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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.04.27,Sat
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2007.11.21,Wed
放置しておいたら何を主眼に据えようとしたのか忘れました。
シモンとロシウの立ち位置差みたいなものだったはずなのですが…
無駄な部分を削いで文章を多少整えて一応載せてみる所存。
コレ書いた時たしか腕時計買うかすげー迷ってた






定時を告げる鐘の音が総司令室にも響き渡る。本来ならばその日最後になるはずの、だがとうに例外に満ちてしまった書類回収に補佐官が姿を現した。
今日も時間ぴったりだ。
机の端に備えられた時計を横目に総司令は苦笑する。
こつこつと時を刻む音はロシウの足音に似ていた。ずれることなく几帳面な律音に追い立てられるようにして更に二枚へサインを済ませ、手荒に紙を束ねたところで病身と重なっていた補佐官の足音が止まる。
「総司令」
己には似合わない仰々しい呼び名に肩を竦め、シモンは書類を差し出した。
「失礼します」
付き合いの長さを感じさせない声音と仕種で受け取った紙を数えるロシウを目の端に捉え、更に机に積まれた書類を手元へ引き寄せる。手習いの如く一つ覚えに名前を記された紙がまた一枚二枚と重なった。薄っぺらな一枚がどれだけの効力を持つのかまるで冗談にしか思えない。
白けた気分で手持ち無沙汰に窓の外を眺めればもう随分暗かった。ついこの間まで定刻の空は明るかったように思ったのだが、季節は知らぬうちに移ろったと見える。
空調に支配された部屋に四季を伝えるのは陽光ばかりだ。
日の入り刻が時節によって変わるなど、夜の帳が落ちれば寝ていた頃には思いも寄らなかった。まして地下の世界など、偽の明かりで昼夜をわけていたのだから変化などありようがない。
気温が下がれば日が短くなると知ったのはそう遠い昔ではなかった。にもかかわらずその知識は疾うに思考にこびりついている。
「…不思議なもんだな」
ペンを握ったままの手指で時計の文字盤を弾いた動きに釣られてロシウが顔を上げた。訝しげな顔をする補佐官を見上げ総司令は口端を軽く持ち上げる。
「昔は正確な時間なんて誰も判らなかった。明確な昼と夜さえなかった。
 ただ昨日があって、今日がある。
 …絶対的な暦なんて俺たちは必要としていなかったはずなのに」
思えば約束など、何日後にとたったそれだけでよかったのだ。
そも、あまりに遠い日の約束など叶える前に死ぬかも知れないのだから。
だが今や人が死ぬ確率は七年前に比べれば格段に低くなっていた。特に乳幼児死亡率の低下には目を瞠るしかない。科学技術に万歳三唱…だがそう素直に喜べるものかと言えばシモンは頷きかねた。
文明とやらが発展すればする程に人は更に欲望を増し、そして囲む山ほどのなにかに身動きがとれなくなっていく。
その、動きを失った最たる青年は無邪気にも見える笑みを漏らした。もう一度くるりと時計の硝子を撫でた指がペンを握り直す。半月後に始めるという下水道整備のための書類にサインをして、次に畜産関係の衛生管理問題に関する会議の開催を認める為に自分の名を記した。あくまでも真面目に、そうでありながらどこか他人事のように己の存在を書き連ねる指先を見下ろしてロシウは小さく呟く。
「一つ、変わらないものはありますよ」
聴かせるつもりがあったのかなかったのか、だが言い出しを耳にして灰色の瞳が上を向いた。怜悧さを表に出した黒い瞳が視線を絡め続く言葉は直前よりはっきりする。
「時は必ず前に進む、ということです」
言い切って補佐官はシモンが確認した書類を自分が抱える紙束の上に足した。その所作を見上げるために顎を上げなければならない自身を認めて穴掘りと呼ばれていた青年は目を眇める。一瞬そこに白ではない服を着た黒髪の少年が見えた気もしたが、やはりどうにも彼もロシウも着込む服は真っ白だった。土が付けばすぐに汚れるような、抜けるような白。
もうシモンがあの古びた藍色のジャケットに腕を通すことは出来なかった。
そして確かに、もう二度と自分よりロシウの方が背が低くなる日など来ない。
間違いを口にしないところは師と同じ、だが更に嘘すら口に出来ない青年はそれ以上なにも言わずに来た時と同じ足音を立てて部屋から出て行った。
揺れる黒髪が扉の向こうに消えるのを眺めシモンは彼の言葉を復唱する。
「前に進むだけ、か」
机に肘をついて時計に鼻面を寄せ、総司令は時間を正しく認識出来ないほど近くで時計を覗き込んだ。こちこちと間抜けなほど正確に重なる音が彼の耳をくすぐる。
「…その割りに、こいつは堂々巡りしてる気もするけどな」
爪でつついた硝子版の向こうで何度も何度も短針を追い抜く長針は、ロシウによく似ていた。
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