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飯は喰いたし、眠気は強し。 そんな感じののらくら雑記帳。
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Posted by - 2024.04.23,Tue
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Posted by 中の人:狐或いは右端 - 2007.11.28,Wed

めのこコンビによる15話Cパート的なイメージ。
裏っかわでカミナがロージェノム倒して大グレン団が勝利に沸き立ってたりとか。
でカミナが「…シモンは?」って言ったところでED挟んでこっちに繋がる感じって言ってみるテスト。
ここから先三部に突入です。







テッペリン中枢部にコアドリルを射し込み、ねじ回し、一瞬の空白の後部屋が渦巻く光で満たされた。
その中心から指が外れ壁に血の痕を残しながら身体がずり落ちる。ごうごうと鼓膜を揺らす音がまるで壁のように外界の情報を締めだした。視界も歪み初め色彩を失い始める。まだ明暗だけはなんとか捉えきれたものの白黒に移り変わった視覚はちらちらノイズ混じりだった。
息をしようとして鼻も喉もおしゃかになっていることに気づく。床に何か液体が散るのが見えて、その出所を思いやっと鼻血であろうということが解った。
床に投げ出された身体はもう動かせたものではない。四肢は断絶したかのように感覚が遠く痛みすらなかった。全身至る所を強打して無事な骨があるのかも定かではない。
室内を踊り狂う光は淡く翠に色付いていたがそれをシモンが知ることはなかった。ただ明るいとしか解らない彼女には自分が本当に成功したのかも知る由はない。自らの思いつきを半死人はぼんやりと反芻する。
…ラガンが、他の機械を支配するのなら。
…テッペリンが、あまりにも巨大なガンメンなのだとするのなら。
そのどちらもが仮定だった。よしんば正しいとしても必要な力がどれほどのものになるか予想もつかない。だが思いついてしまった瞬間から、それはシモンにとって使命となった。
もしテッペリンを、ダイガンザンと同じように奪い取ることが出来れば大グレン団は勝ったも同然。例え意のままに動かせないとしても居城の支配力を失った獣人と螺旋王は混乱を来すはずだ。
それは、彼女の望みを叶える一番の方法だった。
シモンは疾うに決めていた、自分の命はカミナとニアの道を掘り抜けるために使うと。そしてなによりもまず仲間たちの中で犠牲となるのは自分であろうと。
両親の命を糧にして生き残り、その命をカミナに拾われたシモンにとってはカミナを柱とする大グレン団は約束と同じように守るべきものだった。
四天王の残り二将を撃破してから即座に雪崩れ込んだ決戦、その合間に思いついた作戦を仲間達に伝える暇はなかった。たった一人グレンラガンに同乗していたロシウがシモンの考えを受け取りそれが最低限の確率を保持するかどうかを計算したに過ぎない。
最低限、は、決して不可能ではないことの保証だった。
1%にも満たない可能性だった。
しかしそれはシモンを猛らせるには充分に過ぎ、混戦の中グレンラガンはひたすらにテッペリンの動力炉を目指した。他のガンメンとの連携を断って。
あるいは仲間達はシモンが再び暴走したように見えたかも知れない。けれど理解されることを必要としない彼女はそれでも構わなかった。理解を求めるというのなら、命を賭して同道してくれたロシウだけで十二分に過ぎたからだ。
一機のみで中枢部を目指したグレンラガンは大量の敵ガンメンと交戦し、半壊し、立ち塞がるもの全てをいなし、遂に動力炉に至った。その直前獣人が最後の力で降ろした隔壁が閉まるギリギリのところでグレンラガンからラガンを切り離し崩れる入口をこじ開けてこの動力室に潜り込んだのだ。
ラガンのドリルすら砕く障壁を抜けた時、シモンと共に戦い続けたガンメンの装甲は弾け飛んでしまった。破片と共に床へもんどりうち、戦闘で負っていた傷に突撃の勢いまで足されながらも兎に角彼女は目的の地へと至った。
血を流しまともに動かない身体で、ふらつく足取りでラガンのそれによく似た鍵穴へとコアドリルを射し入れ────そして、今彼女はこうして床に伏せっている。
熱を逃がすためなのか動力質の天井は吹き抜けで、その高みにある果てはもう見えなかった。一見天井など無いようにも思える。けれどここは巨大な空洞であり墓穴だ。
