしてていいのかよ」
「心配して貰わなくても、これから会議だよ俺は」
うんざりした顔で周囲の失笑を得ながらシモンは抱え込んでいたヘルメットをギミーに渡した。
「ロンさんに頼んで乗せて貰えよ、新型」
悪戯っぽく言い残してシモンは更衣室へと足を向ける。指摘されたとおりスケジュールはタイトだ。
個室に入ったシモンは身体にぴったりと吸い付くコスチュームを引き剥がして深呼吸する。その表情は陰鬱で、若く伸びやかな肢体とは対照的だった。
「これから会議かあ…」
呟きさえも憂鬱そうに、スーツを所定の位置へと戻したカミナシティ総司令補佐官はロッカーの中から白い制服を取り出す。動き易いように裾を短く切り、袖口は折りたたまれていた。それでも左胸には三つの星が描かれて彼女の高い階級を示す。
仕事の忙しさから光浴が減り、白さを増した肌が衣服に締め付けられた。制服だけでも肩が凝る、とでも言いたげにシモンは手櫛でざっと髪を直す。鏡の中には充分魅惑的なプロポーションと笑えば愛らしかろう貌が映っているものの、本人はそれを全く価値あるとは考えて居なかった。
昔から自己価値には否定的な相棒の肩に駆け上がったブータが紅い布を手渡す。
「ありがとう、ブータ」
その瞬間は頬を綻ばせ、シモンはまくり上げた袖の上へとトレードマークとも言える布を結びつけた。身支度を追えた彼女は個室を去り、カーテンを開け放たれた窓の眩しさに目を細める。
先ほどまで舞っていた空の青さに心惹かれた彼女は窓辺へと足を伸ばし、けれど空の広さに心躍らす前に眼窩へ広がる巨大な都市にまた暗然とした容貌を取り戻した。
このカミナシティ、その中心たる総司令部は未だ闘争の坩堝の中にある。今や戦いとは血ではなく虚言を流すものへと変貌していた。
つまるところ螺旋王を倒した後に作り出されたカミナシティとは新しい村に他ならない。それを率いる者達は嫌が応にも戦闘集団から変質せざるを得ず、そして本人達の意志の如何を問わずシティはコミュニティ間抗争の中心となった。
来たい者ならば誰でも受け入れる。まずはその姿勢が災いした。
進んで地上に出る者とは決まって好奇心旺盛な若者たちであり、彼等は村の労働力だ。それが一時に大量に流出するとなれば村のシステムは崩壊する。反発は必至だった。
取りも直さずその構図は螺旋王に対した時と同じく旧権力と新興勢力の対峙を示したのである。
更に旧テッペリンが所有する技術力がその混迷を深めた。技術の保有はそのまま村の豊かさに直結する。元より人間解放を唱っていたシモン達からすれば技術を分配することに惜しみなど無いが、現実はそうもいかなかった。
依然として存在する共同体意識が村どうしの利権戦争を活発化させたからだ。
無尽蔵に新技術を手渡せば不平等を訴えられる。情報を渡さないのならこちらも人口など伝えない、そんな主張が幅を効かせるまでには時間など必要なかった。中にはアダイ以上に地上と隔絶した村もあり、その位置の特定は困難を極める。
次々とわき上がる問題の全てを順序よく整頓するには大グレン団…政府、と新しい名を賜った集団は素人にも程があった。
英雄カミナのカリスマ性の元、螺旋王の脅威が去ったと知って集まった人々をどうにか捌いていた辺りが本来は限界だったのだろう。人数が増えて来るに連れ食糧配給が困難を持ってくれば村で資材の采配を行っていたダヤッカが混乱を鎮め、あちらこちらでたわいもない理由から起こる喧嘩をキタンが止めさせに走り、子供達の面倒をみていたジョーガンバリンボー双子がなんとなく子供の親たちとも知り合い名簿を作る。そんな拙い集団であっても強力な技術力と戦勝という功績を背景に政府と呼ばれるに至ったのだ。
だがそんな政府に切り盛りされる集落としてのカミナシティは非常に脆弱な存在だと言わざるを得ない。食糧自給率は限りなく低く、反面サービス業が発展しすぎている。螺旋王が有していた技術を基盤に生み出されたこの町はあまりにも巨大な歓楽街と呼べた。
言ってしまえばカミナシティが他の村々に対抗しうる産業は、古来の人々が残した技術を解読したものでしかない。それですら文明の均等化という目的を前にすれば秘匿が許されるものではなかった。
千年前から連綿と続く地下集落との連携は、同時に古くからの利権構造との対立も意味する。ここでも大グレン団が戦うものは過去から受け継がれてきたものだった。そして今や螺旋王の生み出した蓋を失い、人間達の欲、生きる為の謀略は地上で複雑な潮流を描いている。カミナシティはその荒海を渡るため、自壊を防ぎながら波を読む手腕を求められていた。
その一方で巨躯を支える屋台骨である政府陣はそれを担うには余りにも未熟だ。そもそもが戦闘集団、しかも短期決戦のために急増された組織である。性質はむしろ賊に近い。人間の統率を行うのはお門違いというものだ。
それでも民衆が己等の中から統治者たる能力を持つ者を輩し、更にそこから選出するだけのレベルを持つまでは大グレン団のカリスマ性で街の形を留めるしかない。そこにしか依り代はなかった。