主ならぬものに制された動力炉は暴走を始めたのか明滅し部屋に蟠る力の奔流は壁に皹を入れる。ぐらりと部屋が丸ごと揺れ、そして崩れた。
いつか、瓦礫に潰され死ぬ。
度々予言されて来た末路は今まさにシモンを飲み込もうとしていた。前兆のようにぱらぱらと振ってきた欠片が汚れた頬にふりかかる。それを払う体力も彼女にはない、逃げることなど出来ようはずもなかった。
轟音が鳴り響いているのだろうがあまり聞こえない。瞳が映す周囲もやけに暗くなっていた。傷を負っているのに痛みは遠く何も感じない。それは、おそらく、忍び寄る死がもたらす変化だった。
…死ぬ、のかと。
這い寄る虚無にシモンは瞬いた。涙が出る余裕すらない。だが出来るなら彼女は逃げ出したかった。死から。
死んでも良いはずだった、カミナのためならニアのためなら約束のためなら命も惜しくないと思った、それに嘘はない。
考えが図に当たりテッペリンを崩す一助となれたのならば本望だ。
が。
こんなところで、死ぬのだろうか。
こうして瓦礫に埋もれて両親のように死体すら仲間の、ロシウの、ニアのブータのヨーコのリーロンのギミーのダリーのダヤッカのレイテのキタンのキヤルのキヨウのキノンのココ爺のガバルのテツカンのマッケンのジョーガンのバリンボーのゾーシィのアイラックのキッドの、…カミナ、の所に帰ることも出来ずに。
一人淋しく打ち棄てられて誰にも見つけて貰えずにそうして忘れ去られていくのだろうか。
思えば感覚を失った胸郭が凍りついた。
嫌だった。怖かった。
自分が死ぬ、消えてしまう。それはまだいい。誰だって最後は死ぬ、両親に貰ったカミナに救われたこの命が役に立てるのならば胸を張って死ねる。
けれど皆の中から自分が消えてしまうのが怖かった。耐えきれなかった。
穴掘りと呼ばれてどこで野垂れ死んでも村人達に一顧だにされなかった自分。一人で生きて一人で死ぬ自分。今此処で死ねば自分はその頃と全く変わらないように思えた。
嫌だ。
こんなにも嫌悪するのは初めてだった。消えてしまいたいと思った時よりももっとずっと怖かった。なによりも抵抗する術がないという事実がシモンを怯えさせる。
シモンは今になって自分が大グレン団の一員としての居場所がどれだけ大事だったのかを思い知っていた。近くにいてくれたロシウ、ニア、ブータ、ヨーコ、リーロン、ギミーにダリー、そしてカミナ。そんな人々以外のことも仲間と感じ慕っていた自分に気づく。
けれど、無情にもテッペリンは大きく揺れた。
それは王を失った城の断末魔であり動力炉もまた主人に従い滅びの道を歩む。
崩れた天井は容赦なく少女へ向かって降り注いだ。死ぬしかないのだと迫る天井の名残にシモンの指が幽かに床を掻く。その瞬間だった。
「シモンさん!」
聞き慣れた悲鳴が使い物にならないはずの鼓膜を揺らす。あまりにも鮮明な紅が視界を埋め尽くす。しかしそれはシモン自身の悲鳴でも血の色でもなかった。
「シモンさん!」
もう一度呼ばれる、応えたいのに声が出ない。伸ばそうとした手は床に落ちたままだ。それでもシモンの鼓動は確かに強く呼応する。
降り注ぐ破片から倒れたシモンを庇うのは、動力炉の外で戦っていたグレンだった。ラガンと分断されてからも尚戦っていたのだろう。使い物にならなくなったラガンと同じくらいにボロボロで、動力炉に手をついてシモンに覆い被さるのが精々だった。
揺れの残滓が遠のくまでそうして少女を守ったグレンは城だった物にのし掛かられ埋め尽くされて動けないように固められてしまう。長く大グレン団と共に来たガンメンの力はそれで最後だった。
残された役目と言わんばかりに錆び付いた音を立て鉄の唇が開く。支える姿勢で止まったグレンのコクピット、その縁へ即座にブーツが乗った。
「シモンさんっ!!」
叫び、涙で顔をぐしゃぐしゃにしたロシウが足場の悪さも構わずにシモンへ駆け寄る。彼女の黒髪はまとめていた紐が落ちて乱れ、その苦闘を示す。秀でた額にも切り傷と打撲の痕。理知的な顔立ちは痣によって崩されていた。
しかしそんなものはどうでもいいと言わんばかりにロシウは床についた膝へとシモンを抱え上げる。震えながら抱きしめる腕も労って触れる指先も温かく気持ちが良い。直前まで抱えていた虚無も揺れも轟音も消え去り、シモンは酷く静まっていた。さっきまでは恐ろしかったはずの終りがまるで一日の最後に落ちる眠りのようにも思える。
「…ろ、しう」
名を呼ぶ声が出たのは奇跡だったが、シモンにとっては当然だった。血を伝わす唇が動き自分を呼んだと知ったロシウが何度も頷く。
「はい、僕です。シモンさん。僕です、ここにいます」
要領を得ないような言葉を繰り返し首肯する彼女は、シモンとは両極に今まさに死の恐怖に取り憑かれていた。確かに腕の中に捉えたはずの存在は奇妙に軽い。触れただけでぬるりと血を滲ませるその身は刻々と冷えていた。
「ロシウ」
おかしな方向に折れ曲がっている腕が拙く持ち上がる。それが少し前には全く動かなかったことをロシウは知らないが、本来動くはずもないのだと彼女の知能は嫌でも解ってしまった。動かないで、傷が広がる。訴えたいのに戦慄く口許が言葉を続けさせてくれなかった。
かちかちと歯が鳴る。それを慰めるように、べったりとついた痣の上を自身の血にまみれたシモンの指が撫で再び床に落ちた。
「ろし…」
最後まで呼べないままにシモンは微笑む。甘く優しい表情はどうしようもなくロシウを追い詰めた。
「ありが、と…いっ…しょ、…に……」
心底嬉しそうに礼を述べたシモンがそのまま解けていきそうでロシウは壊れた身体を強く引き寄せる。まるでそうすれば命が漏れ出すことを抑えられるとでもいうように。無駄であることを解りながら認めたくないロシウの抵抗を彼女の神が笑ったのか、どうか。
訪れる筈の死よりも速くそれは落ちてきた。
ぼとり。
それは無様な音を立てて叩きつけられた床に転がり黒い池を生み出した。音に釣られて顔を上げたロシウの思考が一瞬断ち切れ、そしてなんであるかを知った彼女の、シモンの双眸が驚愕に見開く。
「…ロー…ジェ、ノム…?」
肩から胸にかけて大きく切り裂かれた巨躯は見紛おうもなかった。身を欠けさせながらもおそらくロシウやシモンより嵩のある肉体は間違いなく螺旋王、ロージェノムその人。
だが一度対峙した時に感じた威圧感は無かった。屍体故かと思えば壮漢は皮肉な笑みを二人に向けてくる。凄味のあるそれに怪我人を抱くロシウの手に力が籠った。
「…」
かつての螺旋の戦士はだが自分を凝視する黒髪の少女ではなく、動力炉を制した娘へと視線を流した。死を目前にして半分瞼の落ちた灰眼が受けて立つ。命燃え尽きようとしても尚友を庇おうとする姿に、螺旋王と呼ばれた男が笑みを深めた。
「百万の猿がこの地に満ちた刻、月は地獄の使者となりて螺旋の星を滅ぼす」
遺体によく似たものに成り果てているくせにはっきりと力強い声。
何の意味とも知らずに視線を注ぐことしかできないロシウの膝の上、シモンがのたり復唱した。
「ひゃ、くま……の…さ る」
全ては言えずに喉が機能の限界を訴え咳込む。息だけではなく体液の絡んだ嫌な咳だった。最早シモンの身は咳一つで崩れ落ちるほどに崩壊が進んでいる。胸に詰まるものを吐き出さなければ呼吸もままならず、力が抜けていた背すらたわんだ。がぼっと鈍い水音と共に口端から血が溢れる。その量は今までの比ではない。既にぼろぼろになっていたジャケットも胸を巻くさらしも黒に近い赤へと染まった。
ひと時離れていた思考を取り戻しロシウは叫ぶ。
「シモンさん!シモンさん、しっかりしてください!」
傷が開くと解っていても揺さぶるしかなかった。黒を纏う少女のあまりに怜悧な思考が自身に出来ることなどもう何もないことを突きつけるが故に。
ラガンはシモンにしか動かせない。グレンも半壊し、瓦礫のつかえになるのが精一杯。通信機能も破壊された。仲間とは随分前にはぐれている。
血は溢れ骨は折れ内臓は傷つき皮膚は破れ傷だらけ、手の打ちようなく傷だらけのシモンを腕の中で死なせることしか出来ないという確信がロシウを半狂乱に駆り立てた。今や灰色の瞳さえも殆どが瞼の向こうへと閉ざされている。
「嫌だぁっ!!」
彼女は普段ならば有り得ない、駄々っ子のような喚き声をまき散らして解けた黒髪を振り乱した。奪わないで、この人を僕から奪わないでとロシウはいないと知っている神にすら祈る。
「シモンさん、シモンさん、シモンさん、シモンさぁんっ!!」
死の静寂に満たされた部屋で一人泣き叫ぶ少女は命の理を受け入れざるを得ない、はず、だった。
「その娘を救いたいか」
低い囁きが別れの儀式に水を差す。縋るべきものを見いだした闇色の瞳が大きく広がった。その双眸が映す、ヒトに向けた呪詛を遺した唇が娘の絶望に可能性をなすりつける。
「死なせたくないのだろう」
一も二も無く頷くロシウに、ロージェノムは確かに笑ってみせた。
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