だが恐ろしいのは人々が、この街が巨大で、複雑な構造を要するが故に、政府の内情を察することがないという点だ。50人の小さな村であれば互いに顔見知り、しかし30万人を擁する都市では政府と市民の間には幾層もの壁が存在している。
それはカミナシティのインフラに利用されている機械を一般市民が修理する技術を持たないことにも似ていた。日常使っておきながら、その本質を理解していない。何が良くて何が悪いのかの判断基準すら持ち合わせては居ないのだ。
故に簡単に不満は噴出する。苛立ちは募る。30万の規模で、日々休むこともなく。
もしカミナシティの住民達が現在の政府に不満を抱き、大グレン団だった者の中に権力へ固執している者が居ると解れば明日にでも攻撃が始まるだろう。それは単純な腕力の争いではない。文字が、言葉が、音が、新聞が、雑誌が、ラジオが、テレビが、メディアが砲撃を繰り返す。カミナシティのぐらついた櫓はそれで傾き、いともたやすく瓦解を招くだろう。
なにが便利なのかがもうシモンには解らない。
建築物の堅牢さと真逆の不安感を憶え、シモンの足はたたらを踏んだ。砂上の楼閣に居るという意識はかつて地下で地震に怯えていた頃の感情を喚起させる。窓に触れようとした手を引き戻しシモンは大きく肩を落とした。
カミナを、ニアをテッペリンに届け、満足したはずだった。
だがダイグレンを奪ったときと同じようにシモンはその命を長らえ、こうして身に余るものを守るため奔走している。
最初はカミナが望むように道を掘り上げる手伝いをしていたはずが、シモンのドリルはありとあらゆる欲望を巻き込んでカミナシティという都市を削り形作るようになっていた。
その中で見失いそうになる自分の意志を確認すれば、百万の猿という言葉が脳裏に浮かぶ。頭痛さえ伴う単語に縛られてシモンは足掻いていた。見下ろす都市に既に30万人、確認の遅れを考慮すればいつ限界を超えてもおかしくはない。
本当に魂の底で望むのは世界などという巨大なものを導くことではないと知りながら、螺旋王ロージェノムの言葉を無視する道は選べなかった。透明なガラスから離れた手指を握りしめ、そしてシモンは慌てて壁に掛けられた時計を見上げる。
本来は外を眺める時間の余裕など無いことを思いだしたシモンは慌てて更衣室から踏み出す。膝より短く切りつめたスカートの裾からこの七年で女らしい柔らかさを持つようになった太ももが覗くが、本人はそんなことを意識しなかった。子供から女へと否応なく成長した彼女はそれと同じように義務と責任をその身に詰め込まれている。会議に遅れることは許されなかった。
その会議、というものを憎んですらいるような人の姿が眼裏に浮かびシモンは一瞬足を止める。確かに彼は巨大都市の支配者として君臨することなど望んではいなかった。けれど状況も、そしてシモンの心もそれを許さない。
カミナを解き放たないこと。余人には叶わなかったはずのそれを都市機能の助けを借りて実行している己の罪悪にシモンは吐き気を感じた。それでも彼が何処かへ飛び立つ姿は彼女の心臓を刺すような鋭さを持つ。恋心、などではないだろう。最早固執だ。地下から自分たちを引きずり出した責任を取れと、まるでカミナシティや村々の人間達のように喚いているのと同じこと。
カミナのために道を造るという一番の目的をいつ見失ったのか、シモンにはもう思い出せなかった。
或いはあのロージェノムの遺した言葉故なのか。幾度も彼女を絡め取った思惟は道行きを鈍らせる。
それでも会議室へとどうにか近づいていたシモンは、角を曲がって廊下の隅に見つけた相手に血相を変えた。脚が速度を取り戻し、長く伸ばした髪に覆われた背を曲げて壁に寄りかかる友人へと駆け寄る。ずるりと腰を落としていたのはロシウだった。
「ロシウ、大丈夫か?」
屈み込み、シモンは友人の顔を覗きながら抱え込んだ書類を引き抜く。案の定内容は分散出来るものだった。他部署に頼めないレベルの仕事が増え、そうなってくると頼めるはずのものまで託せなくなっていく。首脳陣の誰もが政治に無関心且つ無気力ではそうなるのもむべなるかなだ。
「…大丈夫、すみません。貧血です」
青白い顔で無理して笑う様が痛々しく、シモンは白い制服の背中を撫でてから黒髪を指で弄る。政局に抜本的な解決策が無い今、ロシウにはどうしても頼らざるをえない。
元々村で支配者層としての教育を受けていたロシウの負担はこうして大きくなっていくばかりだ。歳を追う毎にそれは彼女自身を押しつぶしてしまうような重量を持つようになっている。
それでも、誰かが動かなければならない。
都市を支えるという自覚を持つ仲間の少なさに、その少数派に含まれているシモンは胸中で大きく息を吐いた。
